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社説:いじめ重大事態 過小評価せず、子どもを守れ

京都新聞 / 2024年8月26日 16時0分

 子どもの学びや、命をも脅かすことを教育関係者は改めて肝に銘じるべきだ。

 心身に傷を負い、長期に欠席している状況にもかかわらず、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」としての学校の取り組みが遅れるケースが、京都や滋賀で問題になっている。

 初期対応の誤りは、事態のさらなる深刻化につながりやすい。学校側のいじめに対する認識不足や、危機管理への姿勢の甘さが問われていよう。

 同法は重大事態があった場合、学校には文部科学省や自治体への報告と速やかな事実関係の調査、被害者側との情報共有を義務付けている。

 文部科学省によると、2022年度に発生した全国の重大事態は過去最多の923件だったが、うち約4割は当初、いじめとして認知されていなかった。

 京都市立の小学校では3年前、長期欠席していた2人の児童(現在は中学生)について、市教委がいじめを把握していたのに「欠席は別の要因があると考えた」などとして、重大事態として対応しなかった。

 2人が加害者に対して起こした損害賠償請求訴訟の審理でいじめの詳細が明らかになり、市教委は先月、対応の不備を謝罪し、重大事態と認定した。

 いじめの発生時点まで1年以上さかのぼって重大事態に認定し直す事例は、最近だけでも京都の私立高と滋賀の私立中であった。

 いずれも被害生徒側からの継続的な訴えがあって重大事態の認定に至ったが、教委や学校側の感度の鈍さと「事なかれ主義」を疑わざるを得ない。

 生徒たちの多くが今も心身の不調に陥り、保護者は学校側への不信感を募らせている。

 当該の教委や学校に再発防止策が求められるのは当然だが、他の自治体でもいま一度、いじめ事案の扱いについて体制を点検してもらいたい。

 重要なのは、まず現場の教員が対応手順を十分に認識し、重大事態の可能性を常に念頭に置くことだろう。その上で校内での情報共有や教委への相談、スクールカウンセラーや弁護士らとの連携などを徹底したい。

 自己保身や組織の体面で、事案を過小評価することは防がなければならない。

 文科省は、重大事態の調査に関するガイドラインの改定に乗り出しているが、調査開始前の初動から学校が迅速に対応できるよう、必要に応じて国や第三者が助言できる仕組みも検討してはどうか。

 いじめを許さない普段からの取り組みが重要なのは言うまでもない。

 交流サイト(SNS)を通した誹謗(ひぼう)中傷や仲間はずれにする行為も深刻化しており、児童生徒への教育や教職員向けの研修に、いっそうの工夫を凝らして力を入れてほしい。

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