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社説:バングラ政変 混乱収め、ひずみ正せ

京都新聞 / 2024年8月9日 16時0分

 大規模な反政府デモの末、ハシナ首相による長期政権が崩壊したバングラデシュで、近く暫定政権が発足する見通しになった。多数の犠牲者を出した混乱を収拾させ、民主的な選挙が早期に実施されることが望まれる。

 ハシナ氏は2009年に首相に返り咲いた後、インフラ整備や海外企業の誘致を進め、近年は年6~7%台の経済成長率を達成。かつてはアジアの「最貧国」だったが、26年には国連の「後発発展途上国」を脱する見通しという。

 一方で、強権的な政治手法が目立ち、政敵を容赦なく弾圧した。野党を率いるジア元首相や支持者を次々と拘束し、1月の総選挙を野党がボイコットしたため圧勝すると、独裁色が一段と強まった。

 今回の政変の発端は、1971年の独立戦争を戦った兵士の子どもに対する公務員採用の優遇制度への抗議活動だった。権力基盤をさらに強化する動きに、学生らが反発し、市民もデモに加わった。

 これに対し、政権は武力での鎮圧に乗り出した。デモ隊と治安部隊が衝突し、犠牲者は少なくとも350人に上るという。国民の不満の大きさを見誤り、惨事を招いたハシナ氏は退陣と国外逃亡に追い込まれた。

 この間、デモ隊の一部は首相公邸に乱入するなど混乱の拡大が懸念されたが、多くは収拾したと伝えられる。しかし、弾圧を受けてきた野党側が与党関係者に報復する動きも各地で見られるなど、予断を許さない。

 今後、注視すべきは、治安回復と暫定政権の動向だ。

 暫定政権の首席顧問には、デモを主導した学生グループの要請を受け、06年のノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏(84)が就く見通しとされる。

 ユヌス氏は、貧困層に無担保で少額融資をする「グラミン銀行」を設立し、国際機関や企業とも連携してソーシャルビジネスの普及に努めた。政界進出を目指したがハシナ氏と対立し、現在はフランスに滞在中という。

 治安維持を担う国軍は、野党各党と暫定政権樹立で合意したという。権力の空白に乗じて軍政を敷く事態は避け、公正な総選挙の実施に結束せねばならない。

 日本は、最大の援助国としてバングラの港湾や鉄道などの整備に協力してきた。縫製業など約300の日系企業が進出し、経済的な影響力は大きい。格差拡大といった社会のひずみを是正する上でも支援の役割を果たしたい。

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