社説:川辺川ダム容認 結論急がず熟議重ねて
京都新聞 / 2020年11月14日 16時5分
7月の豪雨で氾濫した熊本県・球磨川を巡り、蒲島郁夫知事は支流での川辺川ダム建設の容認を近く表明する見通しという。
流域の住民の間で賛否は分かれている。ダムについて一定の効果が示される一方で、専門家から異論も出ている。
結論を急がず、もっと住民や専門家を交えて協議を重ねるべきではないか。
国はダムだけに頼らず堤防強化や遊水地の活用などによる流域治水を打ち出したばかりだ。球磨川流域の取り組みは、全国から注目されるだけに、知事には熟慮してもらいたい。
7月豪雨によって、県内で65人が死亡、球磨川流域での浸水戸数は6千を超す。治水対策は復興に欠かせない。
復興に関する県の有識者会議(五十旗頭真(いおきべまこと)座長)は、自然を地域振興に生かすことを柱に提言している。その中で、川辺川ダム建設の是非について「科学的根拠を住民に示して議論を進め、民意を形成することが重要」と指摘している。学者でもある知事は十分に心得ていることだろう。
国は川辺川ダムがあれば7月豪雨の一部浸水範囲が「約6割減少」と推計した。しかし、河川工学の専門家からは疑問の声も出ている。知事は、環境への負荷が低いとされる「穴あきダム」を検討しているようだが、効果は証明されていないとの指摘もある。
科学的根拠として使われるデータは、さまざまな専門家らによる吟味が不可欠だ。
川辺川ダムは1966年に計画され、地元は賛成派と反対派で対立した。2008年に知事となった蒲島氏は反対を表明したが、7月豪雨で「ダムは選択肢の一つ」と方針を転換した。
知事は「民意を重視する」としている。確かに住民や経済団体の約450人から意見聴取し、協議会を立ち上げている。しかし協議会の構成員は国、県、流域12市町村の首長だ。住民や専門家、NPOなどを加えるべきではないか。
かつて改正河川法に基づいて設置された淀川水系流域委員会には流域の住民やNPO、環境や河川の専門家らが参加し、多様な観点から流域管理について議論を展開、情報を公開した。画期的な活動は「淀川モデル」と言われている。
球磨川流域でも、新しいモデルとなる取り組みを期待したい。初めからダムありきではなく、避難や情報伝達などソフト面と組み合わせ、清流保全と両立する流域治水への道を議論してほしい。
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