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故・高橋和希先生が描いた『遊☆戯☆王』は何がすごいのか 日本経済にも影響?

マグミクス / 2022年7月14日 7時10分

故・高橋和希先生が描いた『遊☆戯☆王』は何がすごいのか 日本経済にも影響?

■TCGの歴史とともに歩んだ『遊☆戯☆王』

 先日、お亡くなりになった漫画家の高橋和希先生。有名なマンガ『遊☆戯☆王』が代表作として知られていますが、アニメとなって大ブームとなった以上に、トレーディングカードゲーム(TCG)を日本の代表的なコンテンツとして成立、定着させたという功績は意外と語られていません。

 TCGの元祖と呼ばれるのが、アメリカのウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が1993年8月に発売した『マジック:ザ・ギャザリング』です。その人気は瞬(またた)く間に広がり、やがて日本にも上陸しました。そして、その影響から日本国内のメーカーもTCGの開発に着手します。

 当時、日本国内でもトレーディングカード(以下トレカ)という名前が浸透し始め、折からの『新世紀エヴァンゲリオン』人気に乗ったトレカブームが始まっていたころでした。そして、初の本格的な国産TCGとして1996年10月に株式会社メディアファクトリー(当時)から『ポケットモンスターカードゲーム』(現在の『ポケモンカードゲーム』)、11月にはバンダイから『カードダスマスターズ スーパーロボット大戦 スクランブルギャザー』が発売されます。

 ほぼ同時期に『マジック:ザ・ギャザリング』の日本語版の販売も開始されました。しかし、まだブームとは呼べず、販売店舗もそれほど多くはありません。この状況に大きな変化を与えたのが、『週刊少年ジャンプ』1996年42号から連載開始したマンガ『遊☆戯☆王』です。

 当初の『遊☆戯☆王』は、さまざまなゲームが登場し、気弱な高校生の武藤遊戯に潜んだ別人格が悪人に「闇のゲーム」を執行、最終的に恐ろしい「罰ゲーム」を与えるというダークヒーローものでした。このゲームのなかで『マジック:ザ・ギャザリング』を参考に架空のTCG『M&W(マジック&ウィザーズ)』が登場します。

 この『M&W』での駆け引きが読者の興味を引き、その後の『遊☆戯☆王』はカードゲームが物語の中心となりました。これがちょうど1997年のことです。この同年、富士見書房が『マジック:ザ・ギャザリング』に影響を受けたTCG『モンスターコレクションTCG』を発売、株式会社ブロッコリーがアニメファン向けを狙ったTCG『アクエリアンエイジ』を発売しました。

 TCGブームの引き金の一端を担った『遊☆戯☆王』がカードを発売することになったのは、TVアニメ化された『遊☆戯☆王』(1998年4月4日~10月10日)がきっかけです。この時の玩具スポンサーだったバンダイから、自動販売機カードダスの商品として発売されたのが初めてでした。

 この時、アニメ化の際に版権問題を考慮して、劇中のカード名称を『M&W』から『デュエルモンスターズ』に変更します。しかし、この時のTVアニメは原作マンガがまだ連載中だったことから序盤の闇ゲームを中心に、カードゲームでの戦いはあまり描かなかったことからか、あまり人気が出ずに半年ほどで放送終了となりました。

 このTVアニメ放送終了後に版権を入手したコナミは、TCG『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ』を1999年2月4日に発売。以降、かなり速いペースでエキスパンションを展開していきました。この頃、連載中の『遊☆戯☆王』は「決闘者の王国(デュエリストキングダム)編」も佳境に入ったころで、かなりの相乗効果があったと思います。

■TCGを一大コンテンツにまで育てた『遊☆戯☆王』

現在も発売が続く『遊☆戯☆王』のカードパック、「 遊戯王OCGデュエルモンスターズ ストラクチャーデッキ 宝玉の伝説」(コナミ・デジタルエンタテインメト)

 発売から半年も経たないうちに『デュエルモンスターズ』は売り切れが続出するほどのセールスを記録します。ただし、発売当初はまだゲームシステムが完成しているとは言えず、今の環境を知る人にはありえないと思えるルールがいくつもありました。

 生け贄召喚なしにレベルの高い上級モンスターを召喚できる。手札枚数の上限がない。公式にアンティルールと思われるものが存在していた。……などです。いずれもTCG黎明期だからこそあった話です。

 こういったようにTCGがブームとなったことでいくつかの問題も起きました。露天商などによるニセカードも大きな問題になったこともあります。古くはビックリマンシールなどでもありましたが、紙モノの商品は印刷によりコピーがしやすく、一時期は大量に出回りました。

 この打開策として、メーカー側はホロ印刷による偽造防止などの策を取ります。一方、販売形態としてカードショップと呼ばれる店舗が急速に増えたのもこの頃でした。この店舗が出来たことのメリットのひとつが、こういったコピー商品の淘汰になります。子供には見分けがつかない商品も、専門家が見れば一目瞭然。こうしてカードショップの普及は、同時に粗悪なコピー品の撲滅につながったわけです。

 また、こういったカードショップのほとんどがデュエルルームと呼ばれる遊戯場所を常設しました。これにより急速にTCGで遊ぶ人口が増え、この時期はさまざまなTCGが発売される戦国時代の様相となります。

 そして、リスタートする形で『遊☆戯☆王』は2度目のTVアニメ化がなされることになりました。それが現在までシリーズとしてつながることになる『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』(2000年4月18日~2004年9月29日)です。

 この2度目のアニメ化でTCGも安定した人気をキープしました。こういった手法がTCGコンテンツのひとつの形となり、後続のTCG作品の多くはアニメとの同時進行でカードの販売を促進するといった方法を取ることが多くなります。

 そういった意味で『遊☆戯☆王』はTCGをブームからコンテンツに押し上げただけでなく、ビジネスモデルとしても以降の商品、企業に多大な影響を与えたと言えるでしょう。そして、販売は日本国内だけにとどまらず、世界中で各言語版が発売されているのですから、影響力は世界規模だと言えるかもしれません。

 2009年7月7日には、ギネス・ワールド・レコーズに「世界で最も販売枚数の多いトレーディングカードゲーム」として認定、さらに2011年6月14日には記録を自己更新し、販売枚数も251億7000万枚を突破しているそうです。現在はそれ以上の数値となっていることでしょう。

 一説にはTCGの寿命は数年。人気作でも10年程度と言われている世界で、『遊☆戯☆王』は今年で23年になります。始祖にして頂点。その人気をいまだに維持している『遊☆戯☆王』は稀有な作品だと言えるでしょう。

 玩具業界の売り上げでTCGの占める割合はもっとも大きいと言われているそうですが、カードショップの普及やカードゲーム人口の増加など、副次的なものも考えた時、『遊☆戯☆王』の果たした役割は大きく、間違いなく日本経済を変えた作品と言えるかもしれません。その功績は単なるマンガのヒット以上のものだったと言えます。

(加々美利治)

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