社説:元慰安婦判決 日韓関係を壊しかねぬ
京都新聞 / 2021年1月13日 16時0分
日本と韓国の関係に、新たな難題が突きつけられた。
旧日本軍の元従軍慰安婦の女性12人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、韓国のソウル中央地裁は賠償を命じる判決を出した。
国際法上、国家は外国の裁判権に服さないとされる「主権免除」の原則がある。
だが、判決は慰安婦動員を「計画的、組織的に行われた反人道的犯罪行為」と認定し、主権免除は適用できないと判断した。
独立した国家が互いの平等を認め合い、主権を尊重するという主権免除の目的に照らし、理解し難い判決と言わざるを得ない。
日本政府は主権免除の観点から訴訟に応じていない。控訴もしない方針だ。その場合、判決は23日に確定し、韓国にある日本の国有資産の差し押さえという事態に発展する恐れもある。
日韓間の請求権問題に関しては「完全かつ最終的な解決」を定めた1965年の日韓請求権協定があり、2015年の日韓合意でも、元慰安婦問題の「最終的な解決」が確認された。
日韓合意は、元慰安婦の救済を優先させるために両政府が歩み寄った成果としての意義が大きい。
合意では、当時の安倍晋三首相が「おわびと反省の気持ち」を表明し、日本政府が拠出した10億円を基に被害者支援のための財団も設けられた。当時存命だった元慰安婦の多くが、財団を通じて現金を受け取っている。
だが、合意無効を掲げた文在寅政権の誕生で、事実上、骨抜きにされ、財団も文政権が一方的に解散した経緯がある。
日韓関係は、元徴用工問題で戦後最悪と言われるほど冷え込んでいる。今回の判決で、韓国政府が元徴用工訴訟と同様、三権分立を盾に「司法判断を尊重する」姿勢に終始するなら、関係悪化は決定的にならざるをえない。
もつれた糸をほどくには、日韓合意に立ち返り、政治主導で解決を図るしかない。
韓国政府はこれまでの2国間の取り組みをあらためて評価し直すべきだ。問題解決のための両国の努力の歴史を無にするべきではない。
日本政府にも、元慰安婦問題が植民地支配の歴史に根付くことを踏まえ、節度ある姿勢で冷静に対応するよう求めたい。
厳しさを増す安全保障問題をはじめ、日韓が手を携えて対処すべき問題は多い。
両国の関係を泥沼化させてはならない。
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