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社説:パリ五輪閉幕 分断映した大会、改革さらに

京都新聞 / 2024年8月14日 16時0分

 17日間にわたったパリ五輪が閉幕した。

 セーヌ川を舞台とした開会式は厳戒態勢で無事乗り切り、各競技では名所を背景とする演出が目立った。会場の95%は既存施設の利用や仮設で経費削減に努めたとして、「新時代の五輪」を印象づけた。

 新型コロナウイルス禍で無観客だった前回東京大会から一転、どの会場も大歓声が響いた。

 日本代表は、フェンシングで京都市出身の飯村一輝選手が男子フルーレ団体で初の金メダルを獲得するなど、地道に力をつけた競技が目を引いた。馬術や近代五種、新種目のブレイキンでも躍動した。

 ひたむきなアスリートの奮闘の半面、選手たちを第一に考える環境は、十分だったとは言い難い。

 大きな問題となったのは、交流サイト(SNS)上での誹謗(ひぼう)中傷である。

 競歩の混合団体に出場した立命館大の選手は個人種目の辞退に対して批判を受け、投稿で「厳しい言葉に傷ついた」とショックを吐露した。日本選手団は複数の被害があったとして、「法的措置も検討する」と異例の声明を出した。

 ボクシング女子では、選手の性別に関する差別的な情報が一気に拡散された。明確な人権侵害だろう。

 国際オリンピック委員会(IOC)は人工知能(AI)を活用したSNSの監視を強化し、法律やガイドラインに反する投稿は削除したというが、結果的に選手を守り切れなかった。詳しい検証と改善が欠かせない。

 大会期間中、ウクライナや中東の戦火はやまず、「平和の祭典」としての意義が改めて問われた。

 国連総会の「五輪休戦」決議を尻目に、ロシアは侵略を続けた。イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの攻撃をやめず、イスラム組織ハマス幹部の暗殺を巡りイランとの報復の連鎖が懸念されている。

 IOCは、ロシアと同盟国ベラルーシを国として参加させず個人資格での出場に限り、イスラエルは制裁なしとして「二重基準」との批判も根強かった。

 閉会式でバッハ会長は「五輪は平和の文化を生みだし、世界を動かすことができる」と自賛したが、分断を埋める働きかけこそ問われよう。

 パリ大会は、観客がメダリストと触れ合う場を楽しむなど、スローガンの「広く開かれた大会」に基づく成果がみられた。その裏では、大会前に移民や低所得者らが強制的に排除された現実も忘れてはなるまい。

 国の威信や都市の価値を高める発想で、弱者がしわ寄せを受ける在り方から脱却すべきだ。4年後の米ロサンゼルス大会にとどまらず、商業主義を脱し、持続可能な五輪を目指すには、避けて通れない課題である。

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