【W杯】頭突きはなぜ傷害罪にならないのか

シェアしたくなる法律相談所 / 2014年6月19日 21時2分

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ポルトガル対ドイツ戦でポルトガルのペペ選手がドイツのミュラー選手に頭突きをして退場処分となりました。かつてはフランスのジダン選手も頭突きで退場となったことがありました。

レッドカードだけではなく、法律上も傷害罪や暴行罪が成立するのでしょうか。

■スポーツにおける正当行為

頭突きだけでなく、サッカーでは激しい競り合いの中で選手同士が体ごとぶつかり合い、ときには猛烈なタックルやスライディングを敵に浴びせることもあります。

これを刑法的に見れば、形式的には、有形力(物理力)の行使として、暴行罪の構成要件に該当し、相手が負傷すれば傷害罪の構成要件に該当します。

しかしながら、サッカー選手が試合中にスライディングやタックルをして相手に大けがを負わせたからといって有罪となることはありませんし、逮捕できてしまうとするのは社会常識に反しますよね。

なぜ、タックルやスライディングという「暴行」を相手に与えても逮捕されて有罪にならないかというと、スポーツの試合中におけるルール上認められた行為や競技の性格上当然起こりうる行為については、刑法35条で正当行為として違法とならないと規定されているためです。

■正当行為って?

そのため、サッカーの試合中にスライディングやタックルをしてたとえ相手が負傷しても、刑法35条の正当行為として基本的には違法性がなく、形式的に暴行罪や傷害罪の構成要件を満たしていても、犯罪とならないのです。

ボクシングで相手を殴っても暴行罪にならないのもそういう理由です。

(正当行為ではなく、選手同士の事前同意があるので、形式的にも暴行罪や傷害罪の構成要件に該当しないという説明もあります。)

しかし、ここで正当行為として適法化されるのは、あくまで、競技のルール上認められているとか、競技の性格上当然に起こりうる行為に限られます。

そうすると、ヘディングで競り合ったときに頭突きしたならともかく、プレーと無関係に相手選手に頭突きすれば、レッドカードだけでなく、暴行罪や傷害罪が適用されると考えられます。

■刑法の国外適用

日本の刑法は、「属地主義」という建前を採用しており、日本国内の行為に対して適用されます。例外的に、殺人、放火、強姦、傷害などの重大犯罪については、海外で日本人が被害者となる場合や、日本人が海外で犯罪を犯した場合にも適用されます。

したがって、ブラジルであっても、日本人だった場合は、傷害罪の適用対象となります。

一方、傷害結果が生じておらず、暴行罪にとどまる場合は、国外犯として処罰できません。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

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