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社説:辺野古埋め立て 強引な工事は許されぬ

京都新聞 / 2024年8月22日 16時5分

 国の強引さが目に余る。

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画で、防衛省が軟弱地盤のある海底の改良工事を本格的に始めた。

 新基地の建設に反対する県は海の汚染防止策について事前協議を求めてきたが、政府は県との協議を打ち切って工事に踏み出した。

 今回着手したのは、計画海域の東北部分を囲うコンクリート製護岸づくりに伴うくい打ちだ。「マヨネーズ並み」とされる緩い地盤が海面下90メートルに達するため、海底に砂を詰めた7万1千本のくいを打ち、安定させるという。

 前例のない規模の工事は難航が予想され、実現を疑問視する声すら出る。順調でも完成は2033年、引き渡しにはさらに3年はかかるとされる。

 これに伴い、工費は政府が2014年に示した約3500億円から約2.7倍の9300億円に膨らむ。既に、その半分近くは22年度までに費やされた。工期の延長でさらに増えるのは確実だ。

 深刻なのは、米軍基地移転の大幅遅れや新たな国民負担につながる問題が浮上しているのに、政府が説明責任を果たそうとしていないことである。

 今後さらなる設計変更や予算増額の可能性が高く、埋め立てが完了したとしても、地盤の沈下は避けられないと指摘される。完成しても膨大な補修費がかかり続けるのではないか。

 そもそも、事前協議は、13年に県が埋め立て承認した際、当時の仲井真弘多知事と国が取り決めた。一方的な打ち切りは、国が依拠する当時の県による埋め立て承認そのものを揺るがすことになる。

 国の頑なな姿勢の背景には、今年6月の沖縄県議選で、辺野古移設阻止を掲げる玉城デニー知事を支える勢力が過半数を割り込んだことがあるようだ。

 だが、基地をめぐる民意は複雑で、県政野党も積極的に移設賛成を掲げているわけではない。

 国と地方は対等との原則に基づいて誠実に向き合う必要がある。

 政府は辺野古移設で日米は一致していると繰り返すが、本当にそうか。米軍は海兵隊のグアム移転など部隊の分散化を進め、新基地の有効性に疑問の声もあがる。

 大きく環境が変わった計画に固執するのでなく、一日も早い「普天間の危険性の除去」の原点に立ち戻って、新たな選択肢を見いだす協議に国と県は臨むべきではないか。

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