今からでも遅くない。東京オリンピック開催を考え直すべき理由

まぐまぐニュース! / 2019年4月19日 21時58分

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いよいよ来年に迫った東京オリンピックですが、ここにきて多くの問題が明らかになってきました。今回、ジャーナリストとして数々のメディアで活躍中の嶌信彦さんは自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』で、JOC竹田会長の退任やカネの問題を取り上げるとともに、「真夏」という開催時期を考え直すべきと記しています。

本当に「真夏のオリンピック」でいいのか ─リタイア選手続出とならなければいいが…─

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに次から次へと問題が生じている。「スポーツと平和」の祭典をうたいながら、人事資金大会開催時期などを巡って様々な難題が現れはじめた。東京五輪歓迎ムードに水が差されはじめているのである。

このところ問題になっているのは、日本オリンピック委員会JOCの竹田恒和会長71の退任論が急加速し、6月の任期満了をもって退任することが決まったようだ。竹田氏は2001年に会長に就任し、現在10期目。急死した八木祐四郎前会長の後任として4代目会長に就任した。

07年3月に竹田氏が会長を兼務していた日本馬術連盟への交付金上乗せや人事介入問題のゴタゴタが浮上。さらに16年夏の五輪招致ではブラジル・リオデジャネイロに敗れてしまう。11年9月に20年東京大会の招致に立候補し、東京招致委員会理事長に竹田氏が就任。13年9月に20年東京大会の招致が決まり、竹田氏は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会副会長になると共に、IOCのマーケティング委員長に就任したのである。

竹田・日本オリンピック委員会会長は退任へ

ところが仏司法当局が「国際陸上競技連盟前会長の息子が深く関わったシンガポールの会社に2億3,000万円を支払った」として竹田氏への捜査を開始すると、竹田氏は「送金をしたが正当な対価によるものだと述べ、「JOCも違法性はない」と公表した。ただ、東京地検特捜部と仏司法当局が任意で事情聴取を行っていた。

仏当司法当局はもともとスキャンダルを持った人間には厳しいことで知られ、竹田氏の退任の流れが出てきて、今回の退任表明につながってきた。しかも竹田氏は疑惑報道を受けた今年1月に記者会見を開いたものの、質問を一切受け付けず7分間で会見を打ち切ってしまいメディアから反発を買った。同時に、スポーツ庁の鈴木大地長官も「一般論として、長いこと一人の人間が役員をやるとどうしてもよどんでくる」と発言し、竹田会長辞任の流れが本格化していたのである。特に会見を7分で打ち切った姿勢には、内外から批判の声が高まってしまった。

竹田会長は皇族の旧宮家の出身でJOC会長としては見栄えと座りがよかったのだが、7分間の会見の後は海外の国際会議にも相次いで欠席し、逃げ回っている印象を与えていたことも退任不可避につながった。

不透明な五輪使途のおカネ

一方、オリンピックの資金の使途についても、昨年10月に会計検査院から全容を明らかにするよう求められている。大会組織委員会と東京都が17年末に公表していた予算総額は約1兆3,500億円だったが、それ以外に競技場周辺の道路整備やセキュリティ対策、熱中症に関する普及啓発費など当初予定の約280億円に対し既に6,500億円も使われていた

このため総額は現時点で2兆8,255億円に上り、さらに森喜朗・元首相は「これをレガシーとして、日本が新しい分野に素晴らしい事業を展開できるなら、惜しい予算じゃないと僕は思う」と発言。今後もオリンピックの名の下に予算が積み上がっていく可能性も否定していない

なぜ秋の五輪にしなかったのか

さらに一番問題なのはオリンピック期間の設定だ。20年の東京オリンピックは、2020年7月24日から8月9日(パラリンピックは8月25日から9月6日)に行うことになっており、“真夏のオリンピックとなることが確実だ。東京都の昨年8月の同時期の気温を調べると大変な状況になっていることがわかる。8月9日の2週間前の都心では39.0度まで上昇、埼玉県熊谷市では史上最高の41.1度を記録し、気象庁では「命に危険を生ずる暑さが続き災害という認識だ」と健康管理を呼びかけた。この日全国9府県で13人が死亡、昨年7月に熱中症による搬送者は5万4,220人に上った。

欧米のカネに負けた10月五輪

1964年の東京オリンピックの開催日は10月10日だった。「敗戦から立ち上がった日本をオリンピックの舞台で世界に示そう」との思いがあったのだ。このため日本オリンピック委員会は開会式をいつにするかについて、気象庁が数年間の気象状況を調べ、期間中に最も気候が安定し晴天の日が続いて選手観客が一番過ごしやすい季節はいつか──と総力を挙げて調査したのである。

その結果が10月10日で、まさに秋晴れのオリンピック日和だったのだ。10月10日はその後「体育の日」となり、64年の東京オリンピックは「オリンピック景気」をもたらし、その後の日本の高度成長の礎を作ったと人々は感じたのである。

しかし20年の東京オリンピックは夏の最も暑い時期に設定してしまった。10月はアメリカ・メジャーリーグの決勝戦があったり、欧州のサッカーリーグとぶつかる上、何よりそれらを中継するTV局が大金をはたいているため10月開催に反対したのだ。結局、日本は欧米勢に押され8月としてしまったわけである。

招致委員会は招致段階の開催計画を示す「立候補ファイル」に、「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と記載しているが冗談だろうと言いたくなる。猛暑のことは触れず、ある種のダマシと言っても過言ではないほどだ。昨年7月と8月に熱中症で亡くなられた方は1,434人で、同期間に熱中症により救急搬送された人は8万4,005人もいた。

31度以上は激しい運動中止のはず

20年の男子マラソンは8月9日の予定だが、参考までちなみに前回オリンピックが開催された2016年の8月9日の東京の気温は午前7時で27.7度、そして午前9時には33.5度で、1日通しての平均気温は31.9度なので、時間にかかわらず暑いのだ。日本体育協会のガイドラインでは、「31度以上は激しい運動は中止」「28度以上でも激しい運動は30分で休憩を取る」と指摘しているほどである。

外国人選手は棄権続出か

こうした猛暑の情報は外国人選手にも伝わっており棄権を考える選手も出ているという。いまやボストンマラソンで優勝すれば15万ドルの賞金が出て、日本人は新記録を出すと1億円の報奨金がもらえる時代に命をかける選手がどれだけ出てくるか、と思う。近年では2007年夏に大阪で世界陸上が開かれ、少しでも気温の上昇を避けるため午前7時のスタートとし、コースの数カ所ではドライミストを噴霧する対策が取られたが、男子マラソン85選手のうち28選手がリタイアしている。

オリンピックには世界中の人がやってくる。最近のインバウンド人気でオリンピック後は日本中を旅する人も多いだろうが、真夏の観光では折角の日本の観光人気も下がってしまう心配も出ている。真夏のオリンピックは英断をもって考え直すべきだろう。

(TSR情報 2019年4月8日)

※嶌は以前より酷暑のオリンピック開催に関する提言をしてまいりました。参考まで過去に書いたオリンピック関連のコラムならびにTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」にてお話した内容をご紹介します。ご興味をお持ちの方は合わせて参照いただけると幸いです。

コラム

● なぜ真夏の五輪か? 14.10.20 電気新聞

● ~真夏の東京五輪を変えよう~ 14.11.05 TSR情報

● 東京五輪後の日本の進路 どんな国をめざすのか 15.02.05 財界

● 寒々しい五輪風景 15.08.03 電気新聞

● アスリート・ファーストのいかがわしさ 15.09.17 財界 

● 地に落ちた東京五輪評判 15.10.01 財界

● 真夏の東京五輪、見直すべき 18.02.17 Japan In-depth

● 五輪の日程変更を! 18.08.08 電気新聞

TBSラジオ 森本毅郎・スタンバイ 日本全国8時です

● 東京五輪の課題解決のヒントを過去の五輪から紐解く  16.08.24 

● アスリートファーストは妥当か? 16.05.19 

● オリンピックと政治、印象に残っている選手 15.12.01

image by: enchanted_fairy / Shutterstock.com

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