「犯罪に遭いました」と、嘘をつくのは犯罪か

シェアしたくなる法律相談所 / 2014年11月10日 12時6分

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数日前にアイドルグループのメンバーがライブに出たくなかったため、ニュースである性犯罪に遭ったと嘘をつき、その旨の被害届を警察に提出したという記事を見かけました。

また、遅刻の言い訳などとして犯罪に遭ったなどと言う人もいるかもしれません。とんでもない迷惑行為であると思いますが、この例のように、実際には被害に遭っていないのにあったと嘘をつく行為は犯罪にはならないのでしょうか。

■嘘つきは罪になる

実は、虚偽の犯罪を申告するという行為はそれ自体で犯罪です。軽犯罪法という法律で、虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者は拘留または科料に処せられるという規定があります。拘留というのは1か月未満の懲役、科料は1万円未満の罰金とお考えください。

ですので、冒頭のアイドルグループのメンバーはこの犯罪に該当することは明らかです。とはいうものの、軽犯罪法で定める刑罰は比較的軽微であり、法律違反があったとしてもよほど悪質な場合を除いて逮捕、起訴というところまでにはなりません。ですので、冒頭のメンバーの行為はおそらく厳重注意程度で済んだものと思われます。

■懲役10年の刑が課せられることも

このように、虚偽の犯罪事実の申告はそれほど罪が重くない犯罪なのですが、これが特定の人間に刑事処分を受けさせる目的で虚偽の申告をするとなると、別の犯罪となり、刑罰がグーンと重くなります。

刑法第172条に虚偽告訴罪が定められており、これは、人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処するとなっています。軽犯罪法の身柄拘束期間が最長で1か月だったのに対し、こちらは最長で懲役10年ですから大きな違いです。

虚偽告訴罪の刑が重いのは、やはり特定の人を陥れようとする目的があるからです。

虚偽の申告によって無実の人間が逮捕、起訴されてしまう危険性があるわけですから、軽犯罪法の虚偽申告より悪質性が強いことは明らかです。そのため、刑が重くなっているのです。以前、痴漢ビジネスについて解説したことがありますが、この痴漢ビジネスなどは虚偽告訴罪の代表例です。

このように、刑法の虚偽告訴罪の方が軽犯罪法違反より刑が重いのですが、両方の罪とも捜査機関を大いに混乱させ、本来の犯罪捜査に支障を与え、結果、国民全体の不利益になるという意味ではいずれも同罪です。絶対に犯罪の虚偽申告はしないようにしましょう。

■学校や会社に嘘をついたらどうなる?

なお、例えば学校や会社に遅刻した時に「通学途中で痴漢に遭った」「通勤途中で窃盗に遭った」などとうその言い訳をするだけでは、道義的な問題は別として、犯罪とはなりません。犯罪となるのはあくまでも警察などの捜査機関に対する申告に限られます。とはいうものの、犯罪に遭ったなどという嘘をつけば当然いつかはばれてしまいますから、結局はかえって傷口が広がってしまいます。人間、正直が一番ですね。

*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)

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