社説:菅首相初外遊 「不得手」な外交無難に

京都新聞 / 2020年10月21日 16時5分

 菅義偉首相がベトナムとインドネシアへ初外遊した。

 菅氏にとって「不得手」とみられがちな外交だが、初めて対面での首脳会談や政策スピーチをこなし、無難な外交デビューと言えよう。就任後初の外遊先に東南アジアを選んだ意義も小さくない。

 歴代首相の多くが初訪問国に米国を選び、日米緊密を重視する中、菅氏の外遊先は対中国で安全保障上の懸念を抱く2国だった。

 ベトナムは今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国を務め、インドネシアはASEANで唯一の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)メンバーだ。

 東・南シナ海で軍事力を拡大する中国の動きを踏まえ、経済と安全保障の両面からASEANとの関係強化を図る狙いがあったのだろう。日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた意気込みが目立った。

 ハノイでの演説で菅氏は、中国を念頭に「この地域では、法の支配や開放性とは逆行する動きが起きている」と批判した。日本の立場を印象付けたと言えよう。

 ベトナムは経済的に日本との結びつきが強い。菅氏はフック首相との会談で、日本への医薬品などのサプライチェーン(調達・供給網)強化に向けた連携や、日本で生産される防衛装備品の輸出に関する協定で実質合意した。人口、国内総生産(GDP)共に域内の約4割を占めるインドネシアは、伝統的な親日国として知られる。菅氏はジョコ大統領にコロナ禍を踏まえた財政支援などを伝えた。

 両国を含めた東南アジアは、中国やインドに続き高い経済成長が見込める地域だ。日本経済の活路を開くためにも、大切なパートナーにしなければならない。

 ただ新首相が外交方針を示す前に外遊したことに対し、批判は根強い。国会での所信表明もなく、何ら外交政策を語らないまま外遊するのは順序が逆ではないか。

 「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、80に上る国・地域へ外遊を重ねた安倍晋三前首相に比べ、菅氏は国際舞台での経験が乏しい。前政権の路線継承を掲げ、米国と連携しながら中国との経済的なつながりも重視する構えだが、米中が対立を深める中、展開次第では両大国の間で板挟みになる恐れもある。

 徴用工問題を巡り「戦後最悪」の韓国との関係改善も急がねばならない。北朝鮮による日本人拉致問題や、ロシアとの北方領土交渉も暗礁に乗り上げている。菅氏の外交手腕が試される。

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