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社説:オーバードーズ 当事者の背景に寄り添って

京都新聞 / 2024年8月18日 16時0分

 身近な市販薬の危うさを直視せねばならない。

 せき止め薬や鎮痛剤などの一般用医薬品(市販薬)を、過去1年間に乱用目的で使った経験がある15~64歳は約65万人と推計されることが、厚生労働省の研究班が初めて行った全国調査で分かった。

 過剰摂取(オーバードーズ)すると急性中毒症状で意識障害や錯乱を引き起こし、命を落とす危険性がある。依存性も指摘されるほか、救急搬送されるなど健康被害は見過ごせない。

 若者の問題とみられがちだったが、年代別の割合は10代1.46%(約8万5千人)、次いで50代1.24%(約30万8千人)が突出し、30代が0.69%(約10万1千人)と続いた。

 SNS(交流サイト)では、一時的な多幸感や高揚感が得られるといった体験談が多く出回っている。目に触れやすく、気軽な気持ちで始めてしまう人が少なくないようだ。

 薬の入手先で最多の4割近くを占めたのが、薬局だった。

 薬局では現在、厚労省が指定した「乱用等のおそれのある医薬品」が原則1人1個の販売となっている。複数購入の希望者には理由を確認し、若年層の場合は名前や年齢確認も義務付けているが、徹底されていない。

 別の薬局を回って購入を繰り返す人や医療機関の処方箋で入手する人もおり、完全な販売規制は難しいのが実情だ。

 医薬品販売制度に関する厚労省の検討会は1月、20歳未満が多量購入することを禁じる制度の見直し案をまとめた。

 小容量1個に限った上で、名前や年齢の確認、販売記録の保存を義務化する。客から直接手が届かない場所に薬を陳列することも求めた。

 販売現場の負担が重くなると懸念の声もあがるが、薬を扱う側の責任として一定の抑止力になるだろう。

 第三者からの転売、譲渡もあり、オンライン販売を含めた大量購入の監視、規制の強化も必要ではないか。

 現場だけに任せるのではなく、学校での教育や危険性についての周知はもちろん、社会全体で意識を高め、対策に知恵を絞る必要がある。

 当事者が抱える背景にも目を向けたい。

 若者たちが集まる東京・歌舞伎町の「トー横」や大阪・ミナミの「グリ下」など繁華街で広がり、犯罪に巻き込まれるケースもある。生きづらさを抱え、孤独や孤立を紛らせたいといった動機があるようだ。

 看過できないのは、若者に次いで50代が多かった点だろう。「職場や家庭で解決が難しい問題を抱えがち」とされる世代である。

 それぞれが抱える不安や悩みに寄り添い、適切な医療や支援機関につなげられるような体制の充実も欠かせない。

 

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