上司に対して指導料を払う会社が話題に…違法性はないのか?

シェアしたくなる法律相談所 / 2014年11月8日 21時37分

写真

先日、ネット上で「上司からの指導料2万円を給料日に振り込むのがツライ」題された記事が話題になり、記事には以下のように書かれていました。

給料日に上司からの指導料などを指定された口座に振り込むことになっています。明文化されてはいないのですが、入社の時のガイダンスで指示されました。建前上は社員が自主的にやっているということで、給料が振り込まれる日、会社が終わってから、自宅のパソコンでネットバンキングを利用して、上司の口座に1ヶ月の指導料2万円を振り込みます。

この内容に対してSNSなどでは嘘とする声が多く挙っていますが、実際にないとは言い切れません。最近、とある製造メーカーのサイトに「入社後は勉強料を払ってもらいます」と書かれておりこちらも話題になっていました。

もし実際に上司からの指導に対して指導料を払うシステムがあった場合、法律上問題はないのでしょうか?検証してみましょう。

■賃金全額払原則違反

結論からいうと、賃金全額払の原則を定めた労働基準法24条に違反するおそれがあります。

賃金全額払の原則とは、賃金は所定支払日に支払うことが確定している全額を支払わなければならないとする原則のことをいいます。

労働者は、賃金全額が支払われることを想定して生活設計をしており、賃金が全額支払われなければ、労働者の生活に不意打ち的な不利益が生じ、生存にもかかわります。

そこで、労働者の生活の安定と予測可能性を確保するため、賃金は、約束された金額の全額払いが原則とされているのです。

上司への指導料は、形式的に給料支払日にいったん労働者へ全額が支払われるものの、ただちに上司へ送金させるわけですから、実質的には、不当な天引きをしているものと評価できます。

■同意があればいいのか

例えば、労働者が社外で非労働時間を利用して自ら研修すること(英会話学校等)は自由であり、上司の指導を任意の研修を受けた対価(英会話学校の授業料に相当)とみれば、賃金全額払原則とは関係ないように思えなくもありません。

しかし、社内の上司に個人的に自らの自由意思で研修を依頼することは通常考えられず、上司への指導料上納は、本人の意思に反して強制されているとの推定が働くでしょう。

そもそも、上司による指導は、業務命令そのものであり、業務命令に服して労務を提供することが、まさに賃金の対価なのですから、指導という名の業務命令に服して労務を提供しているのに、さらに指導料を払う法的根拠は見出せないでしょう。

したがって、名目的に労働者の同意があっても、実質的にみれば、労働者の意思に反する給料の一部天引きによる不支給に他ならず、違法となる可能性があります。

■罰則

賃金全額払原則に違反した場合、使用者は、刑事罰として、30万円以下の刑罰を科されることがあります(労働基準法120条1号)。

■自分の会社がこうだったら

疑問を感じたら迷わず最寄りの労基署や弁護士会に相談するか、知り合いに紹介してもらうなどして弁護士に早めに相談して下さい。

会社の同僚に相談しても、同じ環境にいる者同士それが当たり前と思い込んでいることもありえますので、早めに外部の人に相談しましょう。

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

シェアしたくなる法律相談所

トピックスRSS

ランキング