閉経前後の不調を乗りきる!40・50代が知るべきこと&対策
つやプラ / 2023年10月19日 20時30分
40・50代に訪れる閉経前後の5年間は更年期と呼ばれ、ホルモンバランスや自律神経の乱れなどの、からだの変化が起こりやすい時期です。
心身のさまざまな不調に悩まされたり、病気のリスクを抱えたりすることが多くなります。
今回は、横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長の医師、横倉恒雄先生、および薬剤師/臨床検査技師の木村英子さんに、「閉経前後に起こるからだの不調への対策」について教えていただきました。
■閉経前後の更年期に起こるからだの変化
閉経前後の更年期になると、ホルモンバランスや自律神経の状態が変わることで、からだにさまざまな変化が起こります。
エストロゲンの減少
更年期は卵巣機能が衰え、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少する時期です。
エストロゲンが減少すると、骨量が減少したり、コレステロール値を正常に保ちづらくなったりします。
性腺刺激ホルモンの分泌量の増加
エストロゲンの減少とともに、衰えた卵巣(性腺)を刺激してエストロゲンの分泌を増やそうとする働きも活発になります。
具体的には、脳の視床下部が下垂体に指令を出して、そこから大量の性腺刺激ホルモンが分泌されます。
下垂体は脳の下部にぶら下がるように存在して、ホルモンの働きをコントロールする内分泌器官です。
性腺刺激ホルモンが分泌されても、衰えた卵巣からはエストロゲンの分泌量が増えません。そのため、視床下部はさらに性腺刺激ホルモンを分泌させようと、下垂体に指令を送ります。
それでも、エストロゲンは増えないため、脳は次第に興奮状態になります。
自律神経の乱れ
視床下部は下垂体だけではなく、自律神経を制御する役割があります。
そのため、視床下部の影響で自律神経が乱れると、それが原因で心身の不調に悩まされることもあります。
自律神経は、血圧や体温、発汗、感情、内臓の働きなど、人間のあらゆる機能をコントロールする働きがあるため、あらわれる不調もさまざまです。
■閉経前後の不調やリスク
閉経前後は自律神経が乱れて、さまざまな不調や疾患のリスクを抱える可能性があります。
からだの不調
閉経前後にあらわれるからだの不調として、たとえば以下の症状が挙げられます。
・ほてり
・のぼせ
・発汗
・動悸
・息切れ
・頭痛
・めまい など
自律神経はからだの多様な機能をコントロールするため、乱れるとさまざまな不調が起こります。
精神の不調
閉経前後は、次に示す精神の不調に悩まされる点も特徴です。
・不安
・抑うつ
・情緒不安定
・イライラ感 など
また、閉経前後の40・50代がうつになった場合は「更年期うつ」と呼ばれることもあります。
骨粗しょう症
閉経前後はエストロゲンが減少するため、骨量を維持できずに骨粗しょう症に見舞われる人が多くなります。
骨粗しょう症になると転倒による骨折のリスクが高くなるので、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。
循環器系の疾患
エストロゲンをつくる過程では、コレステロールが取り込まれます。そのため、更年期になってエストロゲンがつくられなくなると、コレステロールが増えやすくなります。
なかでもLDLコレステロールが血管に沈着すると、動脈硬化をはじめとした循環器系の疾患にかかるリスクが高くなるのです。
■閉経前後の不調への対策
食事のバランスや生活習慣を整えて、閉経前後の不調の対策をしましょう。
栄養バランスのいい食事を心がける
閉経前後は栄養が過剰になったり、欠乏したりしやすい時期です。
そのため、主食と副菜、主菜のバランスを3:2:1に保ち、栄養バランスのいい食事を心がけましょう。
骨粗しょう症を予防するために、カルシウムやビタミンDを積極的に摂取するのもおすすめです。
有酸素運動を習慣にする
有酸素運動は、十分な酸素をからだに取り入れつつ全身の筋肉を動かすような運動方法です。
ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳、ダンスなど、楽しみながら無理なく継続できる運動に取り組むとよいでしょう。
生活習慣を整える
生活習慣が乱れると、閉経後の不調があらわれやすくなります。
バランスのいい食事や適度な運動、十分な睡眠などの健康的な生活習慣を心がけましょう。
自分にあったリラクゼーション法やストレス解消法を見つけて、心のケアを行うのもおすすめです。
医師に相談する
閉経前後に重い症状を抱えた場合は、かかりつけの医師や専門家に相談することも大切です。
病院で治療を受ける場合、不足したエストロゲンを補充するHRT(ホルモン補充療法)を受けることもできます。
減少したエストロゲンを補充すると、閉経前後のつらい症状を軽減できる可能性があります。
■閉経前後の不調には漢方薬の利用もおすすめ
閉経前後の不調には、漢方薬を活用するという選択肢もあります。
漢方薬は閉経前後のホルモンバランスや自律神経の乱れを整え、加齢による心身の機能を回復させる効果が期待できるのです。
更年期障害の治療では、HRT以外に漢方薬の使用も標準治療のひとつとして利用されています。
また、漢方薬は自然由来の成分でできているため、一般的に副作用が少ないと言われています。さらに、西洋薬とは異なり、体質を根本的に改善する役割を担うのも漢方薬の特徴です。
閉経前後の不調におすすめの漢方薬
加味帰脾湯(かみきひとう)
自律神経のバランスを整え、栄養や潤いを補うことで、イライラなどの精神症状や不眠、貧血に用いられます。血色が悪く、虚弱体質の人に向いています。
七物降下湯(しちもつこうかとう)
血圧を降下させることで、のぼせや肩こりなどの高血圧に伴う随伴症状を和らげます。顔色が悪くて疲れやすい人に向いています。
慢性的なのぼせやイライラ感、高血圧が気になる場合には、中長期的な服用で体質からの改善を目指しましょう。
また、漢方薬を選ぶ際には自分の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合わない場合、十分な効果を得られないだけでなく、副作用が生じることもあります。購入時にはできる限り漢方に精通した医師、薬剤師などにご相談ください。
最近はオンラインで漢方薬の専門家に、自分に合った漢方薬を気軽に無料相談できるサービスもありますので、試してみるのもいいでしょう。
■閉経前後に起こる不調への対策をしよう
閉経前後はホルモンバランスや自律神経が乱れるため、さまざまな不調を抱えやすい時期です。骨粗しょう症や循環器系の疾患につながるリスクもあるため、いつもと違った症状があるときは、婦人科でからだの状態を検査してもらうことも大切です。
運動を習慣化したり、食事内容を改善したりすると不調が和らぐ場合もあるため、健康に気をつけて日常生活を送りましょう!
【監修医:横倉恒雄(よこくらつねお)先生 プロフィール】
医学博士/医師(婦人科、心療内科、内科など)。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。新刊本『今朝の院長の独り言』(青春出版社)は10万人の患者が癒されたポジティブなメッセージに溢れていると話題に。
【漢方部分監修者:木村英子(きむらえいこ)さん プロフィール】
薬剤師/臨床検査技師/Vedic Healers Ayurveda basic course 修了。検疫所、病院にて公衆衛生・感染症現場を経験した後、インドでアーユルヴェーダに出会う。現在はAIを活用し、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれるあんしん漢方にて活躍中。
【前回の記事】
・更年期の「いびき」に要注意!放置してはいけない理由
・更年期は肌質が急変する!?40・50代がすべき肌ケア
・更年期はおならが多くなる!?意外な原因&対処法
・更年期の不調を手軽に改善!医者がすすめる飲み物5つ
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