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ペンライトでコール、不思議な「歌舞伎」 中村獅童×初音ミク共演、京都から配信

京都新聞 / 2021年9月9日 19時35分

カーテンコールで歌う初音ミク(上)と舞台を走り回る中村獅童(左)=京都市東山区・南座((C)NTT・松竹P/(C)超歌舞伎)

 歌舞伎俳優の中村獅童(48)とCGのバーチャルシンガー・初音(はつね)ミクが共演し、京都・南座で26日まで開催中の「超歌舞伎(ちょうかぶき)」公演が国内外に配信される。12日はライブ映像を国内向けに、20日~26日には、英語字幕を付けて世界11カ国に配信する。

■ニコニコ発の舞台、ネット世代に人気

 歌舞伎発祥の地・京都にある南座が不思議な劇場空間になっている。最後のカーテンコールになると、スクリーンに大写しになった初音ミクがかわいい声で歌い始め、ペンライトを手に舞台を動き回る中村獅童が「もっともっと」「おい!おい!」と客席をあおる。観客もペンライトを振って応える。紙吹雪の中、舞台と客席が一体となって盛り上がる演出になっている。

 千葉・幕張メッセでの「ニコニコ超会議」で5年前から毎年演目を替え続いている「超歌舞伎」。南座には2年前に初進出した。

 幕張メッセはネット世代の若者が客席に多い。南座は、そうした若者に加え、歌舞伎好きの中高年、親子連れといった幅広い世代が訪れている。舞台が「古典と新技術の融合」ならば、客席も、老若男女が溶け込み、古今融合の雰囲気がある。

 公演は2時間半。新作舞踊「都染戯場彩(みやこぞめかぶきのいろどり)」(上演時間30分)と、休憩を挟み、ミクが悪役に挑む芝居「御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)」(1時間半)の2本立てでおくる。

 舞踊「都染―」は、「雪」の場面で獅子の精にふんした獅童とミクが登場。「連獅子(れんじし)」のように勇壮な毛振りを披露する。前の場面で粋な鳶頭(とびがしら)(澤村國矢(くにや))が踊る「月」、御所での花見を雅に表す「花」があり、「雪月花」の3景を見せる趣向。


 ■シュールな光景も、客席には笑顔

 続く「御伽草紙―」は京が舞台。「土蜘(つちぐも)」や近松門左衛門作「関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま)」などの古典を基に創作した。

 亡き平将門の娘である七綾姫(ななあやひめ)(ミク)は、京の廓(くるわ)で傾城(けいせい)(最高級の遊女)の七綾太夫となって、反撃の機会を狙っていたが、宿敵の源頼光(よりみつ)(獅童)と恋仲になってしまう。その後、盗賊の男(獅童の二役)に斬(き)り捨てられた七綾太夫の亡魂は、日本の魔界化を狙う物の怪(け)によって蜘蛛(くも)と合体。頼光の命を狙うが…。

 坂東玉三郎の名舞台でも知られる「蜘蛛の拍子舞(ひょうしまい)」をミクが恋づくしの歌を歌いながら舞ったり、千筋の蜘蛛の糸をまいて立ち回りをしたり。2年前の南座で見せた獅童とミクの「二人宙乗り」のようなド派手な演出はコロナ禍で少し控えめになった半面、獅童が演じる頼光と盗賊の早替わりや、「義経千本桜」のいがみの権太(ごんた)のように素行の悪かった盗賊の男が本心を明かす愁嘆場など、伝統的な歌舞伎の表現手法をより多く盛り込んだ。

 また、コロナ禍で客席からの掛け声が禁止の中、観客が持つペンライトを用いた演出を工夫。ボタンを押すと「萬屋!」などの大向こうの音声が流れる。顔見世のような大(おお)歌舞伎では雰囲気を損ないそうだが、超歌舞伎ならばシュールな光景として客席に笑顔が広がる。さらに終盤ではペンライトの光を、デジタル技術を生かして頼光がまとう「超越の術」を披露した。

 コロナ禍でなかったら訪日観光客も喜んだであろう「ネオ・ジャパン」な舞台。超歌舞伎がきっかけで歌舞伎や南座に触れた人が、さらに深く魅力を感じられる演目立てを、師走の顔見世や他の公演でも用意できるか。その絶妙なバランスが、京都を代表する劇場の真価として問われる。

 

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