1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

社説:岸田新総裁 党改革の本気度が試される

京都新聞 / 2021年9月30日 16時0分

 菅義偉首相の後継は、岸田文雄氏に託されることになった。

 きのうの自民党総裁選で、河野太郎氏との決選投票を制した。

 自民は、知名度と幅広い人気がある河野氏ではなく、派閥トップの岸田氏を選んだ。衆院選を間近に控えてはいるが、河野氏の未知数の突破力よりも岸田氏の安定感を重視したように見える。

 ただ岸田氏は、自民が長く依拠してきた新自由主義的な経済政策からの転換を掲げ、役員任期を制限する党改革案を打ち出した。

 これまでの政策や党運営の在り方が、修正される方向だ。

 現在の党の体質を刷新できるかどうか、自民は重要な局面に差し掛かったといえる。

 総裁選で示した新たな方針を衆院選の党公約にどう位置づけ、実現への道筋を付けていくか。岸田新総裁の手腕が問われる。

 今回の総裁選は、菅首相の突然の退陣表明に伴うものだ。

 菅氏は新型コロナウイルス感染拡大に十分対応できず、国民への説明の稚拙さも失望を招いた。

 有効な手が打てないまま、政権を投げださざるを得ない状況に追い込まれたのは明らかだ。

 コロナ対策に後れをとった政権の責任は重大だ。党総裁が代わっても帳消しにはできない。

 自民の総裁は次期首相に選出される。岸田氏はこれまでのコロナ対応を検証し、実効性ある対策を練り直す必要がある。国民の命を守ることは、政権党の重要な責務である。口先だけでは済まない。

 派閥の思惑が働いた

 岸田氏は、1回目の投票は1票差で河野氏を抑え、決選投票で大差をつけた。いずれも国会議員からの支持が大きな勝因だ。

 一方、河野氏は党員票や地方票で2回とも岸田氏を上回った。

 国会議員と党員で、支持にずれがあることが浮き彫りになった。

 今回、若手議員らが派閥の意向に縛られない投票行動を模索するなどの動きがみられ、多くの派閥が事実上の自主投票とした。

 しかし、決選投票での得票差は「勝ち馬」に乗りたい派閥の論理が働いたことをうかがわせる。

 岸田氏は党役員の任期制限で権力集中と惰性を防ぎ、中堅・若手を大胆に登用するなど「党の若返り」を訴えてきた。

 これに対しては、長老格の党幹部から反発する声も聞かれた。

 派閥の思惑を超えて大胆な党改革を実行できるかどうかが問われている。組閣や党役員人事で独自色を出せるかが試金石だ。派閥力学や論功行賞にとらわれるなら、求心力は低下しよう。

 投票で示された党員の思いとは裏腹に岸田氏が選ばれたことも、今後の党運営に影響する可能性がある。河野氏はじめ総裁選に立った高市早苗、野田聖子両氏の処遇も含め、適材適所の人事配置で挙党態勢をつくれるかも課題だ。

 国民の声聞いてこそ

 自民党が政権に返り咲いて8年9カ月に及んだ安倍晋三前首相-菅首相の政治手法をどう総括するのかも注目されたが、岸田氏はその評価を明確にしていない。

 安倍政権は、安全保障法制などの重要法案で強行的な採決を繰り返し、国会答弁でも論理のすり替えや説明の回避などが目立った。菅政権も人事権で官僚を支配し、総務省の違法接待問題など行政をゆがめたとの疑念を抱かせた。

 権力を首相周辺に集める「1強体制」のおごりが、数々の不祥事を生んだともいえる。

 岸田氏はきのう、「生まれ変わった自民党を国民の前に示す」と述べたが、自身もその体制下で要職に就き、一翼を担ってきた。

 これまでと異なる党運営を目指すなら、安倍・菅路線をどう捉えているかを語るべきだ。

 森友問題に関し、総裁選では再調査に否定的で、新総裁選出後も「政治の立場から、必要であれば説明する」と話すにとどまった。党に関わる疑惑にどう向き合うか、改革への本気度が試される。

 岸田氏は有権者の要望をノートに書き留め、人々の声をしっかり聞く姿をアピールしている。

 菅氏が国民の声に誠実に応えてこなかっただけに、対話姿勢は新鮮に見える。それにとどまらず、打ち出した政策に肉付けし、具体化する実行力も欠かせない。

 岸田氏が示した経済政策は「富める者と富まざる者の分断が生じている」と指摘し、成長と分配の在り方に着目した新しい政策の必要性を訴えている。

 「顔」代わるだけでは

 近年の自民政権が志向してきた方向性とは異なる打ち出しと言える。コロナ禍でいっそう広がった経済格差の克服に重要な意味を持つように思える。党内での骨太な議論が欠かせない。

 総裁選では、子育て世帯の教育費や住居費支援にも言及し、コロナ禍で困窮する当事者への目配りも見せた。

 だが、年金をはじめ社会保障への具体策は見えず、財政再建への展望も示されなかった。

 総裁の「顔」は代わったが、目指す社会像や党運営の行方が明確になったとは言えない。

 衆院選に向け、国民に見える政策にまとめ上げられるか。岸田氏の力量が試されている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング