カシオ、売上半減の大ショック。何が名門企業を追い込んだのか?

まぐまぐニュース! / 2019年3月5日 5時0分

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「創造 貢献」を社是に、これまで数々のヒット商品を生み出してきたカシオ計算機が窮地に立たされているようです。今年1月末には1946年の創業以来初の早期退職優遇制度の実施を発表、さらに19年3月期の連結売上高がピーク時に比べ半減するなど、事態は深刻です。何が同社をここまで追い詰めたのでしょうか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、その理由とカシオが解決すべき2つの課題を記しています。

売上半減のカシオが抱える2つの課題

「Gショック」で知られるカシオ計算機が創業以来初となる早期退職者の募集を始めたことが大きな話題になった。

1月31日、国内の営業部門、勤続10年以上の45歳以上の社員など約700人を対象に早期退職者を募集することが発表された。200人程度の募集を想定していると複数のメディアが報じている。2月12日から3月15日まで募り、退職予定日は6月20日とする予定。募集に応じた社員には通常の退職金に加え、特別退職金を支給する。

同日発表の2018年4~12月期の連結決算は、売上高が前年同期比5.7%減の2,182億円、本業のもうけを示す営業利益は3.4%増の224億円だった。最終的なもうけを示す純利益は14.7%増の169億円だった。

同社は19年3月期の連結売上高を前期比1.7%増の3,200億円と見込んでいるが、ピークの08年3月期6,230億円の半分に縮小している。売上高の落ち込みは08年のリーマン・ショックに端を発した景気の低迷が引き金となったが、理由はそれだけではない。市場環境の変化の波にのまれたことやGショックに代わるヒット商品を生み出せなかったことも大きい。このような状況のため、早期退職者の募集を実施するなどして立て直しを図りたい考えだ。カシオは今、大きな変革が求められている

カシオは立て直しに向けて、昨年5月にコンパクトデジタルカメラ市場からの撤退を正式に発表した。同社はGショックなど腕時計事業と電卓や電子辞書など教育関連事業が収益の柱となっているが、デジタルカメラ事業は市場の縮小などにより収益が悪化し「お荷物」となっていた。同社は同事業の採算を抜本的に改善することは難しいと判断し、撤退を決めた。18年3月期決算に資産廃棄などに伴う特別損失46億円を計上している。

カシオは1995年に一般消費者向けで世界初となるカラー液晶モニター付きデジカメQV-10を発売。撮った画像をモニターでその場で確認できたり、気に入った画像をパソコンに取り込んで保存できることなどが受けヒットした。02年には厚さがわずか1センチ強で胸ポケットに収まる名刺サイズのデジカメ「EXILIMエクシリム)」を日本で売り出し、わずか2カ月で増産が決まるほどの人気商品となった。最近では、11年から売り出した自分の顔を見ながら撮影できる「TRシリーズが自撮りできるデジカメとして中国でブームを巻き起こしている。

このようにカシオは革新的なデジカメを世に出してきた。かつてキヤノン、ソニーと並んで「デジカメ御三家」と呼ばれることがあったほどだ。だが、競合が台頭し競争が激化したほかスマートフォンの普及でカシオのデジカメ事業は次第に苦戦するようになった。

国内のデジカメ市場は急速に縮小した。カメラ映像機器工業会によると10年に1,057万台だった出荷台数は18年には284万台まで減った。わずか8年で73%も減った形だ。TRシリーズも自撮りブームが一巡すると苦戦するようになった。こうした流れにカシオも抗うことができず、18年3月期のデジカメ事業の売上高は前期比34%減の123億円と大きく縮小し、営業赤字は5億円から49億円に膨らんだ。今後の回復も見込めず、撤退に追い込まれた格好だ。

「Gショック依存」というリスク

デジカメ事業以外も予断を許さない。売上高の半分以上を占める腕時計事業は伸び悩みが懸念される。同事業の18年3月期売上高は前期から微増の1,703億円にとどまった。

腕時計事業の柱となるGショックは「落としても壊れない丈夫な時計とたった1行しかない企画書から生まれたことで知られる。開発担当者は社屋の上階の窓からサンプルの時計を落下させるなどの実験を繰り返した。そしてついに「心臓部であるモジュールを点で支える」という現在も使われる耐衝撃構造のアイデアを思いつき、落としても壊れない時計、Gショックを開発することに成功した。

初代Gショックが発売されたのは83年。まず米国で人気に火がついた。アイスホッケーの選手がパックの代わりにGショックを打っても動作し続けるというテレビCMを84年に放送した。そのCMに対し「誇大広告ではないか」という意見が寄せられたため、人気テレビ番組がCMと同じようにしてどうなるかを検証したところ、GショックはCM同様に動作し続けることが確認された。そのことが広く知られるようになり米国で一気に人気が高まった。

90年代に入ると日本の雑誌が米国のファッションを紹介するようになった。それにより「Gショックが米国で人気がある」ということが日本で広まり、日本でもGショックの人気が高まっていった。また、有名人が身につけたことで人気が一気に高まり、Gショックブームが沸き起こった。90年の日本での年間出荷数はわずか1万個に過ぎなかったが、97年には240万個にまで増えた。世界では同年に600万個を出荷している。17年8月には累計出荷1億個を突破し、今も販売は好調だ。

腕時計事業はGショックがけん引して成長してきたが、一方でGショックに頼る面が大きく依存リスクが大きい。電波ソーラー式腕時計のブランド「オシアナス」など幅広い品ぞろえを目指しているが、Gショック以外で収益の柱と言えるほどに育っているものは見当たらない状況だ。Gショックの今後の伸びも懸念される。

カシオは腕時計事業の規模を21年3月期に18年3月期の倍にする目標を掲げているが目標達成は予断を許さない。達成に向けてGショックのラインナップを広げるほか、海外のネット通販を強化することを表明しているが、目新しさはなく力強さにも欠ける。また、海外向けの廉価版腕時計が「チープカシオ」として若者を中心に15~16年ごろにブームとなって業績を押し上げたが、それも最近は下火になっている。

カシオが解決すべき2つの課題

腕時計事業は売上高が大きいだけでなく営業利益率が2割と高く利益の面においても貢献が大きい。カシオの業績を大きく左右する屋台骨となる事業だ。業績を上向かせるためにもGショックを強化するだけでなく、Gショック以外のヒット時計を生み出すことも求められている。

また、ブランドイメージを高めることも必要だ。カシオはGショックや他ブランドの高級モデルへのシフトを進めることで単価を引き上げて収益性を高めようとしている。しかし、ブランドイメージを高めきれていないことがそれを阻んでいる。「チープカシオ」のブームなどでカシオは「安物時計メーカー」のイメージが強まってしまい、ブランドイメージは以前と比べて低下している感がある。それにより単価を引き上げて収益性を高めることが困難になっているのではないか。

カシオは新たなヒット商品を生み出すことに加えブランドイメージを高めることが必要だろう。変革が求められている。

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