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社説:困窮者の支援 生活再建へ給付の拡充を

京都新聞 / 2021年9月20日 16時0分

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、生活が苦しくなる人が後を絶たない。

 困窮した世帯に特例的に生活資金を貸し付ける国の制度は、全国の利用総額が1兆円を突破している。窮地をしのぐ一定の支えとなっているのは確かだろう。

 ただ、長引くコロナ禍で生活を立て直せないまま、借金が積み上がることへ不安の声は根強い。政府は、補完的に新たな支援金の給付も始めたが、要件の厳しさから利用は低調に推移している。

 仕事や収入の減少などで経済的、精神的に追い詰められる人たちが、公的な支えを求めるのをためらったり、必要な助けが届かなかったりするのでは、困窮からの脱却はおぼつかない。

 生活再建に着実につなげる支援の在り方が問われている。

 特例貸し付けは無利子で、一時的に生活費を最大20万円まで貸す「緊急小口資金」と、失業者らの暮らしの立て直しに最大60万円を3回まで貸す「総合支援資金」がある。もともと低所得世帯向けの制度をコロナ禍で減収になった人に対象を広げ、上限額も引き上げた。

 昨年3月の開始から累計の利用件数は270万件超に上る。対象を拡大したとはいえリーマン・ショック時をはるかに上回り、飲食店の営業制限や外出・移動の自粛など経済活動の制約に伴う生活苦の広がりを物語っている。

 利用者が受け取った資金は、あくまで借金だ。所得の減少が続く住民税非課税世帯など免除対象は限られ、他は早ければ来年度から返済を求められる。

 コロナ禍の長期化から「返す見通しが立たない」と利用を諦める人が少なくない。申請窓口の福祉職員も「借金を増やし、負担になるのでは」と葛藤し、制度の有効性を疑問視する人が多いという。貸し付けを困窮者支援の中心とすることに無理があるのは明らかだろう。

 政府は7月、特例貸付制度を使っても生活がなお苦しい世帯向けに最大30万円の「生活困窮者自立支援金」支給を始めた。返済が不要な給付金としたが、8月末までの申請件数は京都府、滋賀県とも対象世帯の2割程度にとどまっている。

 貸し付けの限度額200万円まで借りた上、月2回以上の求職活動などを求めた利用要件が困窮者にとって重荷で、使いにくいという。生活の維持・再建に安心して充てられる給付金や、貸し付けの返済減免措置の拡充が求められよう。

 困窮が深刻なのが、ひとり親世帯だ。子育てや家事のため非正規雇用が多く、失業や収入減が直撃した。政府は昨年から3回の現金給付を行ったが、十分な食事を買えない世帯も少なくないと指摘されている。

 自民党総裁選や衆院選に向けた野党の公約で、生活支援策として1人一律10万円の再給付論が挙がっている。

 効果が不透明な政策の乱発よりも、喫緊に必要としている困窮者の生活再建に向けた集中的な給付や職業訓練などの充実を優先すべきではないか。

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