なぜ串カツ田中は全席禁煙化でも「客数12%増」を実現できたのか

まぐまぐニュース! / 2018年9月10日 5時0分

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2020年の受動喫煙防止法の施行に先駆け、今年6月1日より9割の店舗で禁煙に踏み切った串カツ田中。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは先日掲載の「売上高4割増、好調『串カツ田中』が抱える全席禁煙化で失速の試練」で、「同社の試練克服手腕が問われる」としましたが、禁煙導入から3ヶ月、串カツ田中はどのような手を打ち、客数や売上はどう変化したのでしょうか。佐藤さんが自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で詳しく分析・紹介しています。

居酒屋串カツ田中が禁煙化後に客数が前年から12%も増えたワケ

6月1日から9割超の店舗で全席禁煙に踏み切った居酒屋チェーン串カツ田中」を展開する串カツ田中ホールディングスは9月5日、禁煙化して3カ月目となる8月の既存店売上高が前年同月比9.7%増と大幅な増収を達成したと発表しました。客数が大幅に増えたことで売上高を大きく押し上げたようです。

同社は禁煙化時、串カツ田中を約190店(現在は約210店)展開していましたが、業界に先駆けてそのほとんどの店舗で全席禁煙に踏み切ったことで話題を集めましたが、一方でそれにより客離れが起きる可能性があることを指摘されていたこともあり、その行方に注目が集まっていました。

実施から3カ月が経過し、同社は禁煙化後の既存店実績を公表しているのですが、それによると、客数は6月が2.2%増7月が4.1%増8月が12.1%増と3カ月連続でプラスだったと発表しています。ひとまずは、客離れに対する懸念が払拭されたといえそうです。

政府が閣議決定した改正健康増進法に対応するほか、喫煙を敬遠する家族客などを取り込みたいとの思惑から、串カツ田中はほぼ全店で全席禁煙に踏み切りました。業界に先駆けて禁煙化に踏み切ったことに対し称賛の声が上がった一方、長期的には客数を伸ばせる見込みがあるものの、喫煙者と相性が良い居酒屋業態ということもあり、何もしなければ短期的には客離れが起きるとの懸念の声も上がっていました。

全席禁煙を始めた6月は微妙な結果に終わっています。1~14日に、大半の店舗で多くの串カツが割引となる串カツ全品108円(税込み、以下同)キャンペーンを実施し、一部の店舗で好きな串カツ2本をプレゼントするキャンペーンを開催したほか、22~30日には全店でドリンク全品を216円に割り引くキャンペーンを実施したことが寄与し、客数が2.2%増えたものの、客単価が大幅に低下したため、売上高は2.9%減ってしまいました。

6月は従来と比べ家族客が大幅に増えた一方会社員・男性客が大幅に減ったといいます。全席禁煙により喫煙を嫌う家族客を取り込むことに成功しましたが、喫煙できないことを嫌った会社員・男性客が離反したとみられます。店舗従業員に実施したアンケートでは、「禁煙だからこそ来店するお客がいる」といった声があった一方、「禁煙になったと聞くと、日に1~4組が着席せずに帰る」といった声があったといいます。

6月はキャンペーンにより客数は増えたものの、低単価になりがちな子ども客が増えたほか、割引となるキャンペーンを実施したことで客単価が大幅に低下し、売上高を押し下げてしまっています。

7月は1~8日に大半の店舗で串カツ全品108円キャンペーンを実施し、一部の店舗ではドリンク全品216円キャンペーンを実施したことが奏功し、客単価はマイナスとなったものの、4.1%増だった客数がけん引し売上高は1.9%増のプラスとなっています。

大掛かりな施策が奏功した8月

大幅な増収となった8月は大がかりな施策を講じたことが功を奏しました

まず、昼飲み・昼食需要の掘り起こしと従業員の負担軽減を図るため、1日から全店舗の3分の1にあたる76店で営業時間を変更しました。土曜・日曜・祝日の開店時間を従来より2時間早い昼12時とすることで昼飲み・昼食需要を掘り起こし、すべての曜日の閉店時間を従来より1時間早い午前1時とすることで従業員の負担軽減を図っています。

営業時間を変更した上で、4~19日の土曜・日曜の計6日間、対象の64店で、開店時間から午後2時までに来店した客は退店までの間、串カツ全品を108円で注文できるキャンペーンを実施しました。先述のとおり開店時間を昼12時に前倒ししており、新たに昼飲み・昼食需要を取り込もうとしたのです。

16日からは、81店を対象に、前日までに予約した30名限定で平日の午後6時までに来店した場合、ほぼ全品が食べ放題となるコースと串カツが食べ放題となるコースを導入しています。追加料金を払えばアルコールやソフトドリンクを飲み放題にすることもできます。串カツ食べ放題は2015年から毎年期間限定で実施していましたが、幅広い客層を取り込むため、継続的に実施するようにしたといいます。

こうした施策が功を奏し、8月は客数が12.1%増と大きく伸び、それに引き上げられる形で売上高が9.7%増と大幅な増収を達成することに成功しました。禁煙化や施策の影響により客層が変化し、6月と同様に家族客が大幅に増えた一方で会社員・男性客が大幅に減ったといいます。

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3カ月を通してでは、禁煙化によりメディア露出が増えて串カツ田中の認知度が高まり、そのことが集客につながったといいます。200店超を擁するチェーンに成長したとはいえ、認知度に関しては他の大手居酒屋チェーンと比べてしまうと見劣りしていた感が否めませんが、禁煙化で客の流出が避けられない居酒屋業界にあって、いち早く対応したことで注目を集めることに成功し、かつ株を上げることに成功したといえそうです。

キャンペーン以外に求められる有効打

とりあえずこの3カ月間に関しては禁煙化に対する懸念を払拭することに成功しました。しかし、今後も同様にうまくいくかどうかは予断を許しません。客数はいずれの月もプラスとなりましたが、割引キャンペーンを実施していなければ恐らくいずれの月もマイナスになっていたと考えられるからです。禁煙化前はこれほどの規模の割引キャンペーンを実施しておらず、禁煙化後の新規客は割引目当ての客が少なくないと考えられます。

割引キャンペーンによる集客に頼ることは当面は致し方ないとしても、中長期的には割引キャンペーン以外で有効打を打てなければジリ貧になってしまうリスクがあります。

割引キャンペーンは当然ながら利益をむしばみます。同社の17年11月期(単独)の売上高純利益率は5.9%と業界の中ではかなり高い数値を誇っていますが、以前と比べると利益率は低下しており、また、原材料費や人件費の高騰が今後も続く可能性が高く、利益率はさらに悪化していく可能性が高いと考えられます。

そうなれば、利益をむしばむ割引キャンペーンにいつまでも頼るわけにはいかなくなるでしょう。今後は、割引キャンペーンに頼らない体制を構築することも視野に入れる必要があるといえそうです。

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