夜逃げした着付け業者「はれのひ」事件を、探偵が調査した結果

まぐまぐニュース! / 2018年1月11日 5時0分

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振袖の販売・着付け・レンタルなどを手がけていた「はれのひ株式会社」が成人式当日に店舗を突如閉鎖し、晴れ着が着られなくなった新成人が相次いだ前代未聞の事件。一部では「計画倒産」との声もささやかれています。人気メルマガ『伝説の探偵』の著者で現役の探偵である阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、この事件を探偵としての経験から分析し行った「初動調査」の結果について報告しています。

はれのひ事件のあらまし

振袖の販売や貸し出しをしていた「はれのひ株式会社が成人の日に店舗を閉鎖し、この日予約などをしていた新成人に晴れ着などが届かず大混乱となっているという事件。事件当日に、警察に被害届を出すなど、被害相談が殺到し、警察も重大な事件だと動き出すというニュースであった。

各社報道も乱れており、店舗数が各局によって異なったり、本社所在地を横浜だと報道しているものもあった。成人の日は、祝日ということもあり、法務局は閉まっているから、会社の基礎資料となる法人登記簿謄本は、オンラインからでも所得はできない。

そのため、当日は情報が錯綜したのであろう。

さて日が明けて、今日9日昼から初動調査を行った。今回の現状報告は初動の「しょ」のところであること、ご理解いただきたい。

はれのひ株式会社について(記録・情報)

はれのひ株式会社は、平成23年3月28日に創業している。

当初は、 「シーン・コンサルティング株式会社」 という商号であった。この社名で行なっていたのは、コンサルティング業であり、主にブライダルや振袖の販売店などの経営コンサルティングがその事業の主軸であった。売上規模は極めて小さく、代表取締役社長の自宅が創業の地となっている。

平成24年夏頃に横浜市内で振袖の販売や貸し出しを行う店舗を開設し、ついで横須賀店、博多天神店、八王子店とその規模の拡大した。ちょうど博多天神店を開設した際に、コンサルティング業よりも事業として魅力的だと感じ始め、八王子店開設となった平成27年12月、「シーン・コンサルティング株式会社 ハレノヒ事業部」から社名ごと「はれのひ株式会社に変更した。

平成28年9月期の売り上げは4億8千万円だということだから、順調に売り上げ規模を伸ばしていたことになるのだが、従業員を名乗るツイッターの情報によれば、平成29年に入り、給与の未払いや取引先への支払いが遅れていたというから、平成28年~平成29年にかけて事業的な問題が発生していた可能性が高いと考えられる。

代表取締役のS氏は創業当初には博多に住まいがあり、平成25年に横浜市中区に引っ越しをしている。平成27年にはみなとみらいの高級高層マンション住まいとなるが、これは賃貸マンションであり、所有は別の個人(夫婦)の持ち物となっていた。

事実上の本社となっているのは、横浜市中区の商業施設「CROSS GATE」であるが、商業登記簿謄本によれば、この所在地は支店として登記されている。

登記上の本店所在地は、「福岡市博多区」であり、この所在地は代表取締役のS氏が横浜市中区へ引っ越しした同日となっている。

資本金は平成24年に変更登記がなされ、150万円となっている。

売り上げの規模や従業員数(49人)から考えれば、会社の資本は潤沢であったとは言い難い

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はれのひ株式会社のホームページなど

現在は消されてしまっている「はれのひ」のホームページを見てみると、比較的安めの設定であるが、ニュース報道では、20万円台〜90万円台までその被害額は相当なものだと考えられる。

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「〇〇円から」という表記の価格帯表示には、その先のオプションや振袖のデザインによっての値段の増減も当然あり、Twitter上で確認できる被害者報告を見る限り、被害額の中心帯は40万円前後だと推定できる。

仮に被害額の平均が40万円台であったとしても、被害規模は500人は超えるものと考えられ、被害総額は2億円は下らないだろう。

また、店舗については情報が錯綜しているが、みなとみらい店、横須賀店、福岡天神店、八王子店、つくば店、柏店がオープンされたものとして記録があり、「はれのひ」のInstagramでは、「みなとみらい店」「八王子店」「つくば店」「博多天神店」がCMされていることから、事実上動いていたのは、この4店舗であろうと考えられる。

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成人の日当日に営業を強行したのは、「博多天神店のみであり、それ以外の店舗は成人の日の前、1月6日〜7日には閉鎖されていた。

登記上の創業は平成23年となることは完全な事実であるが、ホームページでは、「※」で2008年創業と表記されていた。つまりは、2008年には代表取締役のS氏が個人で事業を始めているということを言いたいのだろう。

本件はれのひ事件についての怪情報

代表取締役S氏については、ネット上ですでに写真が出回っている。

この写真の触書は英語と中国語で書かれているが、「上海婚礼文化の関係者と2010年と2012年にS氏が会合をした記録であることがわかる。

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引用元:http://www.hlbk.net/index.php?doc-view-528(中国語サイト)

ただ、2010年に関しては、「シーン・コンサルティング株式会社」設立前であり、2012年については、創業後に横浜でコンサル業から店舗を運営する立場に事業形態を変えた直後である。

この写真の情報からか、S氏は日本人ではないという情報が流れたが、記録によれば、S氏は茨城県の出身である。 また、FacebookをS氏が更新し上海に逃亡したという怪情報が流れている。

確かに、上海における人脈があるS氏だが、 中国国内でFacebookの更新ができるだろうか、確か中国にはファイアウォールがありアクセスできなかったのではないだろうか。投稿日や位置情報は編集できるから、なりすましの要素が強くあり、この情報については信憑性がないと判断できる。

つまり、S氏が上海に逃亡していると決めつけるのは時期尚早であるのだ。ただ、この「はれのひ事件」では、急遽に逃亡するXデーを決めてから事にあたっている可能性が極めて高いため、逃亡先が海外である可能性は否めない

検討

記録を検討すると、その店舗数の錯綜が見受けられるが、ホームページでも店舗として表記があったのは、4店舗であり、その他の2店舗はこの「はれのひ事件」よりずいぶん前に閉店していたと考えられる。

売り上げ規模が増加しているように見えて、 その実、不採算店舗などを閉鎖したという事になれば、売り上げ増加は見せかけである。

金融筋の情報によれば、融資の申し込みをしていたというものがあり、ある程度の段階までは事業の立て直しを図っていた可能性があるが、再建の見込みがなく、融資審査に落ちている

よって、経営難に至り、支払いができなくなるところまで行って、特に資産もないことから、 事業としての支払いのほか、給与についての支給も難しくなり、振袖業者さんが最も稼ぎ時となる「成人の日の連休を狙ってわざと事実上の倒産に見せかけた可能性が濃厚だと考えるのが自然だろう。

ただし、破産記録によれば、「はれのひ株式会社」についても、代表取締役のS氏、同取締役のI氏記録はなかった。 つまりは現段階では破産はしていない

また、通常、このような状態で債務不履行の状態に陥った企業では、夜逃げや破産の手前で、玄関ドアに「破産する意向がわかる文面」と連絡先の弁護士名が掲示されていることが多いのだが、はれのひ株式会社については家賃滞納もしており、このような張り紙はなかった

こうした点を検討すると、代表取締役であるS氏の「計画性の無さ」という性質が浮き彫りになってくる。

例えば、S氏はそもそも実店舗を運営するという考えはなく、コンサルタントとして助言をすることで生業を立てようとしていたわけだ。実店舗運営とコンサル業は全く性質が異なりそのワークバランスも全く違うのだ。

この初心を貫かず、 実店舗を流れでやってみたら、まだライバルも少なく、目新しいところを攻めたのが「たまたま」軽いヒットをした。 こっちの方が儲かるぞと、さっさと事業を変更したわけだ。もちろん、流れに乗るのは悪いことではない。むしろ事業運営には流れに乗るということは重要なことなのだ。

ところが、計画性はほとんどなく資金計画もないに近い状態で店舗展開を急ピッチで進めたのだ。これには、店舗展開についてのマーケティング期間もほぼなかったであろうと言っても過言ではない速さでの展開であった。

ほぼノリで広げてみたけどやってみたら赤字が膨らんだというところだ。さらに、資金計画は皆無。金融機関は融資には消極的になるのは当然だろう。

そして、さほど裕福ではなく、学歴や見た目にコンプレックスのあったS氏は、この反動から、一見裕福な生活を好む傾向があった。高層タワーマンションなどはその典型であり、通例は、成功して分譲を現金でドーンと購入するところを、それをするだけの資金はないので、ひっそりと賃貸情報をチェックして、あたかも自分が成功して買ったのだというように見えるようにしてこの高級高層マンションに住み始める

計画性の無さ、派手な生活を好むようになれば、当然に、事業自体は社長というガンの前に立ち行かなくなっていくものだ。一方で、法人登記簿とホームページなどの情報に差がある。こうした経営者はズボラで虚言癖があり自分を大きく見せようとする節がある。

用意周到にこの成人の日に逃亡しようというのであれば、もしくはプロの詐欺師であるのならば、債務不履行で資金もなく、結果的に破産をするというように見せかける要素をいくつも作るだろう。こうした要素を作ることで、詐欺罪という刑罰は避けることができる。刑罰のリスクはなるべく避けようとリスクヘッジするのだ。

ところが、破産の手続きも後手であろうし、単に金を持ち逃げして姿を眩ましたというのが、事の顛末だ。

所見

被害者の会などが各地で形成されそうだが、プロの詐欺師の犯行ではない以上、逃亡するにあたっての資金はあまり多くはないというのが、一般的なよくある顛末である。

仮に海外に資金移動されていた場合、その取り戻しは極めて困難なものになる。

多少の額が残っていても、被害者同士が被害金額を按分して支払いを受ける程度であり、満額返還されることは奇跡とも言えるほど可能性が薄い。先取特権ということも返還時は重要な要素になる。

第二の「てるみくらぶ」にもなるだろうという今回の 「はれのひ事件」だが、「てるみ」の際は、クレジットカード払いを選択した被害者は一部クレジットカード会社から補償を受けていたということがあった。

つまり信販などで契約をした被害者がいるのならば、ぜひともクレジットカード会社などに問い合わせを行うことを推奨したい。あわよくば、全額もしくは一部の被害金を補償してくれるかもしれない。

一方で、この件、民事上の債務不履行で片付けるのか、それとも、そもそもの詐欺性(はじめから騙してやろうと画策して実行した)を見出して捜査を進めるかは警察次第である。

およそ、この件を実行したS氏は、詐欺性を否定し、事業が行き詰まってしまったというように、商売上の問題で支払えなくなっただけだと主張することだろう。

詐欺において最も困難な立証が内心の証明」なのだ。心の中でどう思っていたいうことを捜査機関は証拠を集めて証明しなければならない。だから、実行犯が素直に「騙しました、すみません。」となればいいのだが、そうでなければ、とてつもなく骨の折れる捜査をしなければならないことになる。

いずれにせよ、人生で一度しかない成人の日をメチャメチャにしてしまったという罪は重い。そういう罪は刑罰上なくとも、これを心理上の罪とするならば、超重大な罪だ。

これから先も同じような被害が起きないようにするためにも、警察や検察にはぜひとも頑張ってもらいたい。

続報が出たり、調査が進行すれば、本件「はれのひ事件」はこの「伝説の探偵」で追っていこうと思う。

image by: Shutterstock.com

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