医療的ケア児に当たり前の日常を・・・。家族の求める支援とは!?
KYTニュース / 2025年1月25日 10時0分
日常的に医療的なケアが必要な子供達について。医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止をめざし2021年に支援法が施行され、県内でも徐々に保育園や学校などでの受け入れが進みつつあります。医療的ケア児を取り巻く環境は今どうなっているのか、そして家族の求める支援とは!?
■医療的ケア児を取り巻く環境は??
この春、湧水町の幼稚園に入園した外村 優翔くん4歳。たんの吸引などが必要な医療的ケア児です。水頭症という先天性の病気により生後2か月で気管切開。9回もの手術を乗り越えてきました。
教室では、優翔くんの座るマットを囲んで早速おままごとが始まりました。
「うーうー」
「面白かったのテンションが上がってる」
付き添っている母の順子さんは「幼稚園に通い始めて動きが活発になった」と目を細めます。
(母・順子さん)
「活発に動く子供達を見て、僕もああなりたいなっていうのがあるのかなと、すごい楽し
いと声がでてテンションが上がって、家に帰ってもニコニコが幼稚園の日はすごい」
子供達は優翔くんと一緒にできる遊びをどんどん思いつきます。
(園児)
「トンネル通りまーす。楽しいね!ゆうくん」
体温調節が難しい優翔くんのため、園は遊戯室を仕切って個室も作りました。医療的ケア児が園に通うには、看護師の存在が欠かせません。町から派遣された看護師は子供の看護経験が無いため、しばらくは霧島市の訪問看護ステーションからサポートに来てもらっています。
(看護師 比良田えみさん)
「(今後1人になる?)そうですね今のところそれを考えると不安」
胃ろうから昼ごはんを注入する間、お母さんは1時間だけ自宅に帰れるようになりました。
■徐々に母子分離を進めたい…。幼稚園には不安も…。
受け入れの中で生まれる様々な課題を話し合うため毎月支援者が集まり会議を開いています。
(母・順子さん)
「1時間だけ家に帰ってご飯を食べる時間が出来て、それが出来たのが4年ぶりぐらい。ゆっくり、ご飯を食べる時間ができた。看護師さんや先生が慣れてきたら(母子分離を)長くできたら私も優翔も楽しいのかな」
徐々に母子分離を進めたいと話すお母さんに対し、幼稚園側が不安を吐露する場面も。
(吉松幼稚園・園長)
「命に係わる…もしお母さんがいない時にそういうことがあったら大変なことになるなと」
数年前から保育園に通わせたいと行政に訴え続けていたお母さん。入園の大きな後押しとなったのは、23年9月に開所した医療的ケア児等支援センターです。地域の幼稚園・保育園や学校に通いたいという相談が最も多く、これまでに38人の入園や入学を実現させました。
(前野かつ子センター長)
「医療的ケア児は看護師がいないと支援できないので看護師をどう確保するのか。地域の看護師を採用するというのは難しいので今、一番やっているのは訪問看護ステーションから派遣してもらう対策をとっている」
看護師の確保に加え、新たな課題も。
(前野かつ子センター長)
「引き受ける保育園の保育士さんとか対応する看護師さんへの教育だったり、不安感を支援する体制が出来ていなかった」
先月。センター長の前野さんが顔を出したのは、医療的ケア児の親たちが作るママサークル。情報交換したり悩みを相談しあったりしています。
「下手したら1時間おきにオムツ替えたりしてずーっと新生児を見ている感じ」
「夜中もずっと2人で交代で起きないといけなくてきつかったけど、休むときは休まないといけないと言うのが分かってきたのですぐ寝るワザを身につけた」
息子の陽太くんが退院して2か月になるという櫻木さん夫婦。24時間たんの吸引が必要で、胃ろうからの栄養の注入もあります。
(母・久美さん)
「医療的ケア児の親になると思ってないし、知らないことばかりだからこういう場に来るかSNSで繋がるしか情報収集のしようがない」
お父さんは仕事を辞めて陽太くんに付き添う選択をしました。
(父・涼太郎さん)
「医療的ケア児の存在自体が知られていない。上司に自分の子が医療的ケア児なんでと言ってもぽかんって感じなのでそこが難しい、隙間時間で働ける所を斡旋してくれる所があれば…」
社会との繋がりが欲しい…そう訴えます。
■元気な子たちと触れ合う時間が欲しい・・・
一方、5歳の娘を持つ山本さんには、別の悩みがありました。
「はいどーぞ!!」
元気いっぱいに走り回る真鈴ちゃん。毎日の日課は、注射です。
★注射
(2339うーん…お姉ちゃんだ)
鼻から胃まで管を入れての投薬もお手のもの。生後まもなく「短腸症候群」と診断され、1年以上入院生活を送りました。小腸が無く、食べ物から栄養をとることが出来ないため、夜間に点滴で栄養を注入します。日中の医療的ケアは無いものの、受け入れてくれる幼稚園探しには時間がかかりました。
年長さんのこの春ようやく幼稚園に通い始め、その成長ぶりに驚いているそう。
(母・鈴乃さん)
「喋らないと伝わらないってことが分かったみたいではっきり喋れるようになってきた。あまりイヤイヤ期とかもなかったし泣きじゃくって手付けられないとかもなかったけど最近ちょっとあるんです。ちょっと嬉しくて」
進学先を教育委員会と相談する時期が近づき、当初は特別支援学校への入学を考えていましたが。
(母・鈴乃さん)
「元気な子達と一緒にいるようになってすごく発達が良くなってきたけど、これで学校に行かせるのがもったいないというか、もう1年ぐらい元気な子達と触れ合う時間が欲しいと思って」
妊娠26週での早産で本来より学年が1つ上になってしまったこともあり、「もう1年幼稚園で過ごさせたい」と感じるようになったのです。
(母・鈴乃さん)
「特別支援学校に行った際と、もう1年元気な子と普通な幼稚園で活動できた場合(の成長が)明らかに違うと思う」
しかし、希望しても叶わなかったという先輩ママの話を聞き不安を感じています。県教育委員会によると、就学を1年遅らせる「就学猶予」という制度はあるものの、ここ数年該当者はいないと言います。
(母・鈴乃さん)
「こういう動ける、ぱっと見た目は分からない医ケア児は、いろんな悩みにぶち当たる。これからもうちょっと柔軟に(対応)してもらえるようになるといいな」
母の付き添い無しで幼稚園に通わせたい。仕事と子育てを両立させたい。子供の成長にあった環境を選びたい。
医療的ケア児や家族が求めているのは、“当たり前の日常”です。
(KYT news.everyかごしま 24年6月27日 放送)
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