『ヒロアカ』と『入間くん』ファンを悩ませた奇妙な因縁 「裏番組で被り過ぎ！」

■『ヒロアカ』と『入間くん』裏で被り過ぎ！

　この秋からアニメ放送が始まる『僕のヒーローアカデミア』（10月1日から放送予定）と『魔入りました！入間くん』（10月8日から放送予定）。共に原作は人気マンガで、これまでにも何期かTVアニメで放送された人気作品です。実はこのふたつの作品には奇妙な共通点があったことをご存じでしょうか？

　片や「週刊少年ジャンプ」の人気マンガ、片や「週刊少年チャンピオン」の人気マンガである2作品。特殊な能力を持った少年少女たちの学校生活を中心に、バトルを交えたストーリーが進行するという共通点がありますが、実はそれだけではありません。2作品はこれまで因縁めいた関係にありました。

　それは過去2度にわたって放送時間がかぶるという裏番組の関係にあったことです。『入間くん』が初めてNHK EテレでTVアニメが放送された2019年秋からの半年間、読売テレビ・日本テレビ系列では『ヒロアカ』の第4期が放送されていました。

　また『ヒロアカ』の第5期が放送された2021年春からの半年間も、裏番組として『入間くん』の第2期が放送されています。共に土曜日17時代後半のアニメ枠で放送されるということから、裏番組になるのは宿命でした。しかし、放送される期間がまったく一緒というのは因縁めいたものを感じます。

　それで今年2022年の秋に『ヒロアカ』、『入間くん』共に放送されると発表された時は、「またか！」と思ったファンも少なくなかったことでしょう。筆者もここまでタイミングが一緒なのはありえないと思ったほどです。もっとも、これは共に製作会社が次のシーズンまでの準備期間を1年に設定しているからでした。同じ週刊誌連載中のマンガ作品ですから、ストックの見積もりなどを考えて一緒のタイミングとなるのは仕方ありません。

　しかし、今回の放送までに異変が起こりました。それは『ヒロアカ』と『入間くん』は裏番組ではなくなったからです。それはNHK Eテレが土曜夕方のアニメ放送枠を17時代後半から18時後半に移動したからでした。これにより『ヒロアカ』と『入間くん』は、ようやく裏番組という宿命から逃れることができたわけです。

　共に週刊誌にまだ連載中で、今回のシーズンが終わっても続編のTVアニメは放送されるでしょうから、この時間枠が重ならなくなったということは、これ以降は次のシーズンが放送されても裏番組ではなくなるのは間違いないと言えるかもしれません。両方の作品のファンの方々には何よりの朗報でしょう。

■配信時代なのに「リアルタイム視聴」を望むワケ

『魔入りました！入間くん』第3シリーズ　(C)西修（秋田書店）／NHK・NEP

　この裏番組問題を大したことのないことと思っている人も少なくないと思います。なぜなら現在はTVの録画機器は当たり前、配信サービスなどによる見逃した場合のケアも万全。裏番組になっても先に見るか後に見るか程度の話。……そう思っている人がほとんどだと思います。

　確かに、これに関しては否定できません。その通りだと思います。しかし、ファンのなかにはそこを重要視している人もいました。いわゆるリアルタイムで視聴することに意味を感じるファンもいるのです。

　具体的に言うと、TwitterなどのSNSでの実況と呼ばれるコメントができるかできないかという問題がありました。そのコメントにより他のファンとのリアルタイムでの交流。ネット社会と言われる現代ならではの楽しみ方です。筆者はあまりこういうことは得意ではありませんが、番組終了後にSNSを見るとよく見かけることがありました。

　そして、今回の2作品は原作マンガのアニメ化ですから基本的に問題になりませんが、放送時間後に見ることで起こるネタバレも重要な問題です。これも現代ならではの問題で、作品を見るまでネットを見なければいいのですが、誰もがついつい見てしまうもの。

　なかにはアニメでファンになって、あえて原作を見ないというアニメ派の人もいると聞きました。しかも、人によっては原作であったことでも知りたくない人はいるようです。さらに最近ではTV画面を引用してコメントする人もいますから、リアルタイム視聴はファンにとって重要なのでしょう。

　こういった推しキャラの応援をリアルタイムで、他の人と見ている雰囲気で実況したいというファン心理は、現代ならではのぜいたくな悩みかもしれません。例えるなら劇場でワイワイとみんなで楽しむ応援上映のようなものでしょうか。ネットでつながるという感覚は筆者にも理解できます。

　今回の『ヒロアカ』と『入間くん』両方に推しキャラがいる人が、どの程度の人数いるかはわかりませんが、できればリアルタイムで思いを共有したいというファン心理に添った形になったことはいいことではないでしょうか。この2作品に限らず、できればアニメ作品は同じ時間帯で放送しないでもらいたいものです。

（加々美利治）