中国お得意の汚いやり口。習近平に魂を売るイタリアの厳しい前途

まぐまぐニュース! / 2019年3月28日 5時0分

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先日行われたEU首脳会議で、中国に対する警戒感をあらわにした欧州各国。これまでチャイナマネー目当てに習近平政権にすり寄る姿勢を見せた国々も、中国の「危険性」に気づき始めたようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、「世界規模で中国との対決が始まろうとしている」とした上で、日本の動向で世界の政治地図が大きく変わると記しています。

【中国】中国への警戒感高まる欧州、それでもカネで歓心を買う中国

● 仏大統領「中国に甘い考え抱く時代終わった」 EU新戦略

3月22日、ブリュッセルで行われたEU首脳会議で、欧州委員会は域内市場を歪める他国の国有企業や国家補助への対処を年末までにまとめ、政府調達分野での互恵的な市場開放を求め、第5世代5G移動通信システム整備での安全保障確保のための共通の対策を取ることを決めました。

会議の声明では名指しはしなかったものの、その対象が中国であることは明らかです。実際、ユンケル欧州委員長は「中国はパートナーと同時にライバル。この状況に適応せねばならない」と述べ、フランスのマクロン首相も「欧州が(中国に)甘い考えを抱く時代は終わった」と発言しています。

これまで中国の経済支援外交になびいてきた欧州各国ですが、ようやく中国のやり方に警戒心を持つようになったわけです。アメリカの対中制裁も大きく影響していると思われます。

フランスでは中国企業による投機的な農地買収が問題化していて、農地の高騰によりフランス人が土地を買えないという事態に陥っています。昨年8月には中国企業の農地買収への反対デモが起こり、マクロン大統領も「どんな目的かわからないまま、外国人に何百ヘクタールもの土地を買わせるわけにはいかない」と述べ、農地買収と外国人投資家に対する規制強化を打ち出しました。

● 仏で中国資本の投機的農地買収、デモで「中国人は出ていけ」

日本でも中国人や中国企業による土地買収が問題視されていますが、フランスでは実際に実害が起こっているわけです。

現在、習近平主席は欧州を歴訪しており、アメリカと欧州の対中連携にくさびを打ち込もうとしています。21日にはイタリアを訪問し一帯一路で協力する覚書を交わしました。このことは日本でも大きく報じられました。

● 習氏、イタリア大統領と会談「インフラで協力」一帯一路で接近 EU、米は警戒

経済で苦境に陥っているPIIGS諸国の1つであるイタリアが中国に取り込まれたことで、EUでは危機感が募りました。対中政策で結束するはずが、イタリアが抜け駆けしてしまったからです。しかもG7(主要7カ国)として初めての覚書署名となります。

習近平は「古代のシルクロードを再生させたい。中国は双方向の貿易と投資の流れを望んでいる」などと述べましたが、イタリアの失業率は10%を超え、若者失業率は40%に達すると言われています。イタリアの窮状につけ込んでインフラ整備などの経済支援を申し入れるといういつものパターンです。

もちろん中国への返済が滞れば、スリランカのハンバントタ港同様、イタリアのインフラ運営権は中国に取られてしまうでしょう。借金漬けにして相手の国のインフラを奪うわけです。

そのやり方があまりにもえげつないため、世界各国で中国に対する警戒感が高まっていた矢先の、イタリアの覚書署名です。そのため、EU首脳会議で改めて「中国の申し出に安易に飛びつかないことをEU各国が確認しあったというわけです。

● 習近平氏、21日から欧州歴訪 米欧の対中連携にくさび

もっとも、イタリアも昨年から財政懸念が再燃していて、尻に火がついている状況です。しかも、EUの財政ルールを押し付けられているため、独自の経済政策が出来ません。とくにEUの盟主であるドイツは厳しい財政規律を求めてきました。そのため、同様に財政危機に陥ったギリシャなどは、ドイツに対して第二次世界大戦中の賠償として36兆円を要求するということもありました。日本では「ドイツは戦後保障をきちんと行った」などと言われていますが、はからずも、それが虚妄であったことが露呈したわけです。

● ドイツを揺さぶる戦後処理 財政危機のギリシャ賠償額36兆円と試算 独政府は「解決済み」

EUの成立は、はじめは独仏が中心でしたがいつしかドイツだけが主役となっていきました。イギリスのEU離脱が大きな問題となっていますが、ドイツ以外のフランス、イタリア、スペインなどは、ますます脇役に転落していくでしょう。そこで中国の触手がEUに伸びてきているのです。

ギリシャやイタリアは現在左翼政権ですので、中国としても手を組みやすいわけです。また、債務に悩む国々は、たいていEUにも中国にも政治利用されてしまことが多く、決して一方的な思惑で決めることができません。

マクロン大統領の「中国に甘い考えを抱く時代は終わった」という発言は、EUの対中心戦略であると同時に、対独牽制の意味もあるでしょう。ドイツはEU内でも、フォルクスワーゲンをはじめ、中国への傾斜が強い国です。米中貿易戦争による国際経済力の変動については、戦後処理や経済秩序の軌道修正という側面も含まれていると思われます。

それはともかく、ギリシャは急接近する中国に対して同国最大のピレウス港を売却することになりました。そして今度はイタリアの番だというわけです。イタリアにとっては、ある種、EUがイタリアの危機に手を差し伸べてこなかったことに対する意趣返しの面もあるでしょう。

とはいえ、悪魔に魂を売ってしまったようなものですから、イタリアの前途は厳しいものになると思われます。同様に、ギリシャやイタリアが中国の拠点となれば、EU諸国にとっても脅威となります。

すでにイタリアの署名に対しては、国内の連立政権内やアメリカからも反発が出ています。米国家安全保障会議(NSC)は、「中国の虚栄心のためのインフラプロジェクトに正当性を与えないようイタリアに求めました

● 中国国家主席、イタリアに到着 「一帯一路」巡り覚書締結へ

一方、中国に対して厳しい発言を行ったフランスにしても、3月25日の習近平・マクロン会談では、中国がフランスのエアバス300機を購入することで合意し、中・仏が12億ユーロをかけてコンテナ船10隻を新たに建造することなどの大型契約が交わされたと、中国側が発表しました。

● 中国 仏エアバス300機“爆買い” 欧州と関係強化

これはアメリカのボーイングに対する中国の牽制でもあるわけです。とくにエアバスと競合するボーイングの機種は、5カ月間に2度の墜落事故を起こしたことで、運行が停止されており、また、米中貿易戦争に巻き込まれる形で、中国への販売が停滞している状況です。

● エアバス、中国から3.8兆円の大型受注-競合ボーイングに新たな打撃

共同会見でマクロン大統領は「エアバスの巨大な契約というきょうの成果は重要な進展ですばらしいメッセージだ」と述べて歓迎しましたが、どこまで中国を信じているのかは疑問です。

というのも、2017年11月に習近平が訪米した際には、中国はボーイングから300機を購入することを約束しましたが、実際には2013年に成立した既存の契約をカウントしていただけだったということがあったからです。

● ボーイングの中国受注、トランプ氏絶賛も大半は古い案件-関係者

米中貿易戦争は、このように欧州にも拡大して新たな局面を迎えようとしています。私は、米中貿易戦争は単なる経済的な争いではなく、自由と独裁人権と弾圧といった人類の価値観の対立だと主張してきました。

実際、欧州会議は中国に対する警戒を強めると同時に台湾の自由民主を支持することを発表しています。今年1月2日に習近平が「台湾統一に軍事力行使を排除せず」と演説したことに対して、欧州会議は1月30日、「台湾海峡両岸の平和と安定はEUの重要な利益に合致すると再び強調すると共に、台湾のガバナンス並びに民主人権法治などの価値を尊重する」という立場を表明したのです。

● EUと欧州議会が自由民主の台湾を支持、外交部が謝意

蔡英文政権になってから、サントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ共和国、ブルキナファソ、エルサルバドルと、5カ国が台湾と断交しました。いずれも中国がカネで釣った結果です。小国や経済的困窮にある国を中国は狙い撃ちにしているわけです。

アメリカは、台湾と断交した国々の大使を召喚するなど、親中になびいた国に対して圧力を強めています。今後、欧州も対中姿勢を厳しくしていくでしょう。世界規模で中国との対決が始まろうとしています

米中貿易戦争におけるアメリカの「対中兵糧攻め」は、中国が悪戦苦闘している状況から見て、中国もこれまでの知的財産権に対する窃盗行為を修正せざるをえないでしょう。少なくとも今年2019年からは、中国経済をこれまでの延長線上で見るべきではないと思っています。

「一帯一路」から習近平が掲げる「チャイナドリーム」まで、大幅修正をせざるをえないでしょう。既成・既存の中国観ではかなり危ういことだけは、警鐘を鳴らしたいと思います。

アメリカの対中新戦略に続いて、EUまで対中戦略を修正してきましたが、最後に残るのは日本の動向です。日本が動けばインド、太平洋諸国もつれて動きますから、2019~2020年は国際経済だけでなく、政治地図もかなり変わると私は見ています。

中国は「海洋強国を目指す」と公言していますが、これまで海禁(海の鎖国)の伝統を守り続けてきた中国に、はたして海の覇権確率が可能なのか、その答えも、今年、目に見えてくると思われます。

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