業務上の付き合いで「死亡」今こそ知りたい労災知識

シェアしたくなる法律相談所 / 2014年3月24日 19時15分

写真

先日、NHKの中国ロケで泥酔し死亡した男性スタッフの両親が労災認定を求めた裁判で、東京地方裁判所は、中国人参加者の気分を害さないようにするために大量の飲酒を断れなかったとして労災にあたると判断しました。

裁判所は、労災に当たらないとした労働基準監督署の処分を取り消したわけです。

今回は、この「労災」について解説してみたいと思います。

■「労災」とはどういう制度か?

「労災」とは、「労」働者「災」害補償保険の略ですが、「業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由または通勤により負傷し、または疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者およびその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の増進に寄与することを目的とする」制度です(労働者災害補償保険法1条)。

要するに、国が雇い主から保険料という形でお金を集めて運用し、労働者が仕事や通勤で負傷等した場合に必要なお金を出してあげる制度です。

労働者は、雇い主やその他の者の「故意(=わざと)または過失(=うっかり)」によって負傷した場合、雇い主やその他の者に対し損害賠償を請求することができます(民法709条)。

しかし、労働者が裁判所にこの損害賠償請求を認めてもらうためには、雇い主やその他の者の「故意または過失によって」負傷したことを証明しなくてはならず、この証明は簡単ではありません。

また、雇い主やその他の者の資力が十分でない場合、労働者は泣き寝入りせざるをえません。

他方で、雇い主は、危険が潜んでいる仕事に労働者を従事させることによって利益を上げているわけですから、労働者が仕事や通勤の上で被った損害について保険料程度は負担させてもいいと考えられます。

そこで、労働者災害保険補償法は、雇い主から強制的に保険料を回収し、労働者が仕事や通勤の上で被った損害について、雇い主やその他の者に「故意または過失」があろうとなかろうと、保険給付を出し労働者を保護しているわけです。

■「労災」を認めてもらうためには?

「労災」を認めてもらうためには、雇い主やその他の者の故意・過失を立証する必要はありません。

しかし、「業務上」の災害であることは立証しなければなりません。

「業務上」というのは、難しい言葉で「業務起因性」とか言われますが、危険な仕事が原因で災害が発生したことをいいます。

今回 NHKの男性スタッフは、中国ロケで泥酔し死亡したわけですが、労働基準監督署は、業務上の災害と認めませんでした。NHKの仕事をするのに飲酒をする必要はなくNHKの男性の仕事自体に危険はないという判断でしょう。

しかし、東京地方裁判所は、中国ロケを円滑に進めるために断り切れなかったということで、「業務上」の災害に当たると判断しています。ある意味、飲酒も場合によっては仕事の一環という判断です。

上司から飲みに誘われて、断り切れず泥酔し急性アルコール中毒といったケースも考えられますが、状況によっては労災と認められない場合もあります。

飲み過ぎないように注意しないといけません。

*参考:中国ロケで泥酔し死亡、労災認定 元NHKスタッフ:朝日新聞デジタル

シェアしたくなる法律相談所

トピックスRSS

ランキング