1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

遠ざかる公助、拡大する貧困 自己責任を押し付ける政治に、ため息

京都新聞 / 2021年10月22日 10時30分

京都市から送られてきた生活保護費の通知を手にする女性(京都市西京区)=画像の一部を加工しています

 京都市西京区の女性(68)は、市から送られてきた生活保護費の通知を手にため息をつく。

 家賃を除けば、手元に残るのは月8万円台。食費は月2万数千円に抑えるが、残りは光熱費などですぐ底をつく。「社会保障の財源」とされる消費税も10%に達し、暮らしを圧迫する。

 元夫の暴力的な言動が原因で、20年ほど前に離婚した。だが、黄色靭帯(じんたい)が骨化して神経を圧迫する難病「黄色靱帯骨化症」などを抱え、安定した仕事に就けず生活保護に頼った。

 節電に気を配り、風呂は湯船に浸からずシャワーで済ませる。食事はキャベツやキノコを入れた鍋がおかずの定番で、たまの通院時に回転すし店へ立ち寄ることが数少ない「ぜいたく」だ。

■生活保護削減

 安倍晋三政権時代の2013年から物価指数の下落を理由に、生活保護費が引き下げられた。衣食や光熱費など日常生活に充てる「生活扶助」が最大10%引き下げられ、削減総額は約670億円に上る。

 女性は憲法の定める生存権の侵害だとして、14年には国と京都市を相手に引き下げ取り消しなどを求めた集団訴訟に原告として参加した。切実な声は届かず、今年9月の京都地裁判決は請求を退けた。安倍政権は18年からも多くの世帯の生活保護費を削った。この数年で生活扶助は月6千円以上減った。「人によってはたった6千円かもしれないが、私にとっては1週間の食費以上。国から『生きる価値はない』と言われているように感じる」と声を絞り出す。

■「自助の強要」

 新型コロナウイルス禍の以前から続く景気低迷や高齢化の進行などで、生活保護の受給世帯は増えている。第2次安倍政権が発足した12年12月は157万823世帯だったが、後継の菅義偉政権が続いていた今年7月は164万186世帯となった。

 一方、このセーフティーネットからこぼれ落ちたり、たどり着けなかったりする人たちは少なくない。生活保護基準を下回る所得しかない世帯で実際に生活保護を利用する割合は、わずか2割に過ぎない。

 「自分でできることは、まず自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする」。コロナ禍で生活に困窮する人がさらに増加するさなかの昨年10月、菅前首相の所信表明演説は「自助の強要」だと一部に波紋を呼んだ。

 国のトップが公助を遠ざける姿勢を取れば、社会が困っている人に手を差し伸べない風潮を助長しかねない。そのしわ寄せは子どもたちに押し寄せる。

■子どもへの影響

 「学力低下や不登校、いじめには原因として貧困が隠れていることがある。寄り添う時にはそういった視点に立たないと解決しない」。子どもの居場所づくりに取り組む「こどもソーシャルワークセンター」(大津市)の幸重忠孝理事長(48)はこう指摘する。センターを利用する子どもの家庭は多くが経済的に苦しい。

 地域の団体と協力して取り組むヘアカットや居場所カフェで、さまざまな事情を抱えた子どもと接してきた。「好きで伸ばしている」と強がりを言いながらも髪を切った後、うれしそうに笑った子。必要とする人に余剰食品を配るフードバンクの食材が残っているのを見て、「仕方ないな」と嫌々を装いながらたくさん持ち帰っていく子。

 日本の子どもは7人に1人が貧困状態にあり、安倍・菅政権時代も大きく改善されていない。未来を担う子どもたちを社会でどう支えるか。「自己責任」を押し付けるだけでは、貧困の連鎖を断ち切れないと幸重さんは指摘する。

 岸田文雄首相は就任後の所信表明演説で「全世代型社会保障の構築を進める」とし、野党も充実策を訴える。人口減が進む中で財源を確保しつつ、社会の安全網をどう編み直すのか。政治は率直に語るべきだ。

 ◇

 岸田文雄首相が衆院を解散し、4年ぶりの衆院選(19日公示、31日投開票)が行われる。与党の圧倒的な数の力で在任歴代最長となった安倍元首相と路線を継承した菅前首相の政権運営は、今月初旬まで9年近くにも及んだ。「安倍・菅政治」がもたらした変化や問われるべき課題を京都、滋賀から見つめる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング