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社説:墓守の行方 血縁に頼らぬ弔いの模索を

京都新聞 / 2024年8月17日 16時0分

 お盆を故郷で過ごした人も多いだろう。

 地方や都市部を問わず、管理する親族らのいない「無縁墓」が問題となっている。

 総務省が昨年まとめた初の実態調査で、公営墓地を運営する全国の765市町村の約6割が、無縁墓があると答えた。

 放置されて荒廃していく一方、墓を移すには手間や時間もかかり、撤去が進んでいない。

 少子化や家族関係の希薄化などから、身寄りや周りとのつながりの切れた「無縁社会」と呼ばれる状況が背景にあろう。

 必ず迎える人生の終末、従来は血縁や地縁で担われてきた弔いをどうするのか。社会全体で向き合っていく課題といえる。

 無縁墓は管理料の滞納で把握される例が多いが、公営の墓地は全体の4%に満たない。大半は民営や集落などの所有で、調査結果は氷山の一角だろう。

 長期間の放置で墓石、囲いの崩れ、雑草の繁茂やごみ投棄など、安全、環境面の支障も出ている。倒壊防止策や除草を肩代わりするなど、運営側の負担にもなっている。

 墓地埋葬法の施行規則では、縁故者がいないことの確認を尽くせば、遺骨を合葬墓などに移し、墓石を撤去できる。

 だが、実態調査で2020年度までの5年間に実行した自治体は6%にとどまった。手続きの労力に加え、「墓石の保管場所が確保できない」「撤去後に親族らが現れて損害賠償される可能性」を懸念材料に挙げた。

 法令に保管期間など具体的な規定がなく、判断に迷う状況がある。現場の実情を詳しくつかみ、全国的な基準や支援策を設ける必要があろう。

 無縁墓に至っていないが、先々の管理の負担や引き継ぎを不安視し、家族代々の墓を整理する「墓じまい」も増えている。

 厚労省の22年度統計で、合葬墓に移すなどの「改葬」は全国で約15万1千件。京都府は3544件、滋賀県は1021件で、いずれも前年度より25%以上増えている。

 京都府南丹市園部町で昨年、共同墓地を墓じまいした集落がある。多くが70~80歳で、草刈りなど管理が困難になる今後を見据えて話をまとめ、各家の遺骨を近くの寺の合祀墓に移した。他の地域でも参考になるだろう。

 既存の墓地だけでなく、死後に引き取り手のない「無縁遺骨」も全国で少なくとも6万柱に上る。独居だった人らの葬儀を市町村がしたが、引き渡す縁故者が見つからなかったり、拒まれたりして積み上がる一方という。

 団塊世代が超高齢化し、この先は年間150万人以上が亡くなる「多死時代」を迎える。

 本人や家族に負担の少ない合葬墓や樹木葬などの受け皿を広げ、自治体への事前登録などで、誰でも尊厳あるみとりや弔いを最低限は受けられるような仕組みを整えるべきではないか。

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