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社説:障害者就労支援 質を担保する手だてを

京都新聞 / 2024年8月22日 16時0分

 障害のある人の雇用や就労支援の在り方が問われていよう。

 障害者が働きながら技術や知識を身に付ける「就労事業所」の閉鎖が相次いでいる。

 3~7月に全国で329カ所が閉鎖され、少なくとも約5千人の障害者が解雇や退職となったことが、共同通信の中核市以上の自治体調査で明らかになった。

 京都府と京都市で該当は計4カ所58人に上り、滋賀県と大津市はなかった。

 一方的に閉鎖を通告した事業所もあり、失職した人たちに戸惑いや動揺が広がっている。

 運営改善の行政指導と併せ、自治体やハローワークの連携で再就労への丁寧な支援が求められる。

 閉鎖が相次ぐのは「就労継続支援A型事業所」だ。障害者と雇用契約を結び、最低賃金以上を支払って生産活動や職業訓練をする。全国約4600カ所で精神、知的障害者を中心に8万人超が働く。

 主な原因は、4月に国が行った報酬改定とみられている。公費に依存した経営の改善を促すとして、事業収益で障害者の賃金を払えていない場合は報酬を大幅に引き下げた。経営が成り立たなくなって撤退が広がった形で、今後の増加も懸念される。

 甘い要件で民間参入を広げた国の規制緩和策の反動といえよう。

 2006年施行の障害者自立支援法(現障害者総合支援法)は、就労支援事業に株式会社も参入可能にした。多様な運営主体による質の向上を掲げたが、国の報酬や助成金で営利を追う悪質な事業者も加わった。17年に国は報酬支給の要件を厳格化したが、その際も閉鎖が続出した経緯がある。

 国は今回、経営改善の支援策や猶予期間を設けたというが、改定後の短期にかつてない失職者を出した強引さは看過できない。

 支援法は事業者に対し、閉鎖の際は利用者がサービスを継続的に受けられるよう調整する責務を定めている。だが、障害者団体は今回、唐突な通告で理由説明もないなど対応が不十分と指摘している。

 行政の所管が福祉と労働にまたがり、自治体も把握しきれていない状況がある。事業者も交えた情報共有による支援が重要だ。

 障害者向けのグループホームや訪問看護でも、大手業者が報酬を過大請求する不正発覚が相次いでいる。量の拡大を優先する緩和策を点検し、質を担保できる参入要件や活動評価の適正化、運営者への指導と研修の徹底などの手だてを講じるべきだろう。

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