村上春樹はノーベル文学賞にふさわしいのか? 地域差別問題も論議に

リテラ / 2014年10月9日 18時30分

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 今年もこの季節がやってきた。ノーベル文学賞がいよいよ今晩発表される。ノーベル文学賞をめぐっては、村上春樹が受賞なるか、というのが風物詩となっている。ブックメーカーの倍率などをもとに、有力候補のひとりと毎年のように報道される。しかし、本当に村上春樹はノーベル文学賞にふさわしい作家なのだろうか。そんな疑問を抱かずにはいられない事件があった。

 今年4月に出版された春樹の短編集『女のいない男たち』に収録された「ドライブ・マイ・カー」。この短編小説は『文藝春秋』2013年12月号が初出だったのだが、ある騒動が起きたのをご記憶だろうか。

〈(みさきは)小さく短く息をつき、火のついた煙草をそのまま窓の外に弾いて捨てた。たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう〉

 という小説内の記述について中頓別町の町議が疑問を呈し、それを受け春樹側は単行本収録時に別の名前に変更することを表明。実際、単行本で問題の町名は「中頓別町」から架空の「十二滝町」に変更された。

 北海道中頓別町ではたばこのポイ捨てが「普通のこと」と表現したのは事実に反するとして、中頓別町議らが文芸春秋に質問状を送付。町議は「町にとって屈辱的な内容。見過ごせない」と話していた。

 この騒動にフィクションのなかの話なのに過剰反応では?という感想を抱いた読者も少なくなかったのではないだろうか。実際、この騒動が報道された後、中頓別町には抗議が殺到、町議のブログは炎上した。

 たとえば、夏目漱石は『坊ちゃん』で松山をぼろくそにけなしているし、志賀直哉の『城崎にて』は城崎で動物虐待が日常的に行われているように描かれているではないか、というような論もあった。

 しかし、文芸評論家の斎藤美奈子は、こうした作品と今回の中頓別町問題とは根本的にちがうと指摘。この騒動と村上春樹という作家の特質について興味深い論考を「早稲田文学」2014年秋号に寄せている。

 まず斎藤は、町が圧力をかけたわけでもなく、中頓別町の人口はわずか1900人で、春樹には町民の何百倍もの読者がいるという力関係を考えれば、「町名を出されたくらいでつべこべ言うな」などと抗議の声を封じ込めるべきではないとする一方、春樹氏側も地名を変更せず別の対応でもよかったのではないか、とも主張している。

 しかし、春樹氏側は「『しまった』『痛いところをつかれた』と感じたからこそ、彼は町名の変更を選んだのではないか。」と推察する。

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