社説:マグロ漁獲枠増 資源管理の重要性を物語る
京都新聞 / 2024年8月13日 16時0分
水産資源の厳正管理の大切さを改めて確認したい。
刺身や高級すしネタとして人気の太平洋クロマグロの資源管理を話し合う国際会議で、30キロ以上の大型魚の漁獲枠を2025年以降、全体で1.5倍に拡げることで合意した。
小型魚も全体で10%増える。
日本の漁獲枠は、大型魚が2807トン増えて8421トン、小型魚は400トン増えて4407トンになる。
マグロの資源量が回復傾向にあることが確認されたのを受けた制限緩和である。
重要なのは、これまでの厳しい漁獲削減や抑制の成果という点だろう。
太平洋クロマグロは日本の周辺で生まれ、米国やメキシコ沖合まで回遊する。1990年代から太平洋各地で乱獲が続き、資源量は95年の6.2万トンから2010年には1万トンへ激減していた。
このため、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が15年、小型魚の漁獲について02~04年の平均漁獲量の半分に減らすことを決め、2年後には大型魚についても同様の措置を実施した。
その結果、太平洋クロマグロの親魚の量が回復していることが、国際的な科学機関の調査で判明した。とりわけ、小型魚の漁獲を抑制したことが奏功した。
水産資源の回復には、科学的な調査に基づく一定期間の漁獲制限が、最も効果的と指摘されてきたことが証明されたといえよう。
気になるのは、最大のマグロ消費国で、制限の緩和に前のめりな日本の孤立ぶりである。
今回の会議では、大型魚を2.31倍、小型魚を30%増とする大幅な漁獲枠の拡大を提案したが、賛同する国は一つもなく、退けられた。
日本の漁業者や関係自治体から最大限の漁獲枠拡大を望む声が上がったことを受けた提案だった。
ただ、性急すぎれば、マグロ資源の推移に大きな影響を与えかねない。
資源回復の成果を反転させることのないよう、関係国は今後も漁獲管理を厳格にする必要があるだろう。
スーパーや外食店での売れ残りなど食品ロスの削減をはじめ、大量消費の見直しも欠かせない。
海水温の上昇といった気候変動の影響を含め、イカやサバなど国内沿岸漁業の水揚げは減少傾向が続いている。
魚種ごとの漁獲規制が始まっているが、漁獲枠の制限が過去の実績に比べて緩やかで、機能を果たしていないと指摘されている。
国内漁業の持続可能性を高めていくには、マグロの国際管理から学ぶことが多いのではないか。
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