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社説:滋賀県警が無罪否定 判決に向き合わぬ傲慢

京都新聞 / 2021年9月22日 16時0分

 東近江市の湖東記念病院での患者死亡を巡る再審で無罪が確定した西山美香さんが、国と滋賀県に国家賠償を求めた訴訟で、県警が無罪判決を否定する内容の準備書面を提出した。

 冤罪(えんざい)で懲役12年の判決を受け服役し、20~30代の貴重な時間を奪われた西山さんの人権や名誉を再び深く傷つける行為だ。三日月大造知事が「極めて不適切」と謝罪したのは当然であり、県や県警は真摯(しんし)に反省して改めるべきだ。

 西山さんは県警や検察の違法捜査などで損害を受けたとして約4300万円を求めて昨年12月に大津地裁に提訴した。県や国は請求棄却を求めて争っている。

 再審の無罪判決は、患者の死因が致死性不整脈など複数の要因だった可能性を示した上で、「事件性を認める証拠はない」と断じた。西山さんの自白の信用性と任意性を否定し、担当刑事への恋愛感情を利用した誘導など捜査の不当性も認定した。

 だが、県警が出した準備書面は、患者の死因を「病死」とする原告西山さんの主張を否定し、「心肺停止状態に陥らせたのは原告」と反論。取り調べなど捜査についても不当性を認めなかった。さらに、「(刑事司法に携わる)全ての関係者が改善に結びつけなければならない」とする裁判長の説諭を「承服しがたい」とした。

 無罪判決の重みに向き合おうとしない傲慢(ごうまん)さと人権感覚の鈍さに憤りを禁じ得ない。

 県の対応も問題だ。

 国賠訴訟の場合、県の内規によると県警本部長の決裁を得た文書は、裁判所への提出前に県の担当部局長の決裁も必要とされている。今回、県警は内規に反して独断で準備書面を提出していた。

 三日月知事は、原告を犯人視するような書き方の修正を指示し、今後は準備書面を提出前に自らも確認するとした。大きな権力を持った県警の「暴走」を防ぐよう、内部統制を徹底すべきだ。

 国賠訴訟で西山さんは、「『事件』を教訓として冤罪(えんざい)を防ぎ、刑事司法を変えていきたい」との決意を語っている。

 県警の準備書面は、無罪判決が確定してもなお、自らの非を認めずメンツに固執する県警の組織体質を浮き彫りにした。このままでは、西山さんが危惧するように冤罪の悲劇を繰り返しかねない。

 県警は、不当捜査がなかったと主張するなら、原告側が求める捜査資料などの証拠提出に全面的に応じ、詳細を明らかにすべきだ。

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