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社説:「地方創生」10年 目立つ弊害分権改革が必要

京都新聞 / 2024年8月11日 16時0分

 国が旗を振り、自治体が進めてきた「地方創生」が、成果以上に弊害を招いている実態を直視しなければならない。

 第2次安倍晋三政権が、地方創生を掲げたのは2014年。翌春の統一地方選をにらんだ選挙対策の面が大きく、「アベノミクスの成果を地方に行き渡らせる」と打ち上げた。

 そのために「東京一極集中の是正と人口減少克服」を目標に、関連法を成立させ、内閣府に推進本部を設置。政府機関・企業の移転や特産品創出などで雇用を生み、都市部の住民を呼び込むとした。

 自治体にも数値目標を入れた地方版戦略を求め、内容に応じて補助金(創生交付金)を配った。総額約1.3兆円に及ぶ。

 10年を迎えたのを機に、政府がまとめた地方創生の検証報告書で、「人口減少や東京一極集中の大きな流れを変えるに至らず、厳しい状況にある」とした。実質的に行き詰まりを認めた形だろう。事実、人口減も首都集中も加速している。

 国、自治体は新たな地方策を練り直すべき時だ。

 報告書は、地方への移住者増加を「一定の成果」としつつ、「地域間の『人口の奪い合い』が指摘されている」と記述した。子育て支援の強化で人口を増やす市町村が注目される一方、周辺のまちからの転居に過ぎず、人口全体の底上げにはつながらないとの見方が強い。

 昨年1兆円を超えたふるさと納税は、返礼品を競う「官製通販」と化し、自治体間での税金引き抜き合戦に陥っている。

 政府機関の移転は事実上、京都への文化庁にとどまり、それさえも東京に半分近くの機能を残し、中途半端さが否めない。

 先細る人とカネの争奪は、自治体を消耗させ、地域の将来を見通せなくさせているのではないか。検証報告の問題は、競争や成長に軸足を置いた地方創生の構造的な欠陥から目をそむけ、その延長線で課題を羅列している点にある。

 加えて岸田文雄首相はデジタル技術で地域活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」を新たに掲げる。京都の市町村幹部からは「看板を変えただけの事業が増え、地方は振り回されている」との声も聞かれる。

 岸田政権は先の国会で、「必要性があるのか」という多くの自治体の疑念を振り切り、国の地方指揮権を強める改正法を成立させてもいる。

 一極集中の是正は、東京で権限と財源を握り、地方を一律にコントロールしようとする姿勢の転換で実現すべきだ。人口減社会に適応した地域をつくり、暮らしの安定や豊かさを紡ぐため、自治体の自主性を高める地方分権改革こそ求めたい。

 来月に予定される自民党総裁選、立憲民主党代表選では地方創生に代わる策を競い、衆参院選で大きな争点にしてほしい。

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