「苦しむ患者の背中さすることもできず」 コロナ宿泊療養施設、看護師の苦悩

京都新聞 / 2020年10月14日 10時30分

京都平安ホテルで軽症者らのケアに当たってきた看護師=京都市上京区・同ホテル

 新型コロナウイルス感染症では、重症患者の病床を確保するため、無症状や軽症の患者は病院以外の宿泊施設で受け入れられてきた。医療従事者にとっても宿泊施設でのケアは初めての経験。何に気を遣い、どんな難しさがあるのだろうか。京都府内のホテルで従事した看護師2人に聞いた。


 府内では4月15日に京都平安ホテル(京都市上京区)、5月7日にホテルヴィスキオ京都(南区)で受け入れが始まった。9月17日までに、京都平安ホテルで208人、ホテルヴィスキオ京都で136人が療養した。

 府によると、患者は毎日2回、各部屋に配備されたタブレット端末から無料通信アプリLINE(ライン)で体調を報告し、常駐する看護師が必要に応じて電話やビデオ電話で詳しく聞き取る。一方、患者と看護師は直接の会話や身体接触が原則禁止されている。

 万が一、看護師が症状の悪化を見落とせば重篤化の危険もありうる。京都平安ホテルに常駐した経験のある看護師の女性(37)はオンラインだけのやり取りについて「通常の健康観察はある程度可能だった」と話す。ただ、関係者によると、難しく感じた看護師もいたようで課題は残るという。

 症状に異変があれば、医師の診察を経て、病院搬送や入院の是非が検討される。これまでに高熱が続き、おう吐を繰り返すなどした10人がホテルから病院へ移った。しかし、医師の巡回は1日1回のみ。室内にカメラはなく、夜間に容体が急変し意識を失えば、異変の兆候を看護師が知るすべはない。

 幸いそうした事例はまだないが、女性は「看護師に訴えることもできないまま夜間に病状が悪化しているかもしれないと考えると、緊張感があった」と振り返る。そうならないためにも心配な患者には夜中でも何かあれば連絡するように念を押したという。

 患者の精神的なケアにも気を配ることが求められた。同じく京都平安ホテルを担当した別の看護師(62)は「入所する前にさまざまな誹謗中傷を受け、『つらい』と打ち明ける人もいた。ただ、患者さんがしんどい時に背中の一つもさすれないのはもどかしかった」と語る。

 両ホテルの運営は府看護協会が担ったが、看護師は不足しており、常駐者を確保するのに苦労した。そのため、看護師資格を持つが現在は離職している人や求職中の人ら計約2600人に同協会がメールやはがきで協力を呼び掛けたところ、31人が集まった。

 看護師の女性は3月に京都市内の病院を辞め、青年海外協力隊としてセネガルに赴任する予定だった。が、コロナ禍で延期となり、呼び掛けに応じた。「コロナで大変な時に病院を辞めてしまったので、働く場所を与えていただいてありがたいです」と笑顔を見せる。

 同協会はホテルに加え、府内の保健所や帰国者・接触者外来にも看護師を派遣しており、千葉圭子専務理事(61)は「看護師の視野の広がりやキャリアアップにつながっている。今後も府民の健康を守るためコロナ対策に貢献できれば」と話している

■入所後、基本は自己管理

 宿泊施設での療養はどういった人が対象で、施設内での暮らしぶりはどのようなものなのだろうか。

 対象は、無症状または軽症者で、「高齢者」「基礎疾患のある人」「免疫抑制剤や抗がん剤を使っている人」「妊娠中の人」のいずれにも当てはまらないことが条件となる。こうした重症化のリスクの高い人は手厚い健康管理が必要なためだ。

 宿泊施設での暮らしは基本的に自己管理が求められる。そのため感染防止の留意点を守れることも入所の要件だ。さらに病床の空き具合も勘案し、最終的に保健所が入院の必要なしと判断すれば宿泊施設を利用できる。

 食事代を含め入所費用は不要。京都府作成の「入所のしおり」によると、シャンプーやリンスは備え付けの物が使え、タオルやブラシなどアメニティー類も1回分は提供される。だが、それ以外の身の回りの物は持参が必要。シーツは入所時の物を使用し続けなければならない。

 コインランドリーはなく、洗濯物の持ち帰りは退所日しかできない。飲酒、喫煙は禁止。家族との面会もできない。ただし、インターネットで購入した物をスタッフを通じて受け取ることは可能だ。

 症状が悪化しなければ、検査で陽性が確認されてから10日で退所が検討される。退所にあたり当初はPCR検査で2回陰性を確認する必要があったが、今は必須ではない。入所は強制ではないが、ストレスに耐えかねて他府県では「脱走」を試みる人もいた。

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