最大42%も年金受給額がUPする「繰り下げ受給」の落とし穴

まぐまぐニュース! / 2017年7月18日 4時45分

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先日掲載の記事「年金の受け取りを5年遅らせるだけで、42%も受給額を上げる裏ワザ」でも詳しくお伝えした年金の「繰り下げ受給」。最大42%も受給額が上がるというのは驚きですが、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんによると、期待通りに増えないケースがあるとのこと。今回もわかりやすい事例を挙げながら説明しています。

年金を貰うのを65歳以降に遅らせると最大42%増えるが、思ったより増えない場合がある

65歳以降年金の受給を遅らせると最大5年間で42%の増額になります(1ヶ月ごとに0.7%増)。3年お預けにしたら25.2%増額。これを年金の繰り下げといいます。1ヶ月ごとに0.7%増えますが、繰下げをやる場合は最低でも66歳にならなければならない(つまり65歳到達日から66歳到達日まで1年は経過する必要がある)。例えば65歳8ヶ月とかで繰下げを申し出る事は不可。

なかなか今後は年金が上がりにくいので、もし貯蓄なり労働が可能であれば70歳まで目一杯年金を増やすのも手かもしれません。

※参考

65歳過ぎた後に初めて老齢の年金の受給権を獲得した場合は、そこから5年間繰下げ可能。例えば68歳で初めて受給権を獲得したら73歳まで繰下げとか。

ところで、65歳以降も厚生年金に加入して働く場合は、月給(標準報酬月額)と直近1年に貰った賞与(標準賞与額)を12で割った額の総額(総報酬月額相当額という)と、月年金額の合計が46万円(平成29年度額)を超えてくると、超えた分の2分の1が停止になります。この46万円という数字は支給停止調整額と言って毎年度変わる場合がある。今年度は物価や賃金が下がって47万円から46万円に下がった。ちょっと停止基準が厳しくなったということ。

● 年金で超重要な標準報酬月額とか標準賞与額って何?

この、厚生年金に加入しながら貰う年金を在職老齢年金といいますが、この在職老齢年金により老齢厚生年金が停止になるため老齢厚生年金の繰り下げ増額についてはあまり機能しない事があります。そんな例を見ていきましょう。

1.昭和27年7月12日生まれの男性(今65歳)

  • 老齢厚生年金120万円
  • 老齢基礎年金70万円
  • 年金総額は190万円

とします。ちなみに60歳以降も働くと経過的加算(老齢厚生年金の部類)という年金が増える場合がありますが、この記事では省いて話を進めます。

普通に70歳まで5年間繰り下げをやれば老齢厚生年金なら、42%増額の170万4,000円で、老齢基礎年金は99万4,000円となり、年金総額は269万8,000円となります。繰り下げない場合より79万8,000円増加しました。たった5年間年金を貰わないだけで…。

しかし、この男性は65歳以降も厚生年金に加入して、月給与40万円で直近1年の賞与は7月に80万円、12月に80万円貰いながら働く事になりました。繰り下げは70歳までの5年間やるつもり。直近1年に貰った賞与の総額160万円を12ヶ月で割って換算すると13万3,333円。となると、総報酬月額相当額は40万円+13万3,333円=53万3,333円となります。

という事は、65歳以降の在職老齢年金による停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額53万3,333円)-460,000円}÷2=8万6,667円が停止になります。

※注意

老齢基礎年金は年金停止額を算出する場合には含めない。老齢基礎年金は厚生年金に加入して働いても本来は全額支給される。

ア.65歳から66歳までの12ヶ月間の総報酬月額相当額が53万3,333円の場合は、年金の支給月額は老齢厚生年金月額10万円-月停止額8万6,667円=1万3,333円。

イ.66歳から67歳の12ヶ月間も総報酬月額相当額は53万3,333円なら、同じく停止額は8万6,667円で月年金支給額は1万3,333円。

ウ.67歳から68歳までの12ヶ月間の総報酬月額相当額は40万円に下がった。となると、停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額40万円)-46万円)÷2=2万円。年金支給月額は10万円-2万円=8万円。

エ.68歳から69歳までの12ヶ月間は総報酬月額相当額は45万円に上がって、年金停止額は{(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額45万円)-46万円)}÷2=4万5,000円。年金支給月額は10万円-4万5,000円=5万5,000円。

オ.69歳から70歳までの12ヶ月間は総報酬月額相当額は35万円に下がった。となると、(老齢厚生年金月額10万円+総報酬月額相当額35万円)-46万円)だから年金停止は無し。老齢厚生年金支給月額は10万円。

さて、65歳から70歳まで目一杯年金の繰り下げをやると、0.7%×60ヶ月=42%の年金増額になりますが、この男性は上記の通り老齢厚生年金に在職老齢年金による老齢厚生年金の停止が適用されてるため金額が期待通りに増えない。

この場合一体どの程度、老齢厚生年金は繰下げによって増えるのか。まず、65歳から70歳まで支給された老齢厚生年金の平均の支給率というのを出します。

65歳から66歳までの12ヶ月間は8万6,667円が支給停止されてる。

年金支給率は1-(8万6,667円÷10万円)=1-0.87=0.13。

(8万6,667円÷10万円)というのは本来の老齢厚生年金額に対して停止額がどのくらいの割合になるかを表す。これを1から引くと支給される割合が示されるって事。66歳から67歳の12ヶ月間も同じく支給率は0.13。

67歳から68歳までの12ヶ月間は年金支給率は1-(2万円÷10万円)=1-0.2=0.8。68歳から69歳までの12ヶ月間は年金支給率は1-(4万5,000円÷10万円)=1-0.45=0.55。69歳から70歳までの12ヶ月間は年金停止が無いから、年金支給率は1。

よって、すべての年金支給率を合計して平均すると、(0.13×12ヶ月+0.13×12ヶ月+0.8×12ヶ月+0.55×12ヶ月+1×12ヶ月)÷全体の繰り下げ期間60ヶ月=(1.56+1.56+9.6+6.6+12)÷60ヶ月=31.32÷60ヶ月=0.522(平均支給率)。

65歳時点の老齢厚生年金120万円×老齢厚生年金の平均支給率0.522=62万6,400円。62万6,400円×42%=26万3,088円の増額となる。だから単純に120万円×42%=50万4,000円増額になるわけじゃないので注意!

また、65歳から70歳まで厚生年金に加入したので、70歳時改定を行う。70歳以降は完全に引退するとします。ちなみに70歳以降は厚生年金には加入できない。ザックリ70歳時改定をすると、まあ65歳から70歳の間の給与と賞与の60ヶ月平均が45万円だったとしたら、45万円÷1,000×5.481×60ヶ月=14万7,987円増額。

よって、70歳以降の年金総額は(老齢厚生年金120万円+繰下げによる増額分26万3,088円+70歳時改定による増額14万7,987円)+(老齢基礎年金70万円+繰下げによる老齢基礎年金増額分29万4,000円)=260万5,075円月額21万7,089円)。

にしても、65歳以降に老齢厚生年金が在職で停止される人はかなり少数派なんですけどね…(^^;;

※追記

繰下げ途中で遺族年金や障害年金の受給権を得た場合はそれ以後、老齢厚生年金や老齢基礎年金を貰うのを遅らせても増額はしません。ただし、障害基礎年金のみの受給権を持ってる人なら老齢厚生年金の繰下げのみであれば可能

例えば、67歳で遺族厚生年金の受給権を得たら、繰下げ増額は2年分つまり24ヶ月×0.7=16.8%増額までです。だから、それ以後年金を貰うのを遅らせるだけ無駄なので速やかに年金事務所に繰下げの申し出をします。

なお、年金を繰下げてる途中であってもやっぱり繰下げは諦めて、65歳から遡って年金を貰いたい場合はその旨を申し出れば65歳に遡って今まで貰わなかった年金を一時金で支払います。

一時金で支払いますが、税金の面では一時所得にはならず、それぞれの年ごとの公的年金に係る雑所得として年ごとの源泉徴収票が送付されます。よって、場合によっては税金の申告をし直さなければならなくなる場合があるので税務署に確認ください。

また、65歳未満の配偶者がいる場合は配偶者加給年金(年額38万9,800円)が付く場合がありますが、老齢厚生年金を繰下げしてる最中はもちろん全額停止になります。ちなみに配偶者加給年金は増額はしない。通常の翌年1月末に送られてくる通常の源泉徴収票を用います。

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『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』

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出典元:まぐまぐニュース!

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