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「聴覚障害の子に勇気を」 デフバレーボール日本代表の双子姉妹は健常者のバレーと「二刀流」

京都新聞 / 2024年5月30日 12時0分

デフバレーボール女子日本代表として世界選手権に挑む、京産大4年の梅本綾也華(左)と沙也華=京産大総合体育館

 聴覚障害者のデフバレーボール女子日本代表で、京都産業大学4年の双子姉妹、梅本綾也華(あやか)(21)と沙也華(さやか)(21)が活躍している。代表の主将とエースを担い、大学の試合では健常者と渡り合う「二刀流」の2人。来年に日本で初開催されるデフリンピックのヒロイン候補だ。

 大阪市出身の一卵性双生児。先天的に聴覚が弱く、大きな音でも補聴器をつけて少し感じる程度という。口の動きを見て言葉を読むことができる。

 両親ともにデフバレーの元日本代表。幼少期から自然とバレーに親しんだ。高校はともに「高いレベルに挑戦したい」と強豪の履正社高へ進学し、沙也華は主将も務めた。大学でも、関西学生リーグ1部の京産大でプレーする道を選んだ。

 聴覚障害ゆえの難しさはある。「音が分からないから、スパイクがどんな強さで来るか、味方のブロックにどう当たったか、分からない」と沙也華。視覚と肌で感じる音の振動、反復練習で培った反射で瞬時に判断する。試合中に声をかけ合えないため、仲間との連係もプレー前の確認がすべてだ。

 大学で部の中核としてプレーする2人。入学当初は、声の壁を感じる日々を過ごした。気持ちを伝えられているか不安で、練習から足が遠のいた時期もある。それでも、「2人だから苦しい時も乗り越えられた」と綾也華。勇気を持って部員に思いの丈を打ち明け、わだかまりは消えた。今では仲間も簡単な手話を使って会話を楽しむなど、すっかり打ち解けている。

 デフバレーでは、2人とも高校1年から日本代表に入っている。沙也華はレフトから強打するエースアタッカー。「思い切り打ち込むことは得意」と攻撃を引っ張る。綾也華は速攻を担うミドルブロッカーで、昨年から代表の主将に就任。元男子代表主将の父・浩章さん(49)にリーダーの心得を聞き、チームの支柱を担う。

 顔立ちはそっくりだが、性格は対照的だ。姉の綾也華は「沙也華は活発で、ぐいぐい行く」と手話で評する。妹の沙也華は、高校時代に練習した発音も交え「綾也華はとても控えめ」と話す。沙也華が「話してみようよ」と促せば、綾也華は少し試して「絶対に無理」と恥ずかしがり、仲良く笑い合った。

 聴覚障害者スポーツの祭典デフリンピックは、2022年ブラジル大会で初出場した。準決勝まで勝ち進んだが、日本選手団の間で新型コロナウイルス感染が広がり、無念の棄権。綾也華は「金メダルが取れたと思っている。次はこの気持ちをぶつける」と燃える。

 リベンジの機会は日本で迎える。6月21日から沖縄県豊見城市で世界選手権が行われた。来年11月は東京デフリンピックが開かれる。2人は世界の頂点を目指すとともに、デフスポーツへの理解が広まってほしいと願っている。沙也華は「活躍してたくさんの人に知ってもらいたい。そして聴覚障害の子どもに、『こんなことができるんだ』と勇気を持ってほしい」と目を輝かせた。

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