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社説:核燃料サイクル 破綻の実態に向き合え

京都新聞 / 2024年9月6日 16時5分

 実現が見通せない核のごみの再利用を前提に、いつまで無理を重ねるのか。

 原発から出た使用済み核燃料の中間貯蔵施設が今月から、青森県むつ市で操業を開始する。

 東電と日本原子力発電が出資する施設で、いずれ再処理工場に搬出するという前提で周辺自治体が建設と稼働に同意していた。むつ市は貯蔵期限を「最長50年」とする。

 ところが、その核燃料サイクルの中核施設で、日本原燃が同県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場は、完成目標が2年半延長された。早くとも2026年度内になる。

 本来は1997年の完成予定だったがトラブルが続き、今回が27回目の延期となる。

 再処理後の用途も最終処分も展望が開けず、核燃サイクルの実質的な破綻は明らかである。

 行き先が定まらぬまま、中間貯蔵施設に燃料が持ち込まれることになる。このままでは核のごみ捨て場にされかねない。そんな懸念が地元で強まるのは当然だろう。

 核燃サイクルは、原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工し、再び原発で利用するとされる。

 だが、MOX燃料を利用するはずだった高速増殖炉は、原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉で開発が頓挫した。MOX燃料を燃やす原発は現在、国内で4基だけだ。

 主要先進国はコスト高などを理由に核燃サイクルから撤退している。日本でも処理工場の建設費は当初の7600億円から3兆円に膨らみ、稼働から廃止までを含む総事業費は14兆4千億円超になる見通しだ。いずれも電気料金を通じて国民の負担となる。

 さらに、原発が稼働する限り使用済み燃料は増えるばかりで、国内の原発では今後3年半から5年で貯蔵スペースが満杯になるとみられている。

 福井県内の原発から県外搬出を迫られている関西電力は、中国電力と共同で山口県上関町での中間貯蔵施設建設を打ち出したが、先行き不透明である。原発の運転継続のための、その場しのぎのポーズとの疑念がぬぐえない。

 再処理工場の完成延期は、中間貯蔵施設を巡る地元との安全協定の締結直後に発表された。「最長50年」の体裁を整えるためだったのではないか。

 核燃サイクルはもはや虚構としか映らない。原発推進の見直しこそ、現実的な政策といえよう。

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