アメリカこそシリア混迷の元凶だ。偏向報道を続ける日米マスコミの愚

まぐまぐニュース! / 2015年10月26日 18時50分

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シリア情勢に関してロシアやアサド政権を批判する報道が目立ちます。しかしジャーナリストの高野孟さんは『高野孟のTHE JOURNAL』で、シリア混迷の原因は「米国の一部過激勢力が煽り立てた反アサドの内乱」とし、マスコミをばっさり斬っています。

オバマはシリア戦略の誤りを認めてプーチンと手を組め!

米国や日本のシリア情勢についての報道や分析は、「アサド憎しロシア憎し」の感情論を出発点にしているために、プーチン大統領の対IS国際共同戦線結成の呼びかけとそれに先行したロシア軍による軍事介入の意味を著しく曲解し、誹謗中傷さえ加えている。最近では、ニューズウィークNW)10月20日号の特集「世界最悪の危機、絶望のシリア」が酷かったし、そこで言われているのと同工異曲のことを、比較的世の中のことがよく見えている人であるはずの藤原帰一までが朝日新聞のコラム「時事小言」で書いているので、正直、かなり驚いた。

アサド政権の暴力が難民を生んだ?

「アラブの春」に触発されて、シリア人もアサド政権の圧政に抗議する静かなデモに立ち上がった。しかしアサド政権は彼らを容赦なく押さえ込み、拷問や殺戮を行った。……アサドは、国を崩壊させても権力の座を守り抜こうと決意した。(NW)

難民の多くがアサド政権の暴力を恐れて国外に逃れた。(藤原)

アサド政権が「シリアの春」に対して強圧的な対処をしたのは事実である。しかし、少なくとも当初の段階では、アサドは同時に、民主派の要求にもそれなりに耳を傾け、いくつかの改革案を示して政治的に収拾しようとする姿勢も示していた。しかし、これは鶏と卵で、どちらが先か後かは不明だが、アサドの弾圧が苛烈さを増す中で反体制派の武装化が始まり、そこにすぐにアル・カイーダ系や後のISに繋がる外国人武装勢力が絡み込んで、しかも「民主化支援」の名の下に米国のネオコン派やジョン・マケイン上院議員らが手を突っ込んで、それらに武器や資金供給し始めたことによって、1年後には「静かなデモ」だったはずのものは血みどろの内戦に転化した。

5年近くにわたる内戦で命を落としたシリア人は約25万人。国内避難民は800万人近く。国外に逃れた400万人超の難民は増え続けるばかり。今なお何十万人もが絶望の淵からヨーロッパを目指している。(NW)

それはその通り。しかしその難民は、米国の一部過激勢力が煽り立てた反アサドの内乱の悲惨が生み出したものであって、「アサド政権の暴力」だけがその原因であるかに言うのは狂っている。

米国は早期に軍事介入すべきだった?

オバマ大統領は、アサド追放を口では求めつつ、アメリカの実質的な介入を慎重に避けてきた。シリアの反体制派から武器供与の要請があった際も、オバマは躊躇した。その後、アサドは自国民に化学兵器を使用して、オバマが越えてはならないとした「レッドライン」を平然と無視したが、何も行動を起こさず、同盟国を驚かせた。……オバマは「何がなんでも何もしない」というただ1つの基本原理に導かれているようだ。(NW)

オバマ=弱腰論典型で、これはマケインら過激派の軍事介入を求める主張に寄り添った米国内論調主流である。しかし考えてもみよう、オバマ政権はブッシュ前政権がネオコン派にコロリ欺されて転がり込んだアフガンとイラクの間違った戦争の傷跡を癒すために、ほぼ全精力を費やしてきた。両戦争の最大の教訓は、世界史上最強と言われる米国の軍事力を以てしても現代世界が抱える問題は何一つ解決できないどころか、ますます事態を悪化させるだけだという明白な事実である。実際、シリア問題の本質である、ISという今や国際社会にとって最大の脅威である悪質癌細胞は、まさにブッシュ政権の迷妄が作りだした化け物にほかならない。

アサドが自国民に化学兵器を使ったという話も、反体制派が流した噂話の類で、イラク戦争で亡命イラク人の与太者が持ち込んだ架空話を米CIAが信じ込んでブッシュが開戦の理由にしてしまったのと同パターンの謀略であった可能性が濃い。だから、オバマがそれを理由にしてダマスカス空爆に踏み切らなかったことは、「同盟国を驚かせ」てなどいない。どの国が驚いたのか明示することなしに、NWはこのようなデマを飛ばすべきではない。ただし、NWは、

もっとも、オバマが軍事介入に踏み切っていれば現在のような悲惨な状況は避けられた、とは誰も明言できない。(NW)

と逃げは打ってはいる。しかしこういう言い方は無責任で、じゃあどうすればよかったのか明言すべきだろう。

image by: ChameleonsEye / Shutterstock.com

 

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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