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社説:緊急事態の延長 対策を形骸化させるな

京都新聞 / 2021年9月10日 16時5分

 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が、京都府や滋賀県を含む19都道府県で30日まで延長されることになった。

 新規感染者数は減少傾向が見られるものの高い水準で推移しており、医療はなお崩壊の瀬戸際にある。延長はやむを得ない判断だ。

 ただ、これまでも緊急事態の発令や延長が繰り返され、国民には慣れや「自粛疲れ」がみられる。宣言の効果は薄れているようだ。

 今回の宣言延長による外食など行動制限の継続を、感染抑止にどうつなげるのか。政府は改めて具体的な手だてを示すべきだ。

 延長に際し、政府の感染症対策分科会は、宣言の解除を検討する場合の新たな基準をまとめた。

 病床使用率や重症病床使用率が50%未満-といった従来の数値に加え、「自宅療養と入院先調整中の人の合計が10万人当たり60人程度」「救急搬送が困難な事例が減少傾向」などの条件を設けた。

 解除の基準に医療の逼迫(ひっぱく)度を重視する指標を加えたのは、現実を踏まえた対応といえる。

 ただ、現在の感染状況は、宣言解除を見通せる段階にはない。

 厚生労働省の集計(8日時点)では、現在宣言が出ている21都道府県のうち16都府県で病床使用率が50%を超えている。京都、滋賀はともに75%を上回っている。

 自宅療養者と入院先調整中の人数も、半分以上の地域で新たな解除基準を満たしていないという。

 30日までの延長でこうした状況をどれだけ改善できるかは未知数だ。医療現場の負担軽減策を着実に進める必要がある。

 気になるのは、緊急事態宣言の継続を決めた一方で、ワクチン接種の進展を前提に、宣言発令地域でも県をまたぐ旅行や大規模イベントの人数などの制限を緩和する案を打ち出したことだ。

 ワクチンを2回接種済みか陰性証明があることが条件だという。コロナと共存しながら、経済活動の再開にかじを切る形だ。

 ただ、専門家からは、感染力の強いデルタ株の影響を考慮すべきなどと拙速な対応を戒める見方も出ている。感染防止の取り組みを形骸化させる恐れがある。

 科学的根拠を踏まえた十分な検討が欠かせない。

 制限緩和の背景には、衆院選をにらんだ政権のもくろみもうかがえる。感染対策が政治的思惑に左右されてはならない。

 政府は国民の命と健康を最優先に、実効性ある対策に取り組むべきだ。

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