社説:外国籍の子ども 日本語教育の充実が急務だ
京都新聞 / 2024年8月31日 16時0分
外国人との共生社会を進める上で、子どもの学習権の保障は重要な優先課題だ。日本語が不得意な児童生徒が、学ぶ機会を失い、将来の選択肢を狭めることのないよう、支援体制の充実が急がれる。
文部科学省の昨年度調査で、外国生まれなどのため日本語の指導が必要な児童生徒が全国で6万9千人を超え、過去最多を記録した。京都府は405人、滋賀県は1767人に上る。
背景にあるのは、在留外国人の増加だ。昨年末時点で341万人に上り、2年連続で過去最多を更新した。政府は労働力不足を補うため「外国人材の受け入れ拡大」を掲げており、今後も外国籍の子どもは増えるだろう。
気がかりなのは、日本語で日常会話が十分できなかったり、授業を理解するのが難しかったりする子どものうち、1割ほどが補習などの支援を受けられてない状況だ。学校現場の人員不足が大きな理由という。
日本語能力の不十分さは、学業や学校生活の困難さに直結している。日本語指導が必要な高校生の中退率は2022年度調査で8.5%と、高校生全体と比べて7.7倍に達した。
高校卒業後の進路でも影響がみられる。非正規雇用の仕事に就く割合は4割近くと、全体の12倍以上を示す。反対に、大学などへの進学率は全体より30ポイント低い46%にとどまっている。
さらに深刻なのは、義務教育段階の年齢にもかかわらず、小中学校などに通っていない「不就学」である。昨年5月で約8600人と、調査を始めた19年以降では初の増加となった。社会から疎外されていないか、実態の把握が欠かせない。
これらの問題は以前から指摘されており、文科省も「きめ細かな支援を急ぎたい」という。だが、国が進める外国人の受け入れ拡大策に、教育現場が追いついていないのは明らかだ。
政府は昨年、配偶者や子を呼び寄せられる「特定技能2号」の対象業種を拡大した。特定技能全体の受け入れ枠は2倍超に増やす計画だ。
これは事実上の移民政策だが、自民党内の一部反発に配慮した政府は「労働力」「人材」としての扱いを優先してきた。
教育の問題は、ひずみの表れにほかならない。在留外国人の多国籍化が進む中、学校現場の頑張りは限界にきている。政府は、自治体やボランティア任せにせず、教員志望の大学生に日本語指導の単位取得を促したり、デジタル技術を生かした支援システムなど、新しい仕組みづくりも急いでほしい。
国内に暮らす外国人の数は近年、想定より早いペースで増えている。国の推計で、人口の1割を占める70年代を見据え、政府は教育や社会保障など外国人の暮らしを支える基盤づくりに本腰を入れるべきだ。
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