京都・鴨川の川床で広がる「朝営業」 暑すぎる昼間を避け、外国人観光客にも人気
京都新聞 / 2024年6月19日 6時0分
京都・鴨川の夏の風物詩として知られる納涼床で朝食を提供する店舗が増え始めた。訪日観光客の急増で夜と昼に加えて朝の飲食需要も増えているためで、市中心部のレストランでも同様の動きが広がる。新型コロナウイルス禍を経て深夜の飲食利用が縮小する中、業界自体の朝型シフトも進みつつある。
平日の午前8時半、四条大橋南の鴨川沿いにあるレストラン「B STORE1st」(京都市下京区)が開店した。来店客が納涼床で爽やかな朝の陽気と風を感じながらコーヒーやトースト、新鮮な野菜のプレートを楽しむ。午前10時すぎには納涼床の20席が満席となった。
築100年を超える町家を改装した店舗は、2022年11月から朝営業を始めた。フランス・パリから家族4人で京都に滞在中のジョナス・ヴェルトマンさん(24)は「ホテルより京都らしい雰囲気と自然を感じて食べられる」と笑顔を見せた。検索サイトの口コミを見て訪れたという。
「観光客の朝食ニーズはあるのに京都は朝営業の店が少ないと昔から言われてきた。夏は日中より朝が過ごしやすく、川床を楽しむのに適している」。店長の三谷明さん(34)は狙いを話す。来店客の約半数が外国人という。
飲食店の朝営業は、コロナ禍で広がった。中京区で85年続く和食店を営む勝田桜子さん(52)は、コロナ禍で営業時間や酒類の提供供が制限されたことで「夜だけではやっていけない」と新たな道を模索した。朝食を外で食べることが多い中国や東南アジアの習慣をヒントに午前7時に開く中華粥(がゆ)の店「富小路粥店」(下京区)を22年1月に始めた。
出勤前の女性会社員や観光客から人気を集めるが、閉店は午後4時と早い。「新型コロナで朝の時間を有効活用しようとする人が多くなった。夜の営業がないため従業員も働きやすい」と話す。
勝田さんによると、「田の字地区」と呼ばれる市中心部では、喫茶店やファストフード店を除いて10店舗以上が新たに朝の営業を始めたという。飲食施設がないホテルや素泊まり客が増加し朝食需要が高まっていることも影響しているとみる。
一方、朝営業は人材確保や客単価に課題がある。酒類の注文が多い夜に比べ、朝は1人当たりの単価に限界がある。朝の短時間の働き手の確保も難しい。
勝田さんは「夕方より朝働きたいと考える学生や社会人も少なくない。人手不足でやりくりは大変だが、給料などの待遇を向上させて朝の営業を安定させたい」と話している。
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