行方不明の猫を探していると、怖そうなご近所さんが？「いい人」「優しい世界」

■猫を探すうちに、苦手だったアパートの隣人たちと距離が縮まる

　アパートでひとり暮らしをしている無口な青年・吉田さんがある日帰宅すると、飼い猫の「シャケ」が部屋からいなくなっていました。いろいろな方法でシャケを探しますが見つからず、ついに距離を置いていた「ご近所さん」に聞くことに……。

　漫画家の稲空穂さん（@ina_nanana）による創作マンガ『知らないご近所さん』がTwitterで公開されました。本作は「COMICリュエル」にて連載中の『特別じゃない日』からの一編。猫探しを通して主人公がアパートの隣人と交流を深めていくさまが描かれており、ご近所づきあいが希薄な現代においてどこか懐かしさを感じさせる、心温まるエピソードです。

　読者からは「素敵」「すごくよかった」「優しい世界」「みんないい人」「普段そっけないお隣さんも話してみると世界が変わったりするんだなぁって気付かされた」「ラストにほっこりした」「シャケちゃんが運んだステキな縁を大事にしてほしい」などの声があがり、Twitter投稿は1.6万リツイート、7.3万いいねがつく話題作となっています。

　作者の稲空穂さんに、お話を聞きました。

ーー『知らないご近所さん』のお話はどのように生まれたのでしょうか？

　実は『知らないご近所さん』は、出版社である実業之日本社の編集担当・Tさんのご経験をもとに作成しております。一度実家の猫ちゃんが逃げてしまったことがあったそうで、猫ちゃんを探しているなかで、今まで会話をしたことのなかったご近所さんにも聞き込みをした際、とても親身に接して下さったそうです。

　とても素敵でかわいらしいエピソードに、ぜひこちらを作品にさせて下さいとお願いをし、マンガにさせていただきました。

ーー猫を探すなかで、主人公が今まで深く関わってこなかったご近所さんと距離が縮まっていく様子に心温まりました。SNSも含めて、主人公と周囲の人びととの関わりの描写にはどのような思いが込められていますか？

　第一印象というものはとても強く心に残りやすいものだと思っております。『特別じゃない日』第1巻で、今回の『知らないご近所さん』の主役だった吉田とシャケがメインの『#猫』という短いお話があるのですが、そのなかでは、猫の飼い方についてSNSでたくさんの人に吉田がアドバイスを受ける、という描写があります。

『知らないご近所さん』のご近所さんも、『#猫』のSNS上の見知らぬ人たちも、どんな人でも第一印象だけで終わってしまうのはあまりにももったいないという思いがあり、作品のなかで表現させていただきました。

　誰かにとっての自分も、「ご近所さん」であり、「見知らぬSNS上の人」ではありますが、大切な家族がいて、大切なものがある。私自身忘れがちなことですので、新しいご縁の際にはそのことを思い出したいです。

ーーたくさんの感想が寄せられています。特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。

　どのご感想もうれしく大切に読ませていただいております。なかでも「ご近所さんに挨拶をしてみようかな」というご感想がとてもうれしかったです。

単行本『特別じゃない日　猫とご近所さん』が発売中（実業之日本社）

ーー『特別じゃない日』の単行本第2巻『特別じゃない日　猫とご近所さん』が発売されました。収録内容や見どころなどをご紹介いただけますか？

　第1巻の『特別じゃない日』からのキャラを引き継ぎつつ、第2巻である『特別じゃない日　猫とご近所さん』から初めて読んでも受け入れていただける構成で描きました。第1巻同様に、幅広い年代のキャラクターを主人公にして、懐かしかったり、共感していただけたり、こうなったらいいな、と思っていただけたらとてもうれしく思っています。

ーー今後の活動のご予定や、挑戦してみたいことなどについて教えて下さい。

　引き続きマンガの活動をメインにしつつ、新しく挑戦したいこととしては、自分の特技を生かして自分の住む地域に密着した活動ができればと模索しています。最近地域のイベントに家族で一般参加することが多く、こんな時代だからこそ地域の方と話したり協力していくことの大切さを身に染みて感じております。

（マグミクス編集部）