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社説:第2次岸田内閣 説明と対話の姿勢忘れるな

京都新聞 / 2021年11月11日 16時0分

 岸田文雄首相が第2次政権の内閣をスタートさせた。

 先月の衆院選で、自民党は引き続き絶対安定多数を確保し、岸田政権は国民の信任を得た。

 選挙戦で掲げた「新しい資本主義」など国民生活に関わる政策をどのように実行するか、これからの政権運営で真価が問われよう。

 第2次内閣の閣僚は、自民幹事長に転出した外相のポストを補充した以外は、すべて再任した。本格政権へ踏み出したといえる。

 ただ、衆院選に先立つ党総裁選では、経済政策などで前任の安倍晋三・菅義偉両政権と異なる路線を示しながら、選挙公約に金融所得課税強化の記載を見送るなど、主張を後退させる面も目立った。

 安倍・菅政権とは違う新しい政権の姿を明確に示せるかどうか。国民はそこを注視している。これまでの政権に足りなかった説明を尽くし、国民と対話する姿勢が欠かせない。得意という「聞く力」を生かすことができるかだ。

 看板政策の「新しい資本主義」の内容は、はっきりしていない。分配に着目し、分厚い中間層の復活を主眼としていたはずだ。

 従来の路線と似通う

 看護師や介護士、保育士の収入増に向け、国が決定する「公的価格」を見直す方向をさっそく打ち出したのは一歩前進といえる。

 しかし、賃上げに積極的な企業を税制などで優遇したり、先端技術への投資強化で企業活動をけん引したりする手法は、成長を重視してきた従来の路線とも似通う。

 岸田氏の政策が、中間層の育成や経済格差の解消にどうつながるかは分かりにくい。アベノミクスの総括も含め、政策効果を具体的に語ることが必要だ。

 政策を裏打ちする財源論への目配りも欠かせない。新型コロナウイルス対策で巨額の財政出動がなされたこともあって、国の借金は1200兆円超に膨らんだ。

 目の前の困窮者を救う政策は必要だが、借金以外の財源確保に関する議論はほとんどなされず、財政規律は棚上げされている。

 近く示す30兆円規模の経済対策も借金に頼ることになりそうだ。財政の持続可能性や債務膨張のリスクを見据えることなしに責任ある政策は打てないことを、岸田氏は認識すべきだ。

 コロナ感染は下火になっているが、再流行に備えて病床や医療人材の確保に向けた取り組みを着実に進めたい。国民の生命と健康を守ることが政治の大きな役割であることを忘れてはならない。

 歴代政権が先送りしてきた社会保障制度の再構築は、切迫した問題だ。団塊の世代が75歳になり始める2022年が間近だ。

 6月に成立した医療制度改革関連法で一部高齢患者の窓口負担引き上げが決まったが、現役世代への恩恵は乏しく、本格的改革には遠い。議論に本腰を入れる時だ。

 負担と給付の在り方は中間層の暮らしに密接に関わる。岸田氏には避けられないテーマのはずだ。

 外交は難しい局面にある。米中対立が激化する中、日本は安全保障面で米国に依存しながら、経済的には中国との関わりも無視できない複雑な立ち位置にある。

 対立を深める2大国の間で、新たな戦略を練り直す必要がある。

 日本の姿勢示せるか

 対中国では、香港や新疆ウイグル自治区での人権弾圧を念頭に、担当の首相補佐官を置いた。経済活動と併せて、人権問題を重視する日本の姿勢を明確にできるかどうかが試される。

 冷え込んでいる日韓関係や北朝鮮の核・拉致問題の打開に向けた手だても問われる。

 世界的な気候異変が深刻化する中、温室効果ガス削減への具体策づくりは喫緊の課題だ。

 開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、岸田氏は石炭火力発電廃止の道筋を示せなかった。このままでは世界の潮流に遅れてしまう。

 炭素税の検討や原発の扱いも含め、エネルギー政策の転換に踏み込む必要がある。衆知を集めて実効性ある解を探るべきだ。

 衆院選の結果、改憲に積極的な勢力が議席を伸ばした。憲法問題が改めて俎上(そじょう)に上ってきそうだ。

 岸田氏は護憲色が強い自民派閥「宏池会」を率い、かつては9条改正に慎重な発言をしていた。それが総裁選では9条への自衛隊明記を含む改憲に前向きな姿勢を示し、専守防衛を逸脱しかねない敵基地攻撃能力保有にも言及した。

 優先課題の見極めを

 ただ、自衛隊明記などを巡る国民的議論は進んでいない。

 共同通信が今月初めに行った世論調査では、衆院選で最も重視されたのは経済政策で、次が年金・医療・介護。改憲を挙げた人はわずかだった。国民にとって優先すべき政治課題は何か、よく見極めなければならない。

 安倍・菅政権では巨大与党が国会を支配し、立法府が政権の追認機関のようになっていた。

 衆院選が戦後3番目の低投票率となったのは、数に任せて多様な意見を封じてきた国会の在り方に対する不信感の表れにも思える。

 与野党とも国会の役割を認識し直し、地道な議論を積み上げる場にしてほしい。

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