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手抜きで更年期が楽に?医師に聞く「不調を和らげる生活習慣」

つやプラ / 2020年11月19日 12時0分

手抜きで更年期が楽に?医師に聞く「不調を和らげる生活習慣」

つやプラ世代の大きな関心事の一つである更年期。婦人科専門医の松村圭子先生に、前回は更年期の不調の原因と治療法について教えていただきました。

今回は、更年期の不調を和らげる方法や、更年期を快適に乗り切るための生活習慣についてお話をお伺いします。

■楽観的な性格の人ほど不調を感じにくい?

ーー前回、更年期の不調は女性ホルモンの波に揺さぶられて脳が混乱することから生じるとお伺いしましたが、症状の重い・軽いの差はどこから生まれるのでしょうか?

「ホットフラッシュやイライラ、動悸、めまい、不眠といった更年期の不調は自律神経の乱れから起こります。そもそもの原因は女性ホルモンが急激に変動することであり、それは必ずすべての女性に起こることなんです。でも、人によって不調が現れないこともあれば、治療が必要なほどひどい人もいます」

松村先生更年期(2)イメージ画像1

「その差は性格と環境からきていると思います。ストレスフルな環境は症状を悪化させやすいですし、ストレスフルな物の考え方をする人や生真面目であったり完璧主義な人、変化を柔軟に受け入れられない性格の人は、症状が重くなりやすいと感じますね」

「閉経=女性性の喪失と思ってしまったり、様々なことをネガティブに考えてしまう人、自分さえ我慢すればと思うような人も、不調が出やすいように思います」

ーー責任感が強い人は手を抜くことが苦手なので、不調を悪化させやすいんですね。

「これまでに多くの患者さんを見てきましたが、楽観的な性格の人の方が楽にスッと乗り越えていっているように感じますね」

「あとは環境的要因も大きいと思います。昔は更年期の頃には子供が巣立っていることが多かったですが、現代では子育て世代が更年期を迎えています」

「そうすると、子供の反抗期や受験、ママ友付き合いなどのストレスが更年期に影響してくるんです。今は女性が置かれている環境も様々で、その環境の違いによっても症状の程度に差が出てくるのだと思います」

■女性ホルモンの揺らぎが落ち着くまでの期間はだいたい2~5年

ーー更年期は閉経前後それぞれ5年間と聞きますが、本当に10年も不調が続くのでしょうか?

「個人差が大きいので一概には言えませんが、だいたい2~5年くらいが一般的だと思います。10年も続く人はほとんどいないですね。女性ホルモンが減ってきて、その状況で落ち着けば、症状も落ち着いてきます」

「人それぞれ、閉経前に不調が出る人もいれば、閉経後にひどくなる人もいます。前回もお話したように、女性ホルモンが減ったと思ったら、また脳が指令を出して持ち直してという波があるので、それに揺さぶられてしまうんですね。その揺らぎの中のどのあたりで症状が出るかというのは個人差があります」

松村先生更年期(2)イメージ画像2

「女性ホルモンが本格的に減少する前から症状が出る人もいます。女性ホルモンの値を測っても減っておらず、脳は女性ホルモンを出す指令をそんなに出していなくても、症状が前倒しで出るパターンもあります。その状態がいわゆる『プレ更年期』です」

「そういった期間を経て、1年間生理がない時点で閉経したと判断します。まれに2年間生理がなかったのに、生理がきたという人もいますが、大多数の人は1年間生理がなければ、もうそれ以降もないので、その時点から1年遡った年が閉経の歳となります」

■不規則な生活とストレスが更年期不調を悪化させる?

ーーつやプラ読者を対象に行ったアンケートで実際に感じている不調について聞いたところ、疲れやすさが1位に挙がり、2位がホットフラッシュでした。こういった不調を和らげるにはどうしたらいいのでしょうか?

「更年期は自律神経が乱れがちになっているので、それをさらに崩さないことですね。女性ホルモンの変動は加齢によって必然的に起こるので、それによる自律神経の乱れを最小限に抑える、つまりプラスアルファで乱さないことが重要です」

「自律神経は不規則さとストレスが大の苦手で、それによって不調がひどくなりやすいので、規則正しさとストレスの軽減が大切なんです」

松村先生更年期(2)イメージ画像3

「規則正しい生活のために重要なのは睡眠リズムを保つこと。そのためには、どんなに遅く寝ても起きる時間を一定にしましょう」

「ただでさえ更年期は自律神経の乱れで睡眠の質が悪くなるのに、寝る前までスマホを見たりしていると、さらに睡眠の質が低下してしまい、不調が出やすくなってしまいます」

「湯船に浸かってしっかりと体を温めて、体温が下がるとともに自然に睡眠に導かれるようにするなど、自分の生活の中でどれだけペースを保って、ストレスを軽減できるかが大切だと思いますね」

■寝溜めはNG!起きる時間を一定にしてリズムをキープして

ーー今のお話だと、睡眠時間を長く取るよりも、リズムを崩さないようにすることが大切なんですね。

「そうです。就寝時刻と起床時刻を一定にできればそれがいいのですが、それは忙しい世代には難しいですよね。であれば、せめて起きる時間を一定にしようというわけです」

「休日だからと寝溜めをせず、遅く起きても1時間くらいのズレになるようにしましょう。寝溜めは睡眠リズムを崩してしまいますから」

「睡眠の質を上げるのと同じくらい大切なのは、情報の取捨選択ですね。色々な情報を吸い上げて、一人で不安になってしまっている人がすごく多いと感じます。現代ならではのSNSストレスを減らしていくには、触れる情報をきちんと選ぶ必要があると思います」

松村先生更年期(2)イメージ画像4

ーー寝溜めはNGというお話でしたが、昼寝はどうでしょうか?

「適度な昼寝はいいですよ。深い眠りに入らない程度の昼寝なので、どちらかというと仮眠でしょうか。横にならず、テーブルにうつ伏せになって目を閉じるなど、本格的に眠らないようにして寝るんです」

「コーヒーを飲んでから寝るのも、カフェインの作用で20~30分くらいで目が覚めるのでいいですね。午後3時以降に30分以上眠ってしまうと、夜の眠りに影響が出るので、リセットのための軽い睡眠に留めましょう」

■手を抜きながら無理なくバランスの良い生活を

ーー睡眠以外の生活習慣についてはいかがですか。

「何事も過度の健康志向ではなく、緩やかにやることが大切だと思いますね。糖質制限などもやりすぎると栄養の偏りが生じますし、ストレスが大きくて心が折れてしまうと思います。気を抜くところとしっかり押さえるところをバランス良くするのが大切」

「食生活に関して言えば、更年期世代にはタンパク質をしっかり摂ってもらいたいですね。身体の土台を作るものですから。年齢を重ねるほどタンパク質が必要になってくるんです」

「お肉を食べているから元気なのか、元気だからお肉が食べられるのかわからないですが、歳を重ねても元気な人は、適度にお肉を食べていますよね」

松村先生更年期(2)イメージ画像5

「毎食片手のひら1枚分のタンパク質を摂りましょう。お肉、お魚だったら一切れ、朝食だったら納豆1パックでもいいし、卵かけご飯でもいいんです。それにインスタントでもいいからお味噌汁があればなお良いですよね」

「閉経後に骨がもろくなるから、カルシウムを摂らないとという人も多いですが、カルシウムは吸収率が低いので、吸収率を高めるビタミンDも合わせて摂りましょう。ビタミンDは鮭などのお魚や干し椎茸などに豊富に含まれています」

ーー納豆ご飯や卵かけご飯ならできる気がします!

「そうそう、旅館の朝食みたいなものを用意しようと思わなくていいんです。朝からお魚を焼くのはハードルが高いでしょ」

「お豆腐をパックから出して納豆をかけて食べたりなど、包丁要らずですぐに食べられて、タンパク質が摂れるものもたくさんあるんです」

「お味噌汁だって、必ず出汁を取らないといけないわけではなくて、出汁入りのお味噌をお湯で溶くだけでもいいんです。余裕がある時は丁寧に、疲れている時は手抜きをするというように、うまくバランスを取れるようになれば、体調をキープすることができると思いますよ」

■疲れた時はとにかく休む!更年期世代に無理は禁物です

ーー規則正しい生活を心がけていても、どうしても疲れてだるい!という時はどうしたらいいのでしょうか?

「休むのよ! とにかく無理をしないこと。更年期を迎える年頃というのは、がむしゃらに頑張る時期は過ぎたということなんです。更年期の不調には波があるので、元気がある時に頑張っておいて、しんどいときは休むべきという身体からのサインだと思って休みましょう」

「家事代行などの外注をうまく使ったり、周りに頼ったり、便利な家電を使ってもいいですよね。現代の更年期世代は、現役で仕事も子育ても親の介護もと忙しいので、どこかで手を抜かないと! 完璧にやるなんて無理だと割り切りましょう」

「不調を訴えて来院する方の中には、よくよく話を聞くと夫婦関係がうまくいっていないなど、別の不調の元を抱えている場合もあります。ストレスの上手な逃し方と自律神経を乱さない生活、その二つの習慣を更年期を迎える前に身につけておいて欲しいと思います」

ーー上手に手を抜く方法を身につけておきたいですね。次回は、更年期を乗り切るための心の持ちようなどについてお伺いします。

【松村 圭子(まつむら けいこ)先生 プロフィール】

更年期松村先生お顔写真

日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけている。西洋医学のほか、漢方薬や各種点滴療法なども取り入れて治療にあたっている。著書に『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店)などがある。

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