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9月13日は「北斗の拳の日」 悪党の断末魔「ひでぶ」にはキチンとした意味があった?

マグミクス / 2022年9月13日 6時10分

9月13日は「北斗の拳の日」 悪党の断末魔「ひでぶ」にはキチンとした意味があった?

■ジャンプ黄金期のきっかけを作った『北斗の拳』

 本日、9月13日は日本記念日協会に登録認定されている「北斗の拳の日」です。その由来は、1983年9月13日に発売された『週刊少年ジャンプ』41号から、マンガ『北斗の拳』の連載が開始されたからでした。

『北斗の拳』は武論尊先生の原作、原哲夫先生による作画と、作業が分担されています。しかし、この編成になったのにはある事情がありました。

 もともと『北斗の拳』は、週刊連載前に別冊である「フレッシュジャンプ」で2回読み切りマンガとして掲載されたのが、始まりとなります。この掲載時に2回とも読者アンケートで1位を獲得、その人気から本誌である「週刊少年ジャンプ」で連載が決まりました。

 そして本誌での連載開始前、原先生からの「作画に時間が掛かるため、ひとりでは週刊連載はできない」という意見を聞き入れ、担当編集だった堀江信彦さんが見つけてきた原作者が武論尊先生だったのです。ちなみに、堀江さんは後に「週刊少年ジャンプ」5代目編集長に就任。1995年3・4号に653万部の歴代最高部数を達成した時の編集長です。

 読み切り時は現代が舞台でしたが、武論尊先生から「肉体的な強さを出すには近代兵器がない方がいい」「武器のない時代設定にしよう」という意見が出て、本編の核戦争後の荒廃した世界観が生まれました。結果的に、この「荒廃した世界でのバイオレンスアクション」という点が本作の魅力とひとつとなります。

 そして、『北斗の拳』は第1回連載時の読者アンケートでは2位を獲得、それ以降は1位の座を3年間キープするほどの「ジャンプ」の看板作品となりました。当時は「週刊少年サンデー」が『うる星やつら』や『タッチ』によるラブコメ路線で、週刊少年誌1位の「ジャンプ」に猛追していたころです。この1983年には「サンデー」が歴代最高記録になる228万部に売り上げを伸ばし、300万部を割り始めていた「ジャンプ」にとって脅威となっていました。

 しかし、『北斗の拳』人気が「サンデー」の猛追をかわし、人気絶頂期となった1984年末には「ジャンプ」は400万部を突破する勢いを見せます。この人気により、ラブコメ路線に寄りがちだった「ジャンプ」編集部は、一気にアクション・格闘方面に舵を切りました。いわゆる「ジャンプ黄金期」の始まりです。

 こうして「ジャンプ黄金期」の幕開けとなった『北斗の拳』ですが、その与えた影響は「ジャンプ」だけにとどまらず、他のアニメやマンガ、実写作品や映画まで幅広いジャンルに渡ります。

■バイオレンスな描写もなごませる断末魔の意外な秘密

数々の断末魔を残したザコたちにフィーチャーしたマンガ『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』1巻(コアミックス)

 まず、『北斗の拳』の魅力のひとつに「北斗神拳」が挙げられます。それまでの格闘マンガにはなかった「秘孔を突く」ことで「人体が破裂する」という描写は斬新で、さらにギャグに思えるほどの荒唐無稽さを原先生のリアルな絵が現実観を与え、「これならあり得る」という納得感を与えていました。この点が、ヒットの要因となります。

 また、悪党の断末魔「ひでぶ」「あべし」「たわば」なども斬新でした。もちろん主人公であるケンシロウの「お前はもう死んでいる」も流行語となっています。当時の子供たちはもちろん、大人たちも口にしたことがあるのではないでしょうか。

 特に有名な断末魔「ひでぶ」は原先生によると「痛え!」と、破裂するときの「ブッ!」の合成語だったそうです。しかし、この突拍子もない言葉を編集部は誤植だと思い、校正を通すのに苦労したという逸話もあります。

 ちなみにアニメでは、さまざまな断末魔演技が検討されていたそうです。やがてそれは言葉遊びのようになっていったようで、ケンシロウ役の神谷明さんが「今日は後期印象派で死のう」と声優陣と打ち合わせ、悪党たちが「ゴッホ」「ゴーギャン」などと断末魔を挙げたこともありました。

 このTVアニメ化にも、さまざまな苦労があったそうです。当時でも放送コードは厳しく、放送前から残酷な描写や過激な表現には規制がかけられました。そのため、シルエット処理や透過光、画面の反転などのアニメ的な演出でソフトな画面作りをしています。さらに身長180㎝台のケンシロウが小さく見えるほど敵を巨大化させ、リアリティが薄くなるよう工夫しました。

 そして前述の断末魔演技もそうですが、悪党の死をどこかコミカルに描くことが、作品の残虐性を薄めてもいます。さらに、悪党は非道な行為をあらかじめ見せ、やられて当然と言う流れにしていました。

 そのせいか、番組への直接のクレームはなかったようです。もっとも原作マンガに関しても編集部にクレームらしいものはほとんどなかったようなので、当時は暴力描写には寛大だったのかもしれません。正義の味方が悪党を成敗するというフォーマットは、時代劇から現代劇までドラマではよくあるパターンだったこともあるでしょう。

 こうして『北斗の拳』がマンガもアニメも成功したことで、さまざまなオマージュ、パロディ、追従した作品、悪く言えば二番煎じのようなものも世に出てきました。それだけ『北斗の拳』は、これまでになかったタイプのマンガだったということでしょう。

 その全収益(パチンコ・スロットの収益含む)は日本の作品ではベスト10に入るほどであり、いまだに派生のスピンオフ作品や関連商品が世に出てくるのですから、影響力はかなりのものだと思います。近年、横綱・稀勢の里が土俵入りする際の化粧まわしに本作最大の宿敵であるラオウを使い、引退の席でその最期のセリフを引用したこともありました。このような例も考えると、『北斗の拳』の影響はまだまだ続くことでしょう。

(加々美利治)

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