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社説:デブリ採取中断 見えぬ原発廃炉の行方

京都新聞 / 2024年8月23日 16時5分

 重大事故から13年が経過してもなお、被害の甚大さと処理作業の困難さを思い知らされる。

 東京電力はきのう、福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)の取り出しに向けた準備作業を開始した。

 強い放射線を出し続けるデブリ回収は廃炉の最難関とされ、初の採取が注目された。だが、装置の取り付け手順の間違いがあったとして中断、再開は未定という。

 作業をしっかり点検し、安全に進めることが欠かせない。

 仮に取り出せても今回は試験的といい、数グラムにとどまる。デブリは1~3号機で推計880トンあるとされる。第一歩とはいえ、全量取り出しの道筋ははるか遠い。

 作業計画では、伸び縮みするパイプ式装置を遠隔操作で原子炉格納容器に投入し、先端の爪形器具でデブリをつかみ取り出す。約2週間かけて回収した後は、茨城県の分析施設に運び、結果を今後の本格的な取り出しに役立てる。

 採取を巡ってはロボットアームの改良や工法変更などを理由に3回延期され、当初の計画より開始が3年遅れている。国や東電は「中長期ロードマップ」で廃炉完了の目標を2041~51年とするが、不透明さは増すばかりだ。

 デブリの取り出しは米スリーマイルアイランド原発事故(1979年)の処理で行われたが、福島の場合は総量が多い。デブリが圧力容器の外側の格納容器まで広がっており、作業の難易度は世界で経験のない高さとなる。

 東電は数年かけて採取規模を広げ、30年代初頭に3号機を念頭に大規模なデブリ取り出しを始める計画という。だが今年3月、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が工法を示したものの、具体策や処分先は決まっていない。

 いまだ内部の実態すら分からず、今後の技術開発に頼る部分は大きい。廃炉の実現自体を疑問視する専門家もいる。国や東電は進捗(しんちょく)度とかけ離れた完了目標を掲げ続けるが、現実的な全体像や問題点を示すべきではないか。

 処理水の海洋放出が始まり24日で1年を迎える。デブリを取り出さなければ処理水は発生し続ける。使用済み核燃料も残っている。事故直後に政府が発令した「原子力緊急事態宣言」は解除されないままだ。

 政府は十分な説明もなく原発回帰にかじを切り、運転期間の延長や新増設を進めている。福島の現実や事故の教訓から、目をそむけることは許されない。

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