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3次元だけ見ている人が多い? 大成功した実写版と原作マンガを数値で比較してみたら

マグミクス / 2022年9月3日 15時10分

3次元だけ見ている人が多い? 大成功した実写版と原作マンガを数値で比較してみたら

■マンガだけ、実写だけ、どちらかだけではもったいない名作たち

 コミック界で世界最大のシェアを誇るのは、日本のマンガです。そして、コンテンツ産業界がメディアミックス展開を行うのは当たり前のことのため、マンガはアニメ化、実写化もされることも非常に多いです。しかし、マンガとは逆に日本の実写版作品は非常にドメスティックな市場で、主に国内で消費されます。そのなかには、実写版の出来がよく大ヒットしたため、「原作マンガより実写版の方が有名なのでは」と思う作品もあります。

 そもそもコミックスを何巻もそろえるより、劇場で1回1900円を払うだけ、もしくはTVドラマでタダで見られるという利点がある実写版の方が原作より認知度が高まるのはよくあるケースのようです。こちらの記事ではそのなかでも、特に「実写版の方が見た人がかなり多いのでは?」と思うヒット作品を独断で選び、実際の数値をもとに比較してみました。

 まず、原作を読んだ人の数、実写版を見た人の数を正確に出すことは不可能なので、以下の形にしています。

・原作を読んだ人の数=累計発行部数÷巻数(累計発行部数だとのべ人数になってしまうので巻数で割っています)※累計発行部数は調査時点(2022年8月)でのものです。

・実写を見た人の数=テレビの場合は日本の総人口×視聴率、映画の場合は=興行収入÷1400円(大人料金、子供料金、その他各種割引料金などが混在しているはずなので、間を取って前売り券価格)とします。

 上記のように、単純計算にはなりますが、数値をもとに比較を行います。

●『海街diary』

 まずは『BANANA FISH』でも知られる吉田秋生先生の『海街diary』です。数値をまとめると、

・原作累計発行部数 360万部
・1巻当たりの平均発行部数(全9巻)=40万部
・映画国内興行収入16.8億円(2015年公開邦画で23位)、推定観客動員数120万人

 と、なります。原作一巻あたりの平均発行部数40万(読者数)に対し、興行収入からの逆算で約120万人を動員した計算になりました。数字だけ見ると、3倍ほど実写映画を見た人の方が多いことになります。今回は国内の成績だけですが、同作は国際的にも評価の高い是枝裕和監督が手掛けているため、海外でもある程度の人数が映画を見ていることでしょう。映画単体でも素晴らしい作品ですが、実写版で描かれているのはあくまで原作序盤のエピソードなので、姉妹のその後が気になる方は原作もぜひ読んでみてください。

●『三丁目の夕日』

 続いて、半世紀越えの超長寿作品『三丁目の夕日』(作:西岸良平)です。2005年から2012年にかけて、実写映画が3作作られました。

・原作累計発行部数1400万部
・1巻当たりの平均発行部数(既刊69巻)=20万2898部
・映画国内興行収入(『ALWAYS 三丁目の夕日』)32.3億円(2005年公開邦画で7位)、推定観客動員数230万人
・映画国内興行収入(『ALWAYS 続・三丁目の夕日』)45.6億円(2007年公開邦画で3位)推定観客動員数325万人
・映画国内興行収入(『ALWAYS 三丁目の夕日’64』)34.4億円(2012年公開邦画で8位) 推定観客動員数245万人

 爆発的なヒット作ではないものの、長期連載のマンガで、累計発行部数は堂々の1000万部越えです。1巻当たりだと20万部強になります。そして、映画3作の動員数は合計約800万人にもなる計算でした。こちらも実写映画を見た人の数のほうが、原作読者数よりもかなり多そうです。とはいえ、こちらも映画で描かれたのは膨大な原作の一部に過ぎません。茶川先生や六ちゃんなど、原作とは設定の違うキャラも多いので、こちらもマンガと実写両方楽しんでほしい作品です。

●『逃げるは恥だが役に立つ』

 続いて海野つなみ先生の『逃げ恥』です。大ヒットドラマとして記憶に残っている人も多いでしょう。

・原作累計発行部数 450万部
・1巻当たりの平均発行部数(全11巻)40万9090部
・実写ドラマの平均視聴率 14.6%、推定視聴者数1836万人

 1巻当たりの発行部数40万部に対し、実写ドラマは1話あたり約1836万人が視聴したことになります。さらに、『逃げ恥』最終回の最高視聴率は30%越えであり、瞬間的には3500万人以上が視聴しました。少なくとも計算上、テレビドラマの最終回を少しでも見た人の数が原作を読んだ延べ人数の8倍近くいることになります。主題歌に載せた「恋ダンス」も大流行し、コンテンツとしてだけでなくその年の「トレンド」にもなりました。

■実写から人気が逆輸入した作品も

ニッチな深夜ドラ深夜ドラマながら大人気の『孤独のグルメ』Season9のビジュアル  (C)2021 久住昌之・谷口ジロー・fusosha/テレビ東京

●『ROOKIES』

続いては、『ろくでなしBLUES』でも知られる森田まさのり先生のヤンキー野球マンガ『ROOKIES』です。ドラマ、映画ともに実写版大ヒットの代表例と言えます。

・原作累計発行部数 2100万部
・1巻当たりの平均発行部数(全24巻)87万5000部
・実写ドラマの平均視聴率 14.96%、視聴者数は約1887万人
・映画国内興行収入(『ROOKIES-卒業-』)85.5億円(2009年公開邦画で1位)、推定観客動員数615万人

 さすが「週刊少年ジャンプ」作品というべきか、原作総発行部数は24巻で2000万部越えで、かなりのヒット作と言えます。

 そして、大ヒットした実写版シリーズは、視聴率から計算するとドラマは約1887万人が視聴し、映画は約610万人も動員した計算になります。原作もヒット作ですが、単純に1巻当たりの発行部数と比べると、実写版を見た人の方がかなり多い計算になります。こちらも原作と実写版で違いが多いので、見比べてみてください。

●『孤独のグルメ』

『孤独のグルメ』(原作:久住昌之、作画:谷口ジロー)の原作は、全2巻しかありません。そんな短い原作のトレビドラマが9シーズンも続いているのは、テレビが完全にオリジナルストーリーだからです。同作の数値を見てみると、

・原作累計発行部数150万部
・一巻当たりの平均発行部数(全2巻)75万部
・実写ドラマの平均視聴率約4%(シーズン9までの大体の平均)、推定視聴者数503万人

 平均視聴率から計算すると、TVドラマは1話当たり原作の7倍弱の503万人が視聴したことになります。原作累計発行部数を遥かに上回っており、ドラマのみ知っている人がかなり多いようです。かくいう筆者も原作を読んだのはテレビ放送を見た後でした、

 知る人ぞ知るマンガだった『孤独のグルメ』は、テレビドラマの放送開始以降急激に発行部数を伸ばしました。放送開始された2012年時点の累計発行部数はわかりませんでしたが、2015年初頭時点に40万部だったのが、2019年秋口では97万部、2020年には150万部を突破しています。『孤独のグルメ』は2015年以降、新刊が出ていませんので、この伸びはテレビドラマの影響ではないかと思われます。メディアミックスの理想的な展開ですね。

●番外編:『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』

 最後に、国内市場以外の例として、韓国映画『オールドボーイ』として実写化された『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』(原作:土屋ガロン、作画:嶺岸信明)の例です。

・原作(全8巻)累計発行部数 不明
・世界興行収入 $15255474、推定観客動員数150万人

 原作発行部数は残念ながら、調べても不明でした。何のニュースにもなっていない上に、8巻しかないマンガのため、原作累計発行部数は100万部を切っているのではないかと勝手に推測しています。実写版公開後の2007年にアイズナー賞(アメリカで最も権威ある漫画賞のひとつ)も受賞している名作ですが、読む人を選ぶタイプのマンガなので一般受けはしないでしょう……。

 映画版の観客動員数ですが、映画大国アメリカは州によって料金が異なります。平均すると、映画館入場料は9ドルだそうです。また、ヨーロッパは物価の高い北欧と映画産業の盛んなフランスなどで差がありますが、間を取って10ドルぐらいとします。大雑把な計算ですが、映画は公開時に全世界で150万人以上が見ているはずで、原作を大きく上回っているのは間違いないでしょう。カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞するほどの高評価な作品で、DVDや配信などで見た人もどんどん増えていっているはずです。原作が8巻で80万部だとすると(1巻あたり10万人)、映画の観客は15倍、もしくはそれ以上いると考えられます。

 なお、韓国実写版はその後、ハリウッドでリメイクされています。日本で映像化されなかった原作が最終的にハリウッドに行くのですから、何がヒットするかなど、結局は誰にもわからないと言えるでしょう。

(ニコ・トスカーニ)

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