コロナでデモも自粛?揺らぐ民主主義の根幹 再開グループ「こんな時こそ声を」 

京都新聞 / 2020年9月29日 9時0分

京都市役所前の座り込み行動。「無関心な人にも声を届けたい」(7月22日)

 人と人との間に十分な距離を取ること、不要不急の集まりはなるべく避けること。こうした「新しい生活様式」の推奨によって、デモ行進や集会といった政治的、社会的な表現活動が岐路に立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、さまざまな領域でオンライン化が進み、市民運動もインターネット上での展開が加速する。ただ、こうした時勢だからこそ、街頭など公共空間で声を上げることを大切にする人たちもいる。

 コロナの感染拡大以降、デモ行進の回数は減っているようだ。京都府警によると、集団行進や祭礼行事、パレードなどの催しに際して必要な「道路使用許可(4号許可)」は、緊急事態宣言が出された4月、5月は前年からほぼ半減。6月、7月も半数から3分の2にとどまったという。

 市民集会や学習会などで使われる公共施設の利用率も低調だ。京都市下京区の「ひと・まち交流館京都」のホールや会議室の稼働率は、8月こそ持ち直したものの、その他の月は軒並み前年を割り込んだという。多くの公共施設では利用人数を定員の半分に制限しており、活動の規模に影響している。

 こうした中、街頭行動を再開した人たちがいる。2015年9月の安全保障関連法成立以降、同法の廃止や9条改憲の阻止を掲げて、成立日の「19日」に集会とデモを重ねてきた京都市の市民グループ。4月と5月はスピーチ動画のネット配信にとどめたが、6月19日から中京区の京都市役所前での集会、デモ行進を再開した。

 「戦争をさせない京都左京千人委員会」運営委員の島津瑠美さんは「積極的な関心がない人にも声を届けたい」と毎回参加している。以前はシュプレヒコールを上げながら河原町通を歩いたが、再開後は先導車からのマイクアピールのみ。マスク姿の参加者は無言で行進する。島津さんは手を振りながら歩く。「目に留めて、少しでも興味を持ってくれる人がいたら」と願って。

 ネットで得られる情報はどうしても、自らが求め、望む内容に偏りがちだ。デモや街頭アピールは、道行く人の目に、耳に、いや応なく届く。賃金保障や生活支援を求め、京都市役所前で毎週水曜日に「座り込み」をしているグループもある。呼びかけ人の一人で飲食店経営の中塚智彦さん(44)は「毎週、行動していると、声を掛けてくれたり、アピールに耳を傾けてくれる人が増えている」と手応えを感じている。

 京都弁護士会が主催する「憲法と人権を考える集い」。50回目の節目を迎える今年のテーマは「表現の自由」に決まった。12月12日に、作家の平野啓一郎さんを招き、コロナ時代の表現、ネット空間における言論の功罪などを問い直す予定だ。ただ、その開催方法をめぐって頭を悩ませている。ネット中継で発信するとともに、聴衆に直接訴えかけるライブ感にもこだわりたい。しかし、今後の感染状況が見通せず、会場の確保に苦慮している。お膝元の京都弁護士会館ですら、一般市民を招いての企画を見合わせているのが実情だ。

 実行委員長の山下信子弁護士は「慎重意見があるのは分かるし、リスクを検討することは不可欠」としつつ、「個人的には、批判を恐れ、同調圧力に屈し、自主規制してしまうことこそ危険だと思う」と語る。「自分の頭で考え、発言し、行動することは、民主主義の根幹であり、憲法の精神だから」

 コロナ社会は一面、自粛を求める社会でもある。ただ、そのことへの懸念や批判まで「自粛」してしまってはいけない。

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