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『ダーティペア』さまざまな「当たり前」をくつがえす 思春期の少年心をつかんだ美女2人

マグミクス / 2022年7月15日 6時10分

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■セクシー美女・ユリとケイの強烈なインパクト

 1985年7月15日は『ダーティペア』の放送が開始された日です。高千穂遙氏の原作を元に作られたTVアニメで、ユリとケイ、ふたりの美女が銀河を舞台に活躍するスペースオペラ作品として強烈なインパクトをもたらしました。TV放送の終了後も劇場版やOVAなど多数の作品が製作され、2019年には「S-Fマガジン」に初の短編が掲載されてから40年が経ったことを記念して、『ダーティペア COMPLETE Blu-ray BOX』が発売されるなど今なお人気の高い作品です。

 いま、改めて『ダーティペア』のことを思い返すと、さまざまな当たり前をくつがえした作品であることに驚かされます。女性が主人公の作品は当時も数多く存在していましたが、その大半は魔法少女ものや少女マンガ原作もの、『アルプスの少女ハイジ』や『赤毛のアン』などを代表作に持つ世界名作劇場の作品群でした。SF小説を原作とした女性ペアが主人公のアニメが企画されたこと自体、極めて異例な話なのです。

 特に女性が主人公のアニメ場合、ドタバタした展開であったとしても、魔法などのなんらかの力で無事に収束することが多かったように思えます。『ダーティペア』のように主人公たちが率先して状況をひっかきまわし、損害を拡大させ、ひどい時は惑星の破壊に至るトラブルメーカーとしての女性が登場したことは、アニメにおけるエポックメーキングな出来事と言えるでしょう。

 また、当時はSFロボットアニメが非常に多かった時代です。同じ1985年に放送された『機動戦士Zガンダム』『超獣機神ダンクーガ』『蒼き流星SPTレイズナー』『忍者戦士飛影』のうち、『Zガンダム』を除く三作品が打ち切りに遭うなど勢いは衰えつつあったものの、過去の作品の再放送は盛んに行われており、強い存在感を持っていました。

 そのような状況下で、水着のような衣装に身を包んだセクシーな美女が宇宙を舞台に派手なアクションを披露するのですから、非常に目立ちます。特に『機動戦士ガンダム』を小さい頃から見ていた世代が徐々に思春期に差し掛かるタイミングだったこともあり、当時の少年たちの心をわしづかみにしたのも当然と言えるでしょう。

■オープニングとエンディングにヒット歌手を起用

『EMOTION the Best ダーティペア 劇場版』DVD(バンダイビジュアル)

『ダーティペア』のオープニングテーマ「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」とエンディングテーマ「宇宙恋愛(スペースファンタジー)」はいずれ劣らぬ名曲ですが、両曲とも当時すでにヒットを飛ばしていた中原めいこさんが作詞・作曲・歌唱を担当しているのも特筆すべきポイントでしょう。

 当時、アニメソングは童謡扱いされており、他の音楽よりも一段低く見られていました。これは感覚的なものではなく、歌謡曲の場合は物品税がかかりますが、童謡の場合は教育に配慮するという名目で非課税となっていました。国家レベルでアニメソングが子供のものと認定されていたのです。

 1983年に杏里さんが『CAT’S EYE』で大ヒットを飛ばして以降は徐々に力のあるミュージシャンが担当することも増えていましたが、すでに実績を残している方がアニメソングを歌った事例は1971年にフォーリーブスが『電子鳥人Uバード』の主題歌を担当した例など少数に限られていました。

 中原めいこさんは1982年にデビューし、1984年に「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」がヒット、人気歌番組「ザ・ベストテン」で最高6位に食い込み実力派ミュージシャンとして世に出た人物です。このクラスのミュージシャンがアニメソングにがっつりと関わってくれるようになったことは時代の転換点とも言える出来事なのです。

 と、ここまでいろいろ書いてきましたが、やはり『ダーティペア』最大の魅力は土器手司(どきて・つかさ)氏の手によるユリとケイのデザインにあるでしょう。元々は原作のイラストを手掛けた安彦良和氏が担当するはずだったのですが、『Zガンダム』や自身が監督と原作を務める映画『アリオン』の作業があるため降板し、『うる星やつら』の作画で注目を集めていた土器手氏が抜てきされ、当時最高水準の美少女デザインが誕生したのです。

 しかしコスチュームのデザインに関しては難航したため、後に『ギャラリーフェイク』などのヒットを飛ばす漫画家の細野不二彦氏が担当し、ほぼ完成形のデザインが仕上がりましたが、監督の意向で襟が開いた状態に修正されています。劇場版では原作者の高千穂氏の意向で細野氏のデザインがそのまま使用されているため、見比べてみるのも面白いかもしれません。

 最高峰のスタッフが集い、最先端の作品として送り出された『ダーティペア』。今なお当時の少年たちの心をつかんで離さない強烈な魅力を持つ作品となったのは、必然だったのかもしれません。

(早川清一朗)

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