更年期は幸年期!医師に聞く「ハッピーな更年期のコツ」
つやプラ / 2020年11月24日 19時30分
つやプラ読者を対象に行った更年期に関するアンケートの結果を見ると、更年期による身体の不調への不安はもちろんのこと、気分の落ち込みなどメンタル面への不安も大きいようです。
そこで今回は、婦人科専門医で成城松村クリニック院長の松村圭子先生に、更年期への向き合い方や気持ちの切り替え方などについてお伺いします。
■生きがいが見つかると更年期の不調が軽くなる?
ーー読者の方へのアンケートで多く寄せられたのが、「更年期を迎えるのが怖い」「更年期をどうやって乗り越えれば良いのか分からない」といった不安の声でした。どうすれば更年期に対する精神的な不安を和らげることができるのでしょうか?
「1回目にもお話しましたが、更年期を恐れすぎないことだと思います。更年期というものが広く認知されたことで、受診や治療の機会が増えた反面、必要以上に不安を抱いてしまう人も増えたように感じます」
「更年期への不安を和らげる一番の方法は、生きがいを持つことだと思います。楽しみを見つけて生きがいを感じられるようになると、不調が軽くなったり、体調を崩しにくくなったりすることもあるんです。楽しみがある人は立ち止まらないので、不調を感じないまま更年期を通り過ぎていたという人もいます」
「私自身51歳で更年期世代なのですが、4年前から料理にハマっています。それまでほとんど料理をしなかったのですが、始めてみたら面白くて、通信講座で食生活アドバイザー検定2級の資格も取ってしまいました。打ち込めるものができると生活が変わると実感しましたし、食生活を改めたこともあって、更年期の不調知らずで過ごしています」
■何歳からでも遅くない!自分が楽しめることを探して
ーー生きがいや打ち込めることを見つけるのは難しそうな気がしてしまいます…
「生きがいや打ち込めることと言うと、英会話などの勉強やボランティアなど、ちゃんとしたものをやらなくちゃと考えがちなんですが、ドラマを一気見するでも、好きなタレントさんを応援するでも何でもいいんです」
「料理はしないと思っていた私がやってみたら楽しくて料理にハマったように、何でも『これはない』と決めつけない方がいいですね。料理をするようになったら、調味料を揃えたくなったり、おしゃれな食器が欲しくなったり、どんどん楽しみができて良いサイクルがめぐっていると感じます。そうなると生きることが楽しくなりますよ」
「料理以外にも、先日ファイナンシャルプランナー2級の資格を取得しました。お金に関してこれまで無頓着でしたが、更年期に差し掛かって自分の将来を考えた時に、これまでの丼勘定が不安になって。それで勉強を始めたんです。学ぶことで自分の今後を見つめるきっかけができましたし、何より学ぶことが楽しくて」
「もちろん記憶力は若い頃より格段に落ちていますが、それも歳を取るというのはこういうことなんだなと思うだけで、落ち込む必要はないんです。何歳からでも遅すぎることはないですし、何歳でもできるんです!」
ーーお忙しい毎日の中で勉強も、となると大変ではないですか?
「自分でやろうと決めてやっていることなので、忙しいとか疲れたとは思わないですね。やりたくてやっていることがあると、不調に見舞われている暇もなくなりますよ」
「今日はやることがいっぱいあるな、とは思っても、忙しいとは思わないんです。物事は捉え方次第ですから。例えば、ドーンとしんどい時があっても、それはずっと続くわけではなく、いずれ楽になる時が来ると考えれば、それほど深刻にならずに済むと思います」
「少しでもポジティブに捉えて、ちょっとしたことに楽しみを見出せるといいですよね。そういうことを積み重ねていくことが大切だと思います」
■更年期は荷物を降ろしていく時期。一人で抱え込まないで!
ーー「更年期の不調で家族や職場の人に迷惑をかけないか心配」「更年期のつらさを理解してもらえない」というお悩みもアンケートで挙がりましたが、どうすればいいのでしょうか?
「ちょうど管理職になる世代と更年期が重なることもあり、周囲の理解は課題の一つですね。責任感が強く真面目で、一人で抱え込んでしまう女性が多いのですが、ある程度手を離して、部下や周りの人に任せることも必要です。そのためにも部下をしっかり育てておくことが大切だと思います」
「更年期はこれまで抱えてきた荷物を降ろしていく時期だと考えましょう。真面目な人ほど、今までできたことがなぜできないの?と思ってしまいがちですが、年齢を重ねて、これまでと同じようにできないのは当たり前と思っていいんです。更年期を『荷物を降ろしながら生き方を変えていくきっかけ』と捉えるといいと思います」
「家族も同じで、夫や子供も料理ができるようにしておいたり、任せられるようにしておくといいですね。すべて自分がやらなくてはと思わず、色々なことを任せるようにしていくんです」
「あとは、毎日きちんと掃除をしなくても問題ない、家事代行を使うことは悪いことではないなど、家族に理解してもらうことも大切。家族、特に夫に理解があるのとないのとでは、症状の重さや改善に違いが出てきますから」
「家族から理解が得られない場合、一人で悩まず、同世代の女友達と悩みを共有するなど、理解しあえる仲間やコミュニティを見つけるといいと思います。つかず離れず、うまく距離感を取りながら付き合っていけるといいですね」
■外見の変化も楽しんで、今の自分に似合うものを見つけよう
ーー「更年期を経て閉経すると、どんどん老けていくのでは?」という不安を抱いている人も多いようです。
「たしかに、閉経すると肌や髪の状態は変わります。でも、年齢を重ねて見た目が変化していくのは当たり前。老いていく一方などと思うと辛くなりますが、外見がすべてではないですよね」
「変わっていくことを嘆くのではなく楽しめるといいと思います。メイクも髪型もファッションもこれまで好きだったものが似合わなくなったなら、もっと似合うものを探そう! と考えればいいと思いますし、今の自分だからこそ似合うものを楽しめばいいと思います。その年齢ならではのオシャレを探すのも大切ですよね」
■更年期は『幸年期』、人生後半戦をどう生きるか考える時期です
「更年期は身体が変わる時期であると同時に、考え方を変えていく大事な年代。今後の人生を考える折り返し地点なんです。そこで変わることを受け入れられないと辛くなるので、柔軟性を大切に、変化を楽しんでもらいたいと思います」
「更年期を期に、『これからは自分の人生を歩む』と考えるといいと思いますね。人生100年時代といわれる現代で、生理があることや外見が若く見えることばかりに価値を置いていては、あとの50年をやっていけない気がします。私はリタイア後の計画を立てていて、そのことを考えるとワクワクして元気が出ます」
ーー閉経後に自分の身体がどうなっていくのか分からず、それが不安という人もいました。
「それは誰にも分からないんですよね。ただ、どんな風に歳をとっていくかは、その人の過ごし方次第だと思います。自分が歳をとった姿はなかなかイメージできないですが、周りにいるお年寄りを見て、どんなおばあちゃんになりたいかを考えてみたり、どんな生活をしているか聞いてみるといいと思います。元気なお年寄りになるために必要なことが分かると思いますよ」
ーー何事も考えすぎて不安ばかりを大きくしないことが大切なんですね。
「そうなんです。更年期はある一定期間であり、必ずゴールがあるんです。私は更年期は『幸年期』と書くと思っていて、これまで頑張ってきた自分を労ったり、誰かのためではなく自分のために何をするか考えたりできる時期だと考えています」
「変化を楽しみながら、しなやかに生きていくにはどうすればいいかは、人それぞれ異なっていて正解はありません。自分なりの方法を見つけて欲しいと思いますし、それを見つけるのが更年期をうまく乗り切る術だと思います」
【松村 圭子(まつむら けいこ)先生 プロフィール】
日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけている。西洋医学のほか、漢方薬や各種点滴療法なども取り入れて治療にあたっている。著書に『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店)などがある。
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