先手を打った米国。「ソウルを火の海にしない」北朝鮮打撃法とは

まぐまぐニュース! / 2017年9月25日 4時30分

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国連総会でのトランプ大統領の演説を「宣戦布告」とし、太平洋上での水爆実験を仄めかす北朝鮮。ますます緊張感が高まる朝鮮半島情勢ですが、軍事衝突となってしまった場合、かつて北が「ソウルを火の海にする」と言い放った通り、韓国が甚大な被害を受けることは不可避と目されています。ところが先日、米マティス長官は、ソウルが危険にさらされない軍事的選択肢の存在を示唆。軍事アナリストの小川和久さんは自身が主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、既に進行中であるというその軍事的手段について詳述しています。

「ソウルは火の海」にならない?

マティス国防長官の発言(18日)が憶測を呼んでいます。

米国防長官「ソウル危険ない」軍事的手段検討 対北朝鮮

 

マティス米国防長官は18日、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮への対応について、「多くの軍事的選択肢がある」と語った。「選択肢」には、北朝鮮による報復攻撃で韓国の首都ソウルが危険にさらされない方法も含まれていることを強調した。

 

国防総省内で記者団に語った。米軍が武力行使に踏み切れば、ソウルは約50キロ離れた南北軍事境界線沿いに配備された北朝鮮の長距離砲による攻撃で深刻な被害が出ると想定されている。このため実際に北朝鮮への先制攻撃を行うのは難しいとされてきた。マティス氏の発言は、そうした制約を減らすため、ソウルの被害を最小限に抑える軍事的手段を検討していることを示唆した形だ。(後略)

(9月19日付朝日新聞)

ソウルに危険が及ぶことが少ない軍事的手段とは、一体どんなものがあるのでしょうか。

韓国の新聞『中央日報』(9月19日)は次のように伝えています。

海外メディアはこの日、マティス長官の「ソウルに重大危険をもたらさない対北朝鮮軍事オプション」について、北朝鮮の核・ミサイル施設などに対する先制・予防精密打撃、ソウルを狙った休戦ライン北側の北朝鮮長射程砲や放射砲(ロケット砲)砲台無力化、北朝鮮指導部の除去のうちの一つかもしれないと分析した。

これ以外の報道にも共通しているのは、非武装地帯(休戦ライン)北側に展開する北朝鮮の多連装ロケットと野戦砲の大群を沈黙させることがカギ、という点です。1994年3月、特使交換をめぐる南北交渉の場で北朝鮮側が「ソウルを火の海にしてやる」と叫んだ光景は、いまなお韓国の人々の脳裏に刻み込まれているからです。

また、米国による先制攻撃が行われたとみるや、北朝鮮は少なくとも短距離弾道ミサイル・スカッド、準中距離弾道ミサイル・ノドン、中距離弾道ミサイル・ムスダンなどを韓国と日本の目標に向けて発射するでしょう。これを封じ込めることも重要なテーマとなります。

そのように考えると、韓国の『中央日報』が伝えた「核・ミサイル施設などに対する先制・予防精密打撃」「北朝鮮指導部の除去」では、反撃されるリスクを避けることはできないので消去されることになります。

残る手段として考えられるもののひとつは、非武装地帯(休戦ライン)北側の砲兵部隊だけでなく、弾道ミサイルの部隊も使っている指揮通信系統を機能麻痺に陥らせるために行われるサイバー攻撃でしょう。

それも、2010年ごろにイランの核開発施設を数年にわたって稼働できない状態にしたスタックスネットのようなマルウェア(ウイルスとならぶ悪意のあるソフト)が、既に北朝鮮の指揮通信を司る回線に仕掛けられており、それが起動するという形です。スタックスネットは米国とイスラエルが共同開発したとされ、ロシア国内に亡命状態でいる元NSA(国家安全保障局)職員のスノーデンは、日本の重要インフラにも仕込まれているとオリバー・ストーン監督に証言しているそうです。

当然ながら、そうした形のサイバー攻撃だけでは万全ではないでしょう。

そこで浮上してくるのがEMP電磁パルス攻撃です。9月14日号のセキュリティ・アイで西恭之さん(静岡県立大学特任助教)が詳述したように、北朝鮮には米国に対して有効なEMP攻撃をしたり、EMP攻撃に対して行われる核兵器を使った米国の報復攻撃を無力化したりする能力は備わっていません。その意味で、北朝鮮がEMPを口にしたのは単なる威嚇とみなさざるを得ないのです。

しかし、そのEMP攻撃の能力を米国は十二分に備えています。サイバー攻撃と合わせて韓国のインフラなどに影響の少ない形でEMP攻撃が行われた場合、北朝鮮の弾道ミサイルによる反撃と非武装地帯(休戦ライン)北側の砲兵部隊の多くが沈黙させられることは明らかです。

私は、米国が北朝鮮のEMP攻撃という威嚇を逆手にとって牙をむいて見せたと受け止めています。その米国のメッセージが北朝鮮に正確に伝わり、核と弾道ミサイルの開発を中断・放棄させることにつながるかどうか、11月のトランプ大統領のアジア歴訪に向けて目を離せない状態が続きそうです。(小川和久)

image by: Flickr

出典元:まぐまぐニュース!

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