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社説:京都市の違法民泊 再び増加、実効性ある監視を

京都新聞 / 2024年8月4日 16時0分

 観光客の回復でオーバーツーリズム(観光公害)の再燃が懸念されている。住宅を使う「民泊」を巡るトラブルは市民生活への影響が大きく、後手に回っている対策の強化が急がれる。

 京都市の6月以降の調査で、短期賃貸の「ウイークリーマンション」などと称し、旅館業法の許可なく観光客を宿泊させる「違法民泊」状態の施設が、全11行政区で計267件確認された。市はいずれも営業を中止、撤退させたという。

 市が調査・指導した違法民泊は、2017年度末に約千件に上っていたが、新型コロナウイルス禍による需要の消失で20年度末にはゼロになり、その後も10件未満だった。

 訪日客の急増を背景に違法民泊の復活がうかがわれ、住民からの苦情も寄せられている。今回は二つの仲介サイトの調査にとどまっており、氷山の一角だろう。市は洗い出しに手を尽くさねばならない。

 市は国の通知に沿って19年2月、貸付期間が1カ月未満のマンションやアパートは「旅館業の許可が必要」と不動産業者に伝えたとしている。

 今回の調査で業者は「違反と知らなかった」などと説明し、市も法令を勘違いしていたとみなし処分しないという。新型コロナが感染症法上の「5類」に移行したタイミングで、改めて徹底すべきではなかったか。

 週や月単位で貸すマンションを使い、無許可で民泊を営む懸念は、住宅宿泊事業法(民泊新法)が制定された17年の国会審議で指摘されていた。想定されていた事態であり、市の監視が甘かった面は否めまい。

 市は騒音やごみの散乱といった近隣トラブルが発生しないよう、4年前に全面施行した条例で、旅館業法の対象となる全ての宿泊施設に管理者の駐在や対面でのチェックインを義務付けた。新法に基づく民泊でも独自基準を設け、「全国一厳しい」と自負する規制を敷いてきた。

 小規模な簡易宿所では施設外のフロント設置を特例で認めているが、徒歩10分圏内に管理者を置く「駆け付け要件」が守られていない事例が明らかになっている。市は委託業者と定期的に調査し、一定数の業者が条例に違反していると認めているが、内容を公表していない。

 これでは制度が十分に機能しているか分からない。違反実態などを市民に伝えるべきだ。

 23年の市内の観光消費額は過去最高の1兆5千億円に達した。外国人宿泊客数の大幅増が要因という。

 市は混雑対策などに充てる宿泊税の増税に向けた議論を今春から進めているが、違法民泊で負担逃れが増えれば、他業者との税の公平性が揺らぐ。許可を得たウイークリーマンションへの悪影響もあろう。

 市は現場に即し、規制の実効性を点検する必要がある。

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